北京京獅(北京ライオンズ)が東京ワイルズを完封。
滋賀を舞台に強さを見せつける初勝利
取材・文・写真/アイスプレスジャパン編集部
アイスホッケーIJリーグ 2024イノーギュラルシーズン 第4戦
7月13日(土)14:20試合開始 @滋賀県・木下カンセー アイスアリーナ 観衆:380人
東京ワイルズ 0(0-1、0-1、0-3)5 北京京獅
ゴール:【東京】なし 【北京】ホウ・ユーヤン、ズオ・ティエンヨウ、ジャン・ザセン、V・ミズニコフ、ジェン・ミンジュ
GK:【東京】磯部 【北京】スウン・ザハウ
シュート数:【東京】36(9、15、12) 【北京】34(8、8、18)
滋賀県・木下カンセー アイスアリーナに北京京獅(北京ライオンズ)がIJリーグ初参戦。
ファンは言うに及ばず選手からも「その実力はいかに」、と注目を浴びるなか、北京京獅は想定以上の強さとチームの完成度を見せつけた。
すでに昨年、釧路にてトレーニングマッチの形で北京京獅と北海道ワイルズ(当時)は数試合を戦っていたが、IJリーグとしてはこの試合が初のマッチアップ。GK2人に加えて4つのラインすべてをプレイヤーで埋める陣容の北京。ベンチにずらりと選手が並ぶ様は、このリーグにかける意欲がうかがえた。
洗練された戦術と強靱なフィジカルを武器に、北京京獅が東京ワイルズを圧倒
試合は開始後すぐに動き、観客席のファンは驚かされることとなった。
第1ピリオド開始わずか53秒。92番のホウ・ユーヤンのゴールで北京が先制点をあげる。自陣でワイルズのシュートを止めると一気に縦へ展開。DFとの走りあいに競り勝った71番ジェン・ミンジュが左サイドからバックハンドでゴール前へパックを送ると、そこに詰めたホウ・ユーヤンがGKもあっさり交わしてゴール。いきなりの先制パンチをワイルズに浴びせた。
北京京獅のファーストラインはホウ・ユーヤンはじめ長身かつ北米でのプレー経験も豊富なメンバーが揃っており、東京ワイルズの選手たちと比べても引けを取らない早い動きでリンクを駆け巡る。なかでもDFの77番ジェン・ミンライのプレーには多くのファンが目を奪われた。非常に無駄のない動きで的確にワイルズの反撃を抑えていく様子はさすがのひと言。71番ジェン・ミンジュ、92番ホウ・ユーヤン、91番ワン・ジンが出場しているときの攻撃は非常に強力でワイルズもかなり手を焼いている様子だった。
それでもワイルズは屈せず反撃に転ずる。長身選手の間をかいくぐり、上野鉄平や山崎勇輝、越後智哉らが次々とシュートを浴びせるが、北京京獅のGK32番スワン・ザハウが落ち着いたゴールテンディングでパックをしっかり抑える。また、ボディコンタクトでもワイルズと北京京獅はほぼ互角。
北京は守りもシステム化が進んで洗練されており、かつてアジアリーグに初参戦した頃の中国各チームと比べてもプレーの進化が大いに感じられた。
ペナルティが続くなか、試合は徐々に北京京獅ペースに
第1ピリオド序盤の得点にも流れを崩さず、0-1で第2ピリオドに持ち込んだワイルズ。しかし第1ピリオド終盤から相手ボディチェックのプレッシャーにさらされてペナルティが嵩んできたことがボディブローのように効いて第2ピリオドも押され気味に試合は進行。そんななか、第2ピリオド7分28秒に北京京獅がパワープレーから追加点を挙げる。
左サイドからパックを持ってゴール前に入り込んだ63番ウラジスラウ・ミスニコフ(Vladislav Misnikov)が強烈なショットを放つとGK磯部裕次郎もパッドで大きく弾くのが精一杯。そのリバウンドに8番ズオ・ティエンヨウがきっちり詰めて2-0。力押しで北京がリードを広げた。
北京京獅で唯一の外国人選手、ミスニコフは1996年2月3日生まれの28歳、ロシアとベラルーシの2重国籍を持つプレイヤー。2021-22シーズンまでルーマニアのステアウア・ブカレストでプレーしていた記録が残っている。ベラルーシのU20に選ばれたことがあるほかロシアリーグ2部VHLでのプレー経験も豊富で、パスによる彼の展開力は、ワイルズにとっては非常に厄介な相手となっていた。
