ペリー・パーン監督に、男子日本代表が2024年に臨む五輪3次予選、そして世界選手権IAへの展望を聞いた

合宿最終日、ペリー・パーン日本代表監督は鋭い視線で選手たちを見守る

取材・文・写真/アイスプレスジャパン編集部

いよいよ2024年、勝負のときがやって来る。
男子日本代表は2月8日(木)~11日(日)の日程でハンガリーの首都・プダペストに乗り込み、2026年ミラノ・コルチナ五輪の3次予選グループGの戦いに臨む。
また4月28日にはイタリア・ボルツァーノで世界選手権ディビジョンIAが開幕。トップディビジョン昇格2枠を巡っての激しい戦いが繰り広げられることとなる。

五輪3次予選で日本(25)はハンガリー(19)、リトアニア(24)、スペイン(32)とともにグループGに入った。
グループHには中国(26)、Jには韓国(21)のアジア勢が。 ※( )内は世界ランク/IIHFサイトより

その大きな2つの大会を見据えて、2023年11月7日(火)~12日(日)の日程で男子日本代表の強化合宿がおよそ1週間にわたり行われた。この合宿にはペリー・パーン代表監督も来日し、全日程において厳しい目で選手たちの動きをチェック。カナダで長年指導してきた経験を元に、代表選手それぞれにそのエッセンスを注入。合宿最終日とその前日には紅白戦が実施され、代表選手たちは日本らしいスピードとスキルにあふれた試合を披露していた。

その合宿中に、IPJはペリー・パーン代表監督にインタビューをお願いし、2024年に向けこれから日本代表をどのような形で進化させていくのか、様々な話を聞いた。
今回の記事ではその内容をご紹介する。ぜひ、お読みいただければ幸いだ。

若い選手の活躍が日本代表の未来を切りひらく

アイスプレスジャパン編集部(以下、IPJ)監督、お久しぶりです。まず最初に、今回この合宿の一番の目的をうかがいたいのですが?

ペリー・パーン日本代表監督(以下、ペリー監督)
ユーロチャレンジや今春の世界選手権ディビジョンIBで活躍した選手たちの状態を良く見ること、またリフレッシュすることだと思います。戦術・システム面でチームとして何ができるかを改めて把握したいと思っていますし、また、新たな選手たちの活躍を見る機会でもあります。

例えば、大学生から招集した若い選手たち。彼らの活躍が日本代表の未来につながるかもしれないと思って、注目しています。彼らは大学でもトレーニングを続けていると聞きましたので楽しみにしています。

若い選手の成長が日本代表強化には不可欠だとペリー・パーン監督は語る


IPJ 次のオリンピック出場権を獲得するために、この合宿での現在の日本代表チームの成長をどのように受け止めていますか?

ペリー監督 オリンピック出場権獲得に向けて、さらに突き進むことができればと思っています。若い選手たちにとっては、多くの常連の選手と練習をともにすることで日本代表で起こっていること、その戦いぶりを感じ「代表の試合に出よう、もっとうまくなろう」というモチベーションになっているはず。それは重要なことだと思います。日本には、次のオリンピックを数年後に控えている世代の選手たちもいますから。

IPJ 日本代表に必要なものは何でしょう?

ペリー監督 そうですね......やはり、できるだけ多くの国際経験を積ませることが必要です。U18やU20のプログラムは日本のアイスホッケーの将来にとって、とてもとても重要だと捉えています。U世代のチームが成功することは、日本の強化プログラムにとっても、選手たちにとっても前進へ向けた自信につながると思います。また、大学チームがやっていることと、代表の強化プログラムがやろうとしていることの間に協力関係があり、継続性があることも重要だと思っています。そのあたりの構築を密に進めているところです。

日ア連サイトで発表された11月合宿の選手リスト。
ケガ等の関係で、鈴木健斗選手(日光アイスバックス)、早田聖也選手(日光アイスバックス)、床勇大可選手(法政大学)が直前で不参加となり、宮田大輔選手(日光アイスバックス)、武部太輝選手(レッドイーグルス北海道)が追加招集された。

ハンガリーの五輪3次予選には自信を持って臨む。世界選手権IAも優勝を狙う

紅白戦に臨む中島彰吾選手(左)、GK成澤優太選手(中)、入倉大雅選手(奥)

