4強目指すスマイルジャパンは、初戦でデンマークと対戦

文/アイスプレスジャパン編集部

8月20日12時(日本時間8/21 午前3時)、チェコ対デンマークの戦いで2021IIHFアイスホッケー女子世界選手権が開幕した。
会場はカナダ中部に位置するアルバータ州カルガリー。1988年にカルガリーオリンピックが行われたオリンピックパーク内にある収容人員約3000人のWinSport Arenaが会場となる。

大会公式Webサイト https://www.iihf.com/en/events/2021/ww から
会場となるWinSport Arena (同施設のWebサイトより)

女子世界選手権が開催されるのは2019年にフィンランド・エスポーを舞台にした大会(日本は8位)以来となる。
昨年はコロナ禍の急拡大によって中止を余儀なくされたが、今シーズンは北京オリンピック前年の重要な大会ということもあり主催者のIIHFとHockey Canadaは早い段階から開催への意欲を強く示していた。しかし、皆さんご存じの通りウィルスの勢いは非常にすさまじく、当初は東海岸のハリファックスという街で4月に予定されていた大会がまず5月に延期となり、その後も大会開始直前にハリファクスのあるノバスコシア州政府が急遽中止を要請。今回ようやく8月にカルガリーで開催されるに至った経緯だ。

女子日本代表「スマイルジャパン」は5月の中止のときには、北海道から東京へ移動して翌日集合地のヨーロッパに飛ぼうか……という直前で中止連絡を受けて羽田から急きょ引き返したという状況だった。
参照記事>2021 IIHF女子世界選手権が急遽中止 https://bit.ly/3sJ68j9

今回はHockey Canadaの本拠地であるカルガリーにて、完全に選手と観客を隔離するバブル方式を用いることでなんとか開催へとこぎ着けた。

後の原稿でもどこかでご紹介できればと思うが、スマイルジャパンのメンバーは直前の苫小牧&釧路合宿ですでにバブル方式の隔離状態に入っていたそう。また、8/10の出国からフィンランド経由でカナダ到着後も一定期間まで選手達はホテルの部屋にて各自でトレーニングを行うかたちで隔離となり、チームとしての氷上練習は8/16にようやくできたという状況だ。

このバブルの件に関しては、今回チームリーダーとして同行している細谷妙子さんをはじめ、苫小牧や釧路のリンク関係者の方々、またチームスタッフは事前合宿時からIIHF等関係団体の相当に厳しい要求に応えたうえで対策を実施したと聞いている。感染者を出すことなく無事カルガリー入りを実現したことだけでも素晴らしいことだとお伝えしたい。

とにかく、「スマイルジャパン」にとって久しぶりの国際舞台は整った。
■女子日本代表メンバー表:https://www.jihf.or.jp/.../img/info/info_20210731_100101.pdf
■大会公式Webサイト:https://www.iihf.com/en/events/2021/ww/schedule

10カ国による激戦。大会のフォーマットを解説

さて、冬季オリンピックでは来年の北京大会から出場枠が8カ国⇒10カ国に増えるが、世界的に女子アイスホッケーがレベルアップしていて、特にヨーロッパ各国の成長がめざましいということから世界選手権ではすでに2019年から10カ国に枠を拡大して行われている。
今大会でも出場10チームを5つずつに分け、上位をグループA、下位をグループBとして総当たりのリーグ戦を行う形式で予選ラウンドが行われる。

グループA:アメリカ(1) カナダ(2) フィンランド(3) ロシア五輪委員会(ROC:4) スイス(5)

グループB:日本(6) チェコ(7) ドイツ(8) デンマーク(11) ハンガリー(12)

※( )内は世界ランク

そして、決勝トーナメントに進出できるのは8チーム。
Aの5カ国はすべて、Bはリーグ戦の上位3チームが決勝トーナメントに進むことができる。日本はまずできるだけ上位でBグループを通過して、A下位のチームとの準々決勝に臨むのが最初の目標だ。

また、今大会からは準々決勝で敗れた同士でもトーナメント形式で来年のグループA入りをかけた5位決定戦があり、最後まで気を抜けないフォーマットになっている。なお、従来ならB4位、5位は自動で一つ下のディビジョンIA上位との入れ替えが行われるが、今大会は降格は無しと発表されている。

■スマイルジャパンの試合日程(すべて日本時間)

グループリーグ
8/22(日)10:30 対デンマーク

8/24(火) 7:00 対チェコ

8/25(水)10:30 対ハンガリー

8/27(金)10:30 対ドイツ

■準々決勝の組み合わせ

 ①A1位xB3位 ②A2位xB2位 ③A3位xB1位 ④A4位xA5位

大会のみどころ①:スマイルジャパンの躍進が見たい!

やはり気になるのが、我らが女子日本代表「スマイルジャパン」の戦いぶりだ。コロナ禍のため、今大会に向けて選手達は月1回ペースで行われる強化合宿で集まり、練習を重ねてきた。

渡航制限が続いたため、海外勢との試合はほとんどできない状況で、そこは陸続きのヨーロッパ各国と比べてハンデとなったことは否定できないが、「逆に国内で集中して鍛えられる」との思いで各選手は厳しいトレーニングを続けてきたはずだ。試合の最後まで足が止まらない運動量の豊富さはもう日本の伝統ともいえるほど。各自が普段からフィジカルを積み上げていくという意識の高さはチームに浸透している。
また、飯塚祐司監督のもとで攻撃のパターンやフォーメーションの熟成を続けることができたこともプラスに考えたい。また、コロナ前の2019年には主力選手がスウェーデンやカナダなど海外のリーグに所属して経験を積んでいて、海外選手に対する対応力も上がっていると思うし、その蓄積にも期待したいところだ。

予定通りなら、「スマイルジャパン」は6ヵ月後の来年2月には北京冬季オリンピックに出場を果たす。その前哨戦としてもドイツやチェコなどグループBのライバルを蹴散らして、準々決勝で世界をあっと言わせる戦いを見せたいところだ。

大会のみどころ② 自国開催・カナダが6年ぶりの優勝を勝ち取れるか? 3強の構図は?

世界選手権・オリンピックと幾度となく名勝負を繰り広げてきたのがアメリカとカナダ。

過去10大会ではアメリカが優勝8回と他を圧倒しているが、実は前回2019年大会は準決勝でカナダを倒したフィンランドが、決勝オーバータイムで一度はサヨナラゴールか!?(判定はGKへの反則でゴール取り消しとなりその後アメリカが勝利)という光景を見せるほどぎりぎりまでアメリカを追い詰めた。

今回カナダは3位に終わった前大会の雪辱を期すためにかなりの強化に取り組んできており、4年ぶりにアメリカ対カナダという黄金の決勝カードが見られるか、というのがまずポイント。アメリカ対カナダというカードになれば過去の結果から見ても1秒たりとも目の離せない激戦になることは必至で、女子最高峰のプレーがくり広げられることは間違いない。

フィンランドも精度の高いパスワークからの攻撃には目を見はるものがあり、決して侮れないチーム。果たして2強+1が続くのか、3強時代へと突入するのか注目だ。

大会のみどころ③ Aグループに異変は? Bとの入れ替えが発生するか

女子アイスホッケーは2強・アメリカ&カナダが一歩抜けだし、それをフィンランドが、さらに少し遅れてロシア&スイスが追いかけていくという構図がずっと続いていた。しかし、近年の強化でそこに割って入る国がついに現れるかも知れないというのも注目だ。日本やチェコ、ドイツが5位以上になることがあれば、女子アイスホッケー界にとってはとても大きなニュースとなるだろう。

コロナ禍によって、全てのチームが本格的な実戦は久しぶりとなる今回の大会。果たしてその状況がどんな結果をもたらすか、カルガリーでの熱い戦いに注目だ。

■日本アイスホッケー連盟 公式Facebook
https://www.facebook.com/jihf.or.jp

■大会公式サイト
https://www.iihf.com/en/events/2021/ww

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