いざ、世界の舞台へ。日本代表GK3人が“日韓戦”でつかんだ自信

PS戦で韓国の攻撃をしっかりと止める成澤。彼をはじめ日本代表のGKには高いレベルの選手が揃った(Photo:編集部)

取材・文/アイスプレスジャパン編集部 写真/JIHF/永山礼二、沢田聡子、編集部

The Asia Classic Ice Hockey~日韓代表戦 2026~
第1戦 4/18 (土) @ダイドードリンコアイスアリーナ 観衆:1574人
日本 2(1-0、0-1 、0-0、OT 0-0、PSS1-0)1 韓国
ゴール:【日本】髙木、小林(GWS)/【韓国】オ・インギョ
GK:【日本】大塚/【韓国】イ・ヨンスン

第2戦 4/19(日) @KOSĒ新横浜スケートセンター 観衆:1298人
日本 6(2-0、1-1、 3-1)2 韓国
ゴール:【日本】磯谷、小林x2、三浦、榛澤、キャラー/【韓国】キム・シファンx2
GK:【日本】冨田⇒成澤/【韓国】イ・ヨンスン

【世界選手権ディビジョンIA日本戦の日程  @ポーランド・ソスノヴィエツ】
5月2日 19:30 vs フランス
5月3日 19:30 vs カザフスタン
5月5日 19:30 vs リトアニア
5月8日 2:30 vs ポーランド
5月8日 23:00 vs ウクライナ
※時間はすべて日本時間。IIHF.TV(有料)にてネット中継あり
参加国>カザフスタン(13)、フランス(14)、ポーランド(19)、リトアニア(21)、ウクライナ(22)、日本(20) ※( )は世界ランキング

ついにGKにも訪れた“世代交代”の波

 日本時間で5/2(土)の19時30分、ポーランド・ソスノヴィエツを舞台に男子アイスホッケーの世界選手権ディビジョンIA(2部相当)が開幕する。

 現在のフォーマットとなってからはまだ到達できていないトップディビジョン昇格を目指す日本は、初戦でトップディビジョンから降格してきたフランスと対戦する。
 ジャロッド・スカルディ日本代表監督はキャプテンに2001年生まれで24歳の中島照人(レッドイーグルス北海道)を指名し、若手選手も多く起用するチーム構成に踏み切った。海外でプレーする選手も積極的に招集し、チームの世代交代を図りながら上位2チームに与えられるトップディジョン昇格を狙う。

 世代交代の波はゴールキーパー(GK)にも訪れている。経験豊富で絶対的な安定感を誇る39歳の成澤優太(レッドイーグルス北海道)に加え、昨シーズンに引き続いて21歳の大塚一佐(栃木日光アイスバックス)を2年連続で世界選手権メンバーに選出。そして海外経験も豊富な26歳の冨田開(横浜グリッツ)が初の世界選手権メンバーに選ばれている。2024年に世界選手権ディビジョンIB(3部相当)で優勝しIA昇格を掴むまで、日本代表のGKにはレジェンドである福藤豊(43歳・栃木日光アイスバックス)と成澤がほぼ常に選ばれ、その2人の背中に日本の命運を託してきた状況がずっと続いてきた。しかし、ここ近年になって、ついに日本代表のGKも若手が台頭し、世代交代の波が訪れつつあるのを感じる。

 成澤、大塚、冨田の3人は前哨戦となった“The Asia Classic Ice Hockey~日韓代表戦 2026~”にそれぞれ出場し、韓国代表との対戦で活躍を日本のファンに披露した。悲願のトップディビジョン昇格を日本が果たすためにはGKの粘り強い守りが不可欠だが、“日韓戦”を通じて3人とも何らかの手ごたえを掴めたようだ。その“日韓戦”の後に、世界選手権ディビジョンIAに臨む決意を3人の日本代表ゴールキーパーに聞いた。

「世界を相手にどこまで自分が通用するか楽しみ」大塚一佐が得た手ごたえ

4/18西東京・ダイドードリンコアイスアリーナでの”日韓戦”に大塚一佐はフル出場した(Photo by:JIHF/永山礼二)

 久しぶりに日本で開催される日本代表の試合、その「オープニングGK」に選ばれたのは大塚一佐だった。4月18日(土)西東京・ダイドードリンコアイスアリーナで行われた第1戦はロースコアの展開となった。
 2025‐26シーズンのアジアリーグアイスホッケーでは、安定したゴールテンディングをシーズン通して続け、防御率(1試合当たりの失点)2.17、そしてセーブ率は92.78%と素晴らしい数字で最優秀セーブ率GKに輝いた大塚。その若き俊英は、独立した興行として行われるのは2012年4月以来14年ぶりとなった“日韓戦”でもシーズン同様に高いパフォーマンスをライバル国に披露した。
「久しぶりの試合だったので、頑張りましたけれども、その中でしっかりゲームを作ることができて、勝つことができて良かったと思います」