0-2とされてからもワイルズは少ない人数ながら各選手が力を振り絞って対抗していたが、相手のシステマチックなディフェンスにシュートコースを絞られてGKにパックをキャッチされるシーンが続き、連動的な攻撃をすることがなかなかできない。そのうちにペナルティーか続くなかで徐々に体力を削られ防戦の場面が増えていく。第3ピリオドに入ってからは、やや動きの落ちたところを北京の選手に狙われショートハンドゴールで0-3とされると、終盤にも立て続けに得点を許して最終的には0-5。
北京京獅がその強さを滋賀のリンクでしっかりと披露して、IJリーグ初勝利をあげる結果となった。
「スコアリングを改善すれば充分戦える」(ワイルズ齊藤毅監督)
ここまで2勝1分けという成績だった東京ワイルズに対してもまったくひるまず、自分たちの良さをしっかりとリンクで表現した北京京獅。なかでもファーストセットとセカンドセットのレベルは高く、かなりの実力を持っていることは随所にうかがえた。
そんな相手に対してワイルズも対応したが、少ない人数でやりくりしなければならない点がやはり大きなハンディキャップとなっていた。人数的な差は今のところいかんともしがたい。しかしその中で勝てる術を見いだしていかなければならない。
東京ワイルズの池田一騎選手は試合後「モチベーション高くみんなプレーしていたと思うし、去年より北京はさらにパワーアップしていることが分かっていたので、しっかり準備して臨んだが、名古屋での試合に続いてスコアリングが課題に残った」と反省を口にしつつも、「ハードにプレーしすぎて逆に疲れる部分も多かったので、省エネとまでは言わないまでも、後半まで体力を保ってセオリー通りスペシャルプレーでしっかり得点を取るといった形でやれればまた違った展開になるとおもう。今シーズンはパワープレーの成功率が悪いのでしっかりそこは準備して臨みたい。相手にはインポートの選手もいたりして良い刺激にはなりました」と次戦以降へ気持ちを切り替えている様子だった。
齊藤毅監督は「スコアリングチャンスは北京に対して倍はあったので、決定力の点で今日は大きな差が出てしまった。我々の決定的なチャンスの直後に逆襲されての失点が3回ほどあったので、それがダメージになった部分は否めない。ただ、北京と戦うことについては選手もすごくやりがいを感じているようで、試合自体は楽しんでプレーできていた。まずは勝つことにもう1回しっかりと集中して体制を整え、次は勝ちきりたいと思います」と語ってくれた。
「しっかり準備し勝利できた。素晴らしい雰囲気だった」(北京16番ジャン・ジャーチ選手)
いっぽう勝利した北京16番、キャプテンのジャン・ジャーチ選手は「今日の試合、我々の動きは非常に良かった。ワイルズとは昨年も対戦しているが、監督はじめ私達全員でしっかり準備して臨みこの結果を掴めた。いっぽうでやはり、これだけ差がついた理由はやはり相手の人数がちょっと足りなかった部分だったと思う。今日は勝利できたが日本のチームは強いと感じたので、引き続き気を引き締めて臨みたい」と試合を振りかえった。一方でIJリーグで戦ったことについて聞くと、「会場の雰囲気や観客の盛り上がりは素晴らしかったので、ぜひもっと盛り上がってほしいですね」と語ってくれた。
「今日我々は22人、相手が14人と人数的に差があったことは確かですが、それでも相手の技術と経験値を考えると、0点に抑えることができたのは非常に良かったと思う」と語るのはDF6番のチェン・ズーモン選手。「IJリーグでとても良いシーズンのスタートが切れたと思う。北京でもアイスホッケーの普及は課題で、特に夏はなかなか打てる手がなかった。こういう交流試合ができるのは素晴らしいこと。これからもっとたくさんの人たちこのスポーツを理解してもらい好きになってもらえるように頑張っていきたいです」と今後の活躍を誓ってくれた。
7/20(土)7/21(日)山梨・小瀬スポーツ公園に北京京獅が初お目見え
北京は1日の休息日を挟んで7/15(月)に名古屋・邦和みなとで名古屋オルクスと今季初対戦し、その後は山梨県・小瀬スポーツ公園スケートリンクに場所を移して7/20に東京ワイルズと7/21に名古屋オルクスと再戦する。(※7/15 北京vsオルクスの試合レポートは後日掲載予定)
「完封される今日のようなゲーム、特に0-5という結果は本当に悔しい。次の試合では必ず巻き返します。頑張ります」(ワイルズ齊藤毅監督)
山梨では、さらに北京の選手と日本の両チーム選手との間でエキサイティングな戦いが繰り広げられることは間違いない。どのように両チームが仕上げてくるか楽しみだ。