久慈修平が通算400ポイントのメモリアルゴール。荻野新監督に初勝利をプレゼント

久慈修平が400ポイントに到達したメモリアルゴールが決勝点となった

取材・文・写真/アイスプレスジャパン編集部

アジアリーグアイスホッケー2023-24シーズン開幕戦
9/16(土)@苫小牧・nepiaアイスアリーナ 観衆:1812人

レッドイーグルス北海道 2(1-0、0-0、1-1)1 HLアニャン

ゴール:【REH】入倉、久慈 【HLA】イ・チョンミン
GK:【REH】成澤 【HLA】ダルトン
シュート数: 【REH】29 【HLA】26

ホーム苫小牧で荻野順二新監督が堂々のアジアリーグ初勝利

昨シーズンのチャンピオン、韓国・HLアニャンをホーム苫小牧で迎え撃つ形となったシーズン開幕戦。
レッドイーグルス北海道は試合序盤から豊富な運動量と鋭い動きでアニャン攻撃陣を抑える。レッドイーグルスは第1ピリオド中盤に入倉大雅(いりくらたいが)の先制ゴールでゲームの主導権を握ると、その後アニャンの反撃を1点にとどめ、最後は久慈修平(くじしゅうへい)の決勝弾で鮮やかに勝ちきった。

久慈らしいキレ。3人の「ゴールへ向かう」思いが詰まった決勝点

この日のクライマックスは第3ピリオド終盤、レッドイーグルス北海道が1-1の同点に追いつかれた直後に訪れた。

第3ピリオド15分過ぎ、パックを持った久慈がアタッキングゾーンへ攻め込む。

「僕がパックを持って(本部席側の)ブルーラインからエントリーしたんですが、その時に相手選手が来ているのが分かっていたのでパックだけは奪われないように相木になんとか繋ごうという意識でパスを出しました」(久慈)

相木隼斗(あいきはやと)が相手に絡まれつつも頑張ってゴール正面でキープしたパックを三田村康平(みたむらこうへい)がフォローして拾う。「三田村はシュートを打とうとしたが阻まれて、でもそこで頑張って粘ってキープしてくれ、その後ゴールへ向かう僕の目の前へパックが出てきてくれたので」(久慈)

相木が倒されながらもパックを三田村へ

相木と三田村が守ったパックは久慈へと繋がる。そして久慈はマット・ダルトンの守るゴール左サイドにスキマを見つけた瞬間を見逃さなかった。

「3人がゴールに向かうという姿勢が、スコアするぞという強い気持ちがあったので僕のところにパックが来たのかなと思います」(久慈)

久慈は手首の力を上手く使いハイスピードなシュートをゴールへたたき込む。彼らしいキレのあるシュートで2-1とレッドイーグルスは勝ち越しに成功。
ゴールが決まった瞬間、リンクはレッドイーグルスの勝利を信じて待ち続けたファンの大きな歓声に包まれた。

開幕戦でのゴールに本人も喜びを隠せなかった

この久慈の決勝点は通算400ポイントとなるメモリアルゴールでもあった。
※ポイント=ゴール数+アシスト数の合計

「14年めのシーズン開幕でしたが、何年プレーしていてもゴールの瞬間はいつでも嬉しいですし、興奮しますし……」と率直に喜びを語ってくれた久慈。「開幕戦、初戦というのはいつも難しいですが、結果、決勝点を奪うことができました。これを次の試合にも続けていきたいと思います」(久慈)

レッドイーグルスはその後アニャンの反撃を着実に抑えきってタイムアップ。ホーム開幕という最高の舞台で選手たちは荻野順二(おぎのじゅんじ)新監督に初勝利をプレゼントした。

プレーオフのような意気込みで開幕に臨んだレッドイーグルス

この試合、試合序盤からの流れをおさらいする。
今季お互いの仕上がり具合を確かめるかのように相手の動きを慎重に見極めているような感のある両チームだったが、徐々にレッドイーグルスがペースをつかむ。そんな流れのなか中島彰吾(なかじましょうご)がベンチ側のボード際を縦に走り込む高橋聖二(たかはしせいじ)へパックを送ろうとしたプレーで高橋の突進を止めようとしたアニャンDFがたまらずペナルティ。

この試合両チーム合わせて最初のペナルティとなったが、レッドイーグルスはその最初のパワープレーチャンスで電光石火のコンビネーションを見せる。

コーナーでの争いから高橋がゴール正面で待ちかまえる中島へパス、中島はシュートを打つか、というタイミングでゴール前へ速いスピードでパックを流す。するとそこへ走り込んだ入倉がドンピシャでスティックブレードにパックを合わせてゴール。流れるようなパスワークから生まれた鮮やかなゴールにスタンドは一気に沸き立った。

入倉(手前)がゴール前で合わせてレッドイーグルスが先制

これで1-0としたレッドイーグルスはその後のアニャンの反撃をGK成澤優太(なりさわゆうた)を中心にしっかりと守り切りリードを保ったままピリオドを終える。

成澤は第2ピリオドの20分間も盤石といっていいほど安定したプレーを披露。アニャンのカウンターからのピンチも落ち着いたプレーで最後の砦となった。
この成澤のプレーには現役時名GKだった荻野新監督も絶賛。
「成澤のプレーがしっかり流れをチームにもたらしてくれたと思います。リバウンドをまったく出さないですし、しっかりパックを止めてゲームを切ってくれたり。そのあたりはさすがでしたね。リバウンドが出ると2発3発と連続のシュートに繋がってしまうので。キーパー目線から言っても、本当にしっかりとゲームを作ってくれたと思います」(荻野監督)

さらにこの試合でレッドイーグルスの成熟したチームプレーが見られたのが第2ピリオド13:48秒からのおよそ2分のプレー。
先にパワープレーを得たレッドイーグルスだったが、その最初のフェイスオフでのプレーで相手を引っかけたとしてパワープレーは4秒で終わり4人対4人のシチュエーションに。このプレーをきっかけにアニャンに流れを手渡してもおかしくなかったが、レッドイーグルスの選手たちはここで非常に抑制の効いたプレーを見せる。
あえてアタッキングゾーンからパックをディフェンスに戻して攻撃を組み立て直すなどして常にパックをキープ。パックを奪いに飛び込んで来たアニャンの選手を速いパス回しで翻弄するなど完全に選手同士の息の合ったところを見せてくれた。

一瞬のチャンスを見逃さないアニャンに同点にされるも

第3ピリオドに入っても主導権はレッドイーグルス。
このまま成澤の完封もあるのではと期待が膨らむ内容だったがアニャンの攻撃陣も黙ってはいなかった。
13分過ぎ、本部席側ボード際での競り合いでアニャンの選手を倒してしまいレフェリーの手が上がったが、アニャンはそのまま攻撃を継続。ベンチサイドへの長い横パスを展開すると受けた選手が縦へ突進し成澤の守るゴール前へ。この千載一遇のチャンスに最後はイ・チョンミンがディフェンスに当