 大塚は久々となる日本国内での代表戦ということで緊張感にあふれるリンクの雰囲気のなか、それをおくびにも出さず、韓国攻撃陣の強烈なシュートを次々と止めていく。また、日本のスケーター陣との守りの連携も的確だった。
「アジアリーグの時から戦っている選手が韓国には多いのですが、個人スキルも高いですしフリーにしたら怖い選手ばかりなので、そこは注意してプレーすることができました。1失点に抑えられたことは自信になりましたし、勝つことが何よりも重要だと思うので、とりあえずホッとしているのと、次につなげられるプレーができたということで自分でも手ごたえを感じています」

アジアリーグ2025‐26では最優秀セーブ率GKのタイトルに輝いた大塚。世界の舞台でも「鉄壁の守り」をみせつける(Photo:編集部)

 大塚は延長も含む65分間にわたって韓国の分厚い攻撃を受け止め、25本のシュートのうち失点はわずか1にとどめた。そして1‐1のまま試合はPS戦に突入する。
「今シーズンの公式戦でPSではなかなか勝てていなかったので、すこし『嫌だなぁ』という思いもよぎったのですが、練習から調子は良かったので、その通りに動いて相手を止めることができたと思います」
 大塚はこのPSでも落ち着いて韓国の各選手が放つシュートにしっかりと対応。許したシュートはキム・ゴヌ(HLアニャン)の1本だけに抑え、日本代表を見事に勝利へ導いた。
「初戦で対戦するフランスはトップディビジョンから降格してきましたがオリンピックにも出ているチームですし、そういった強豪に自分のプレーがどこまで通用するか? は自分自身本当に楽しみにしています。その気持ちを持って、ポーランドでの大会本番ではしっかりチャレンジしていきたい」

韓国との対戦を勝利で終え、自信も新たに世界選手権へと大塚は向かう(4/18、Photo:沢田聡子)

 世界選手権に向けての日本代表合宿が始まる前に、大塚はLINEでアイスバックスの先輩GKである福藤豊からメッセージを受け取った。大塚によると、「精神的にはきつい大会になるかもしれないが、自分を信じて頑張れ」という言葉だったという。日本を背負うという重圧をその身でずっと感じてきた福藤だからこその実感のこもった激励だった。レジェンドからの言葉も胸に、大塚はヨーロッパの強豪に堂々と対峙するつもりだ。 

「自分らしく、冨田開のプレーを」。完封で存在感を示した冨田

“ホーム”新横浜のリンク、「ファンの声援をしっかり感じていた」という冨田(Photo:編集部)

 会場を新横浜に移した2戦目。“日韓戦”の先発GKを務めたのはその新横浜スケートセンターをホームとする横浜グリッツ所属の冨田だった。
「自分として初の代表だったので、正直すごく緊張もありましたし、責任という部分も感じていました。自分が横浜グリッツでプレーしていて、会場がホームということもあったのでそういう思いもありました」

 念願だった代表のユニフォームを着て新横浜でプレーする、そんな状況で「試合の入りは緊張した」という冨田だったが、詰めかけた満員のスタンドを味方につけて素晴らしいゴールテンディングを披露する。韓国のシュートを受けるごとにリズムが作られ、守りには安定感がどんどん増していく。
「苫小牧での合宿でも日本でもトップレベルの選手がたくさん集まっている中で受けたシュートもすごかったですし、日本代表の速いテンポのホッケーは戦っていて楽しかったですね。やはり普段は敵としてシュートを受けていたジャパンのメンバーが仲間として戦ってくれたのはすごく心強かったです。その中でこの試合でも自分の課題がたくさん見つかったのも、今後を考えると良い時間となりました。本番では自分の責任を全うしたいと思っています」

初となる世界選手権の舞台で「自分らしく」プレーすることを誓う(Photo:編集部)

 与えられた時間は30分だったが、その中で冨田はシン・サンフンやキム・ゴヌ(ともにHLアニャン)など韓国代表の中心メンバーに対してもしっかりと対峙した。
「会場のグリッツファンの方々もすごく声を出して応援してくれているのは感じていたので、その声援というのが自分の力になったことは間違いないです」
 ファンの応援を背に受けて丁寧に自分のスタイルを貫き、相手が放ったシュートを着実に止める。終わってみれば受けたシュート10本すべて止め完封。3‐0と日本がリードする状況のなか、残り30分を成澤に託し交代する。この30分を戦い終え、冨田は充実感に包まれながら、「代表でもやっていける」という自信も得たようだ。
「世界選手権に選手として行くこと自体初めてですし、試合に出られるならば多少は緊張すると思いますが、日本代表のユニフォームを背負ったからには、期待されている役割をしっかり果たして、冨田開のホッケーができるように頑張っていきたいと思います」

「我慢強い守りを見せること、その1点に尽きると思います」昇格へ向け成澤優太も準備万端

4/19新横浜での日韓戦では第2ピリオドほぼ半分からの出場となった成澤選手(Photo:編集部)

冨田の活躍を引き継ぎ、満を持してリンクに登場したのが成澤優太だ。レッドイーグルス北海道が全日本選手権とアジアリーグの2冠を達成する原動力となった守護神は観衆から大きな拍手をもって迎えられた。しかしこの日のファーストプレーは韓国のFW2人がノーマークで成澤の守るゴールに突進してくる、というタフなシチュエーション。成澤はいきなり失点を許す、というスタートとなった。
「出る以上はあの1点で負けたとかあの1点で流れを持っていかれた、などという形は世界選手権の本番では出ないように自分の中でも修正していかなければいけないと改めて感じました。変わったばかりでシュート1本目から難しい展開ではあったんですけど……」

先発GK冨田選手とエールを交わす成澤選手(Photo:編集部)

 試合後、反省の言葉をまずは口にした成澤。しかし、そんな状況を喫してもそのあと全く崩れないのが成澤優太。リズムを作り上げるのには困難なシチュエーションにあっても、そこからしっかりと試合を作れるのが経験豊富な成澤ならではの対応力だ。逆転勝利へ向けて攻撃の圧力を高める韓国代表に対して、普段通りの落ち着いた守りを見せ、韓国が放つシュートをさばいていく。終わってみれば受けたシュート13本を2失点にまとめ日本を6‐2の快勝に導いた。
「1人少ないPK(ペナルティキリング)の状況も結構あった中で、終始自分の仕事はできたと思います。点数をつけるのは難しいですけれども、シュートブロックなどで助けてくれたFWやDFのプレーに応えないといけないですし、常に集中力を高めて守れたと思います」

日韓戦では失点こそあったが、普段通りの安定感ある守りを見せてくれた(Photo:編集部)

 さらに試合後に行われたエキシビションのPS戦では、ペナルティショットを次々とストップし、これぞ成澤という守りを披露する。PS戦は7人目までもつれたが、これを決められれば敗戦という状況でも全く動じることなくシュートに対応した成澤の活躍は、つめかけた多くのファンの記憶に残ったに違いない。
「プレーオフが終わって1週間ほどしか休めていないですけれども、良い感じに身体を休めることができていますし、また苫小牧の合宿から良いイメージを保って来ることができています。ただ、相手に強豪国も多いですし現状維持のままではそこに勝つということが難しいと思うので、ヨーロッパに渡ってからの合宿でもっと調子を上げていこうと思っています。そして大会までに少しでもレベルアップできるように取り組んでいきたいと思います」

 世界選手権に向けて、GKとして何が一番重要だと考えているか? と記者に問われると「どんな試合でもどの状況でも自分のミスで失点したり崩れてしまったりすると、流れをなかなか持ってこれないと思うので。僕自身もそこは何度も経験しているので、なるべく我慢強い守りを見せるということ、その1点に尽きると思います」と成澤は即答した。代表で長くプレーし、その難しさ苦しさも知り尽くしている成澤の言葉だけに、重みがある。ポーランドでは成澤のどんな素晴らしいプレーが飛び出すか、楽しみでならない。

GK3人の結束力で、日本代表は世界に立ち向かう

それぞれの形で経験と自信を3人の代表GKにもたらした貴重な機会となった“日韓戦”。このような形で世界選手権を前に真剣勝負の機会が得られることは、チームにとっても本番に向けて調子をあげていくのに良いステップとなったことは間違いないだろう。ヨーロッパに渡ってから組まれた練習試合では日本は現在トップディビジョンにいるハンガリーを相手に2連勝を果たした。
 7日間で5試合を戦わなければならない世界選手権Div‐IAの舞台では、以前とは違いプレーの高速化とシュートパワーの向上が進み、それを防ぐGKへの負担も増してきている。そのためGKも1人で5試合を戦うのではなく、相手との相性、そして大会全体の展開をにらんで複数のGKを起用する流れになってきている。その中で、それぞれが個性を持ち、高いレベルを維持しているGK3人をそろえる日本はアドバンテージを持っているともいえる。

 世界選手権ディビジョンIAは、いよいよ今夜5/2(土)19:30(日本時間)から日本vsフランスの試合で開幕する。念願のトップディビジョン昇格を果たし世界の強豪国として名乗りを上げるために、GK3人それぞれの戦いぶりに期待し、注目したい。

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