さらなるジャイアントキリングなるか。東洋大が好発進
取材・文・写真/アイスプレスジャパン編集部
第90回全日本選手権1回戦
東洋大学 7 (0-1、5-0、2-1) 2 日本製鉄室蘭アイスホッケー部スティーラーズ
北の強豪を抑えて見事な逆転勝ち。東洋大学が全日本選手権初戦を“東洋らしく”勝ち取った。
鈴木貴人監督は第2ピリオドで5得点、一気に形成を逆転した選手達のパフォーマンスに満点とはいかないまでも高い評価を与えた。
「スタートは少し動きが硬かったのと試合勘がなかった部分は見受けられたが、第2ピリオドから本来の自分たちのプレーを多くできるような試合展開に持ち込むことができた。固さがありながらも自分たちが動き回ることでプレッシャーをかけ続けた結果が第2ピリオドに繋がったのではないかと思います」(鈴木監督)
第1ピリオド12分すぎ、室蘭スティーラーズ・野澤一矢に先制点を献上し1-0。そのまま室蘭ペースで第1ピリオドを終えたかに見えたが、第2ピリオドに向けての伏線はすでにそこで張られていたということか。
第2ピリオド、一気にギアを上げた東洋大
室蘭スティーラーズ・キャプテンの横山恭也も試合のターニングポイントとして挙げたのがやはりその点。第2ピリオド序盤の攻防だった。
「第2ピリオドは自分たちにかなり反則が多かったのとインターバルを挟んで勢いが落ちてきてしまったので。1ピリと同じプレーを続けられていれば、という思いはあります。東洋大はスピードという持ち味をしっかり生かしなおかつフィジカルも強くて……我々が目指すホッケースタイルを逆にやられてしまった気がします」(横山)
東洋大が一気にギアを上げた時に生まれた勢いには、北の強豪も対応するのに時間が掛かった。そのなかで東洋大は着実に追加点をあげる。第2ピリオドだけで5-0。技巧を若さとパワーが凌駕した時間帯でもあった。
「室蘭スティーラーズは関東大学やアジアリーグで活躍したメンバーが多く非常にスキルのある相手だった。そういった選手が全力でぶつかってくれたことはうちの学生たちに良いメッセージを与えてくれた」と語る東洋大・鈴木監督。今季の東洋大のどこがいいのかと聞かれると「まずは素晴らしいタレント(才能)がいるチームだと思っています。そのうえで、(関東大学)リーグ戦などで結果が出ないで苦しんでいる時期があったとしても、そんな沢山のタレントがいるチームでありながら、勝つためにチーム全員が同じ方向を向いて戦い続けているところです」と言葉を繋ぐ。
第2ピリオド一気の攻勢は監督も評価するこの結束力が下地にあった。
この試合2得点をあげた武部太輝は「味方が良いところにパスを出してくれたのであとはシュートを打って決めるだけ、という気持ちで思いっきり打ったことが結果に繋がった」と、とにかく目の前のプレーに集中する意識だったと振り返る。こういう選手が多数揃うチームは強い。
目標は4強。ひたむきさと結束力でアジアリーグ勢の一角を崩せるか?
東洋大の2回戦の相手は、アジアリーグ勢の栃木日光アイスバックス。簡単に勝てる相手ではないが、昨年度の全日本選手権2回戦で対戦したとき(3-5で敗戦)以上の試合内容を見せるつもりだ。
「去年のアイスバックスとの試合はチームとしても手応えを感じられたゲームだった。今年はベスト4を目指してやっている中で今年のメンバーはその可能性を高めている良いチームだと思っています。今年はまたゼロの状況からチャレンジし続けて少しでも相手にプレッシャーをかけ続けられればと考えています」(鈴木監督)
武部にアイスバックスと対戦することはドキドキかワクワクかと聞いたところ、武部は「『ワクワク』です」と即答。
室蘭スティーラーズ戦と同様に、全員が目の前のプレーに集中し運動量で凌駕することができればジャイアントキリングの可能性も上がってくる。「接戦」以上の結果を東洋大は虎視眈々と狙っている。