IPJ 男子日本代表は2月にハンガリーでオリンピック3次予選を戦います

ペリー監督 そこで成功するチャンスは確実にあると思っています。2022-23シーズンは、ハンガリーの地で日本代表はハンガリーと3度対戦しています。最初に対戦したときは、延長戦の末に敗れました、また2試合目もかなりうまく対応されました。でも、一晩でうまく調整ができ、最終戦では3-0で勝利しています。
その経験からも選手たちはハンガリー戦に自信を持って臨んでいけると思います。リトアニアは2023年の大会ではディビジョンIAでしたが、降格をして今季2024年はディビジョンIBです。だから、その2チームに負けない自信があります。また2024年、日本代表は世界選手権ディビジョンIAで優勝を狙います。
そのIAで勝てるのか?? 勝つためにはいいプレーをしなければならないのは明らかですが、チームとしての実力を考えれば、ケガ人さえいなければIAのどのチームとも今の日本代表は互角に戦えると思っています。アジアリーグの日本選手で構成されたオールスターチームを実質韓国代表であるHLアニャンと戦わせたなら、かなりいい結果が出ると思います。
2023年はテストマッチでハンガリーにも勝ったし、スロベニアにも勝った。だから、これから対戦する5チームのうち4チームは、過去1年間に我々が勝つことができたチームだということをファンのみなさんは知っておいてほしいと思います。

4月28日に開幕する世界選手権Div-IA参加国はこの6ヵ国。優勝&2位がトップディビジョン昇格。最下位がDiv-IB降格となる。
 ※IIHFサイトから


ですのでもう一度言いますが、われわれ日本代表はとても自信を持っていい、と考えています。まだまだ良いプレーをしなければならないし、戦術なども煮詰めていく必要はありますが、この世界選手権ディビジョンIAで2位以内に入り、トップディビジョンへと昇格できる力はあると思っています。ぜひ2位以内に入りたいですね。

IPJ アイスホッケー選手として成長するために、日本の選手に一番伝えたいことは何ですか?

そうですね、昨年チームをみた最初の頃は「自分たちの実力を信じることだ」と感じていました。日本は他のアイスホッケー強国から少し地理的にも孤立しているから、選手たちは自分たちの実力を信じていないのかもしれない、と。だから、ハンガリーやスロベニア、セルビア、オランダに勝てるという自信を持たせ、それを理解させることが大切です。
日本代表がそのような自信を得ることで、自分たちの技術やスピードを発揮できていく、本当に良いチーム状態になっていくのだと思っています。

IPJ 監督のアイスホッケーへの情熱がチームへいい影響を与えていると感じます 

ペリー監督 私はアイスホッケーをプレーすることを楽しんでここまで来ました。また教えることが大好きだし、アイスホッケーの世界に入ったことで、教えることに生涯を費やすことができた。 指導者として、代表チームのスタッフのみなさんとともに働き、選手たちが成長し、成功するのを見ることはこの上ない喜びです。

IPJ もうひとつ質問を。日本アイスホッケー連盟は財政的な問題に直面しています。その点についてはどうお考えですか? そのような状況の中で監督はベストを尽くしていると感じていますが……

ペリー監督 私がコントロールしている、あるいはコントロールできるのは「チームをどのように指導するか」という点についてです。資金面を私がコントロールすることはできませんが、心配はしていません。私は、連盟のことをよく知っている、岩本裕司コーチ、山中武司コーチ、春名真仁コーチの3人の素晴らしいコーチと一緒に働いていて、彼らは私たちの目の前にあるものを示してくれています。だから、私たちがあらゆる種類のお金を持っていようが、少ししかお金を持っていなかろうが、コーチとしての私たちの焦点は、チームをしっかりとコーチングすること、その一点です。

IPJ 様々な質問にお答えいただき、ありがとうございます。2024年の日本代表の活躍を期待しています

ペリー監督 どうもありがとう。
<インタビュー終わり>

男子日本代表の「現場の努力」に応えられる後方支援を

この11月合宿の時期は従来なら「ユーロチャレンジ」に参加するため男子日本代表はヨーロッパに遠征する期間だった。しかし、財政的な問題で国内合宿に切り替えられたと聞いていた。しかしながら、実際に取材をしてみると、ヨーロッパへ往復する時間と時差の負担がなくなったことでかえって濃密な合宿でのトレーニングができた側面もあり、現場の選手&スタッフは決して悲観をしていなかったのが印象的だった。

また連盟の強化委員長には東洋大学の監督としてチームを強化してきた鈴木貴人監督が就任した。このことで日本代表の目指すチームの方針と大学の指導方針とをすりあわせてベクトルを同じ方向へと一致させていく取り組みができれば相乗効果を期待できるだろう。

ペリー・パーン代表監督の言葉にもあるとおり、「資金面はコントロールできないので、チームの指導に集中している」と腹をくくってこの合宿に選手・スタッフ含めて臨んでいる雰囲気は伝わって来た。とはいえ夏を越えて来季はヨーロッパ遠征ができるような資金面の手当ては急務で、早急に支援の取り組みを進めていくよう日本アイスホッケー連盟には強くお願いをしたいと思う。

いっぽうで、この厳しい状況の中でもベストの道を模索しようとしている選手・スタッフの頑張りをファンのみなさんはぜひ応援で支えていただければ、ともお願いする。

2024年は男子日本代表にとって、実りある結果を手にする1年になることをこころから祈念する。

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