五輪3次予選がいよいよスタート。「ハンガリーとの直接対決を制するか」がカギ

最終予選進出へ。こんな笑顔をハンガリーでもぜひ見たい(2023世界選手権IB対ウクライナ戦)撮影:編集部

取材・文・写真/アイスプレスジャパン編集部

2026年冬季五輪出場権獲得へ。通過せねばならない最初の関門

2026年2月にイタリアで行われるミラノ・コルティナダンペッツォ冬季オリンピックへの出場権を巡って、五輪3次予選がいよいよ2/8からスタートする。今回の会場はハンガリー・ブダペスト。Tüskecsarnokというアリーナを舞台に4ヵ国による戦いが行われる。

出場国は日本(25)のほか、2次予選でオランダを破って勝ち上がってきたスペイン(32)、昇格した日本と入れ替わる形でディビジョンIA→IBに降格しているリトアニア(24)、そして日本にとっては因縁の相手、ハンガリー(19)。この4ヵ国によるリーグ戦で1位となった国だけが最終予選に進出できる。
※( )は世界ランキング

男子日本代表は1月に苫小牧と安平町で合宿を行った後、ハンガリーへ渡航。当地で1/29から2/6までの日程で行われた事前合宿を打ち上げ、大会前日となる現地2/7に会場入り。
現地時間2/8(木)15:00(日本時間8日23:00)からの対リトアニア戦に臨む。

【試合日程】
2月8日(木)15:00  vsリトアニア(日本時間8日23:00) 
2月9日(金)16:30  vsスペイン (日本時間10日0:30)
2月10日(土)20:00 vsハンガリー(日本時間11日4:00)
※現地時間=日本時間マイナス8時間

◎ネット中継>YouTube TBSチャンネルにて3試合とも中継予定
グループリーグ初戦 日本vsリトアニア 2/8(木)深夜23:00~ 
          日本vsスペイン  2/9(金)深夜24:30~(2/10 0:30~)
          日本vsハンガリー 2/11(日)早朝4:00~

休養日なしの3連戦。最終日に開催国であるハンガリーと対戦するが、ハンガリーのサポーターによる応援はとても熱いことで知られており、そこに乗り込んだ日本代表は完全アウエーの雰囲気のなかでの戦いを強いられることは間違いない。 

今大会に向けてペリー・パーンヘッドコーチ(HC)が選んだ合宿メンバーは24名。大会での登録選手は23名となる。アジアリーグで負ったケガのため福藤豊(栃木日光アイスバックス)がメンバーから外れ、小野田拓人(レッドイーグルス北海道)が追加招集された。

ハンガリーでの事前合宿参加メンバーのリスト。大会の登録人数は23人

4ヵ国によるリーグ戦形式も実際は、ハンガリーとの一騎打ち

ペリー・パーンHCがどっしりと構えて、攻撃を担当する岩本裕司コーチと守備構築の名手・山中武司コーチがその両脇をガッチリと固める体制は昨春の世界選手権ディビジョンIBでも結果を残した。国内合宿中心で仕上げてきたぶん、選手の連携面、選手同士のお互いへの理解度も深まっている。

対戦相手を見ると、やはりハンガリーが一番の強敵だ。リトアニアとはここ数年対戦しておらず侮ってはいけない相手だがここに負けるようではオリンピック出場など夢のまた夢だろう。スペインは2次予選でオランダを破って上がってきたという勢いがあるものの地力としてはまだ差があり、日本が負ける要素は見当たらない。
日本とハンガリーがともに2連勝して勝点6を手にし、2/10(土)の直接対決で勝った方が最終予選進出となることが濃厚だ。リーグ戦ではあるものの実質はハンガリーとの決勝戦。直接対決前の2戦でどのようにコンディションを上げていくか? またハンガリーの選手や戦術をスカウティングし、いかに対策を練ってハンガリーとの戦いに臨めるかが通過のカギとなる。

今大会で日本の守護神となるのは、成澤優太(レッドイーグルス北海道)で間違いない。
おそらくペリー・パーン監督は春名真仁GKコーチと相談しつつ、リトアニア戦とハンガリー戦で成澤を、スペイン戦で小野田を起用してくると予測する。2人ともにアジアリーグでは高いパフォーマンスを維持しており、成澤は国際経験も豊富だ。普段の実力通りのプレーをハンガリーの地でも披露してくれるだろう。

成澤の安定したゴールテンディングは日本の大きなストロングポイントだ(2023世界選手権IB対ウクライナ戦)撮影:編集部

成澤は「常に100%を目がけてトレーニングできたし、良い合宿を行えました。勝ちきれる力を短期間で上げていかなければいけないなか、各選手がこうやって集まり高い意識を持って合宿できたことは良かった」と苫小牧で行われた昨年11月の合宿後に語っている。「海外遠征だと移動によるコンディション調整が難しいが、逆に国内で合宿することで集中できた点はプラスだった」とも。「ハンガリー戦では120%の力を出さないと勝てないので、アジリティー(敏捷性)やシュートに対する反応の速さなどをもっと磨いていきます」とアジアリーグの試合でさらにプレーを磨き上げた成果をハンガリーで発揮してくれることは間違いない。

海外組の平野裕志朗(AHLユーティカコメッツ・アメリカ)、人里茂樹(GKSカトヴィツェ・ポーランド)、佐藤航平(EIHLベルファストジャイアンツ・イギリス)も日本代表のために合流しさらに攻撃力がアップすることは確実だ。昨春の世界選手権ディビジョンIBでも、彼らの日本代表に対する熱い想いがチームに伝わり、一体感のある非常に良い雰囲気を作り出す要因となっていた。
ゲームメーカー中島彰吾(レッドイーグルス北海道)をはじめとする国内組のコンビネーションも事前合宿でさらに熟成が進んでいる。中島は11月合宿後のインタビューで「チームの戦術、システムを参加選手全員がしっかり試合でのプレーに落とし込む練習を毎日やったり、本当に考えてプレーすることだったり、その中でもハードにプレーしたりすることをペリーHCの指導で追求してきた。参加メンバーはそれをしっかり理解して各チームに戻ることになると思います」と語っていた。そのあたりのチーム力の底上げはしっかりとなされているはずだ。

3次予選を勝ち抜く「突破確率」は?

後列左から岩本コーチ、ペリー・パーンHC、山中コーチ。HCの経験に基づく「展開を読む力」が日本を勝利に導く
(2023世界選手権IB対ウクライナ戦)撮影:編集部

ハンガリーはパスホッケーを指向するヨーロッパ各国の中では珍しく、大きな身体とパワーを武器にフィジカルで押してくるのが特徴的なチーム。今回の3次予選でも熱狂的な応援をバックに激しい当たりで「技術とスピード」という日本の特長を消しにくるプレーぶりが予想される。

それに対してひるまずに対抗しながら試合の主導権を日本代表が握れるか、が直接対決でのポイントとなってくるだろう。現状で日本とハンガリーの力は拮抗しており、ハンガリーに勝って3次予選を突破する確率は55%と当編集部は見ている。大会が始まってからのスカウティングが戦局を左右する可能性もおおいにある。ハンガリーも日本がこの予選の最大のライバルであることは認めている。
2026年のミラノ・コルティナ冬季五輪出場を巡っての熱い戦いがまもなく始まる。ぜひ読者のみなさんも日本から熱い応援を日本代表に送ってほしい。

2026ミラノ・コルティナ冬季五輪参加国、予選のフォーマット

2026年ミラノ・コルティナ冬季五輪に出場が決定しているのは開催国・イタリア(18)のほか世界ランクで上位の8ヵ国。1位から順にカナダ、フィンランド、ロシア▲、アメリカ、ドイツ、スウェーデン、スイス、チェコ。そして最終予選を突破した3ヵ国に出場権が与えられる。
※▲ロシア、ベラルーシはIIHF選手権プログラムへの復帰が決定した場合の理論上のシード順位。今後のIIHFの決定によっては五輪出場が認められない可能性もある

3次予選は日本が参加しているグループG(開催地:ハンガリー)のほか、同時にグループH(同イギリス)とグループJ(同ポーランド)が開催されており各組1位の3ヵ国が最終予選に進出する。
最終予選はグループD(開催地:スロバキア)、E(同ラトビア)、F(同デンマーク)の3グループに分かれて4ヵ国によるリーグ戦が今夏8/29から9/1の日程で行われることが決定しており、そこでそれぞれ1位となった3ヵ国が2026年ミラノ・コルティナ冬季五輪の出場権を獲得する。
なお、3次予選通過国の世界ランキングを比較して一番上位の国がグループF、続いてグループE、そして一番ランクが低い国がグループDに振り分けられるため、日本が最終予選に進出した場合にどのグループになるかは現時点では未確定だ。

最終予選 2024/8/29~9/1
<グループD>
スロバキア(9)、ベラルーシ(14▲)、カザフスタン(15)、3次予選通過3ヵ国のうちランク最下位
<グループE>
ラトビア(10)、フランス(13)、オーストリア(16)、3次予選通過3ヵ国のうちランク2位
<グループF>
デンマーク(11)、ノルウェー(12)、スロベニア(17)、3次予選通過3ヵ国のうちランク最上位

ぜひ最終予選進出を決めて日本に帰って来てほしい(2023世界選手権IB対ウクライナ戦)撮影:編集部


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