参戦3年目横浜グリッツ、チーム内競争激化で越えるいくつもの「壁」

取材・文／今井豊蔵　写真／アイスプレスジャパン編集部

■アジアリーグアイスホッケー　9/18（日）KOSE新横浜スケートセンター
横浜グリッツ 5（1−2、2−1、2−0）3 ひがし北海道クレインズ

トップリーグ参戦3年目を迎えた横浜グリッツにとっては、18日のクレインズ戦で挙げた勝利もまた、一つの節目だった。
浅沼芳征監督の「北海道のチームにやっと勝てたので」という言葉に、実感がこもる。
グリッツには北海道以外の、恵まれないプレー環境で育ってきた選手も多い。「環境に言い訳せず、努力で結果を出せると示していくのも、このチームの価値」という指揮官の言葉通りの結果を、出し始めている。

そして、開幕から4試合を戦い3勝1敗と、念願だったホーム初勝利からさらに勝ち星を重ねている。
その原動力となっているのは競争の激化だ。

この日は前日から、ベンチ入りするFW2人を入れ替えた。
第1ピリオド2分、昨季はチームトップの10得点を挙げたFW松渕雄太のゴールで先制する。その後クレインズのFW磯谷奏汰の連続ゴールで逆転を許すものの、第2ピリオド9分にはFW鈴木ロイ、13分にはFW池田涼希と主力が得点を重ね、リードを奪った。

得点力のアップに注力しているクレインズも反撃し、15分にFW斎藤大知の2試合連続ゴールで3－3の同点に追いつく。

ただグリッツに諦めの気配はみじんもない。
第3ピリオド9分、FW氏橋祐太がパックを持って敵陣へ攻め込むと、右スロットからのシュートが勝ち越しゴールに。試合終了直前にはFW岩本一真が無人のゴールにパックを放り込みダメを押した。

まだ、余裕があるとまでは言えない。
登録DFは6人で、けが人が出ればすぐに厳しい状況となる。それでも昨季までの2年間と比べた時、選手層は一気に厚くなった。
新加入のDF蓑島圭悟は日本代表の常連。FW泉翔馬はデンマーク１部でのプレー歴もある。昨年主力を張った選手が下位のセットに回ったり、ベンチを外れることもある。その中で松渕や氏橋が意地を見せた。
うまい選手が入ってきたという以上に、チーム力のアップを感じさせる。

ファンに与える印象も大きく変わった。
昨季は好勝負といえば、ひたすら押し込まれる展開をGKの好セーブを中心に耐えるというパターンしかなかった。
それがクレインズとの2連戦は、共に先制したことでも分かるとおり、パックを持って試合をコントロールできる場面が増えている。

はっきり変わったチームの目標設定「プレーオフに行きたい」

その中でも浅沼監督は、「無理やり中を通すようなパスはやめて、シンプルに前へ前へと出ようと。相手のスティックをしっかり抑えて、バトルに負けないこと」とシンプルなホッケー に徹してほしいと伝えている。
当たって前へという流れを作ると、攻守が入れ替わるたびにスタンドが沸いた。

開幕からの3試合、ゴールを守り続けたGK黒岩義博に代わって、この日は小野航平を起用した。小野は32セーブ3失点で、昨年のアイスバックス戦以来の勝利を挙げた。
先発出場を告げられたのは、敗れた17日の試合後。「少し緊張はしたんですが、これまでと少し違った試合をできる喜びのほうが大きくて。勝ったときはうれしかったですね。やはりホームリンクなので」と笑顔で勝利を振り返る。

チームの強化から競争原理が持ち込まれたのはGKも一緒。関西大からGK石田龍之進が加入し、ようやく他チーム並みの3人体制となった。
浅沼監督は「連戦で使えるGKを作りたい」とは言うものの、今のところ正GKを固定するのではなく、あくまでも調子を見ての起用をするつもりでいる。
「ライバルが入ってきて、切磋琢磨してチームに貢献できるようになりたいと思っています」という小野の言葉にも、緊張感がにじむ。

現在のチーム勝率は3勝1敗で.750と、去年までなら考えられない数字だ。順位もハルラ改め「HLアニャン」に次ぐ2位につける。今後は本拠地を離れ、レッドイーグルス北海道とHLアニャンという優勝候補との対戦が続く。
特にグリッツはHLアニャンとは初対戦だ。アイスバックス時代に対戦経験のある小野は「体は強いし、パスは通る。シュートもいいですし…。あとアニャンのリンクは声援がすごいんですよね」と強烈な印象を語る。
できて3年目の若いチームにとってはビッグチャレンジが続く。

「プレーオフに行きたいと思っています。そのためにはまず全チームに勝つのが通過点。そこからまた一つ一つ積み上げていきたい。１シフトが勝負だと思っています。その積み重ねが試合の勝敗になる」と浅沼監督。

ワンシフトを「やり切る」選手たちとともに、また新たな驚きを与えてくれるはずだ。