くじら軍団室蘭スティーラーズの挑戦①

J-IceNorth優勝争い いよいよ佳境に

取材・文・写真:今井豊蔵

 日本のアイスホッケー界では高校、大学と続く学生ホッケーと、その先にあるアジアリーグにトップ選手が集まる構造になっている。では、社会人に用意されている競技ホッケーの舞台はアジアリーグだけなのかと言えばそうではない。
アジアリーグが獲得する選手も、そこに進もうとする選手も減っているなかで、トップクラスの学生選手の進路に挙がってくるのが通称「B級」と呼ばれるランクのチームだ。
北海道の6チームが、2回戦総当たりで覇を競う「Jアイスノース(J-ice North Div.)」はその最高峰。近年このリーグで目覚ましい躍進を見せる「室蘭スティーラーズ」を中心に、知られざる世界に迫りたい。

室蘭スティーラーズは首位をキープし、最終戦(2/7)のアウエー・ダイナックス戦に臨むことになった

2021年1月23日 会場:札幌月寒 
日本製鉄室蘭IH部・室蘭スティーラーズ 6(2-1、2-1、2-1)3 札幌ホッケークラブ

「Jアイスノース」で2連覇を目指す室蘭スティーラーズにとっては、どうにも消化不良な1戦となった。札幌ホッケークラブの3倍となる51本のシュートを放ちながら、スコアは6-3。ルーキーDF切江蓮(中大)は「手応えというものはないですね・・・」と首をかしげ「出だしがよくなかったですね。アップはしますけれど、足とか固まった感じがあった」。室蘭から札幌まで2時間半のバス移動のあと、すぐ試合というスケジュールが重しを背負わせたのか、前回対戦では19-0と圧勝した相手を突き放せない。得点を挙げては半歩迫られるという繰り返しで、緊迫した空気は終盤まで続いた。

 コンディションの問題に加え、このリーグでは各チームや選手の力が、試合結果以上に接近しているという現実がある。つい最近まで関東学生リーグの強豪でプレーしていた選手も、アジアリーグでプレーしたのち、続けて競技ホッケーの世界に身を投じている選手もおり、それぞれの特徴を生かしたプレーを見せる。この試合で4得点し、ベストプレーヤーに選ばれた2年目FW阿部魁(東洋大)は「激しさはプロにも負けないと思いますが、学生のようにガツガツ行くよりも一歩引いた『エロい』プレーをできる選手がいる。魅力を感じるし、自分もうまくなれる」とニヤリ。札幌のベテランDF鬼頭俊行(元クレインズ)のハンドリングを例に挙げる。

阿部魁はこの日4得点の活躍。「このリーグでもっと上手くなれる」とも語る

 苦戦にはアクシデントも影響していた。研磨に出されていた主力FW岩槻翔悟(法大-東北フリーブレイズ)のスケートが、手違いで第2ピリオド開始前にようやく届いた。ここまでリーグ3位、チームではトップの14ゴールを記録するスコアラーは、試合の流れに途中から入っていく形に。本領発揮とはいかなかったが「やったことがない難しさでした。でも試合に出ていれば、けがをして間が開いてからまた出ることもありえます。いい勉強になりました」と学びを今後に生かすつもりだ。

 室蘭は1試合を残して、勝ち点24で首位に立った。2月7日に日程が組まれている同チームの最終戦には、1差で追う2位ダイナックスとの直接対決が控える。室蘭は60分で勝利するとリーグ2連覇が決まり、負ければ逃すという究極の一戦だ。ここに向けた策も着々と進行中。1月17日の対戦を3-5で落としたことを受け、大胆なセット変更に踏み切った。

中大で注目された切江(右)も活躍の場を室蘭に選んだ。元日本代表・山下拓郎(元東北フリーブレイズ)とマッチアップ

 第1セットのDFに入る切江は「ダイナックス戦に備えて、得点力のある選手を固めたのかな」と意図を解し、同じく1つめのFW阿部は「若い世代で固められて、僕らはフレッシュに動けということだと思う」とハードワークを誓う。ただ、札幌戦までの1週間は新ラインでの練習を1度しかできず、精度を高めるには至らなかった。残り2週間の調整に勝負がかかる。

 室蘭スティーラーズは、選手の大半が日本製鉄とその関連企業で働く実業団チームだ。新型コロナウイルス感染が拡大し、リンクでの観戦が厳しく制限された状況でも、選手の属する職場での関心は高い。新和産業で事務職に就く阿部も「去年は試合を見に来てくれたことも多かったし、今もライブ配信や、SNSでの発信をみんな見てくれています。なんとか名前を残して、ホッケーで恩返ししたい」と口にする。
さらにこのチームの異色な点は、この輪を会社の中から、室蘭という地域にまで広げようとしている点だ。

元アジアリーガーの岩槻(右)も、アイスホッケーを地域にどう浸透させるかを考えている

 アジアリーグでプレーした前歴のある岩槻は現在のモチベーションを「プロをやめたから楽しくプレーするというのではなく、室蘭にどうアイスホッケーを普及させるか考えながらやっている。苫小牧、釧路、帯広はホッケーで有名な町ですが、室蘭もあるぞと。どう全国に認められるか」と説明する。Jアイスノースで優勝すればその先に控えるのは、日本一を決めるプレーオフだ。敵地苫小牧で行われる「2・7最終決戦」から目が離せない。

J-Ice North順位表(21/01/26現在)

①室蘭スティーラーズ 勝ち点24(8,0,0,1)残り1試合
②ダイナックス    勝ち点23(7,1,0,0)残り2試合
③釧路厚生社IHC   勝ち点16(5,0,1,3)残り1試合
④タダノ       勝ち点10(3,0,1,6)残り0試合
⑤札幌HC       勝ち点5(1,1,0,7)残り1試合
⑥東部ブレイズ    勝ち点3(1,0,0,8)残り1試合

※カッコ内は(60分勝利、延長勝利、延長負け、60分負け)の試合数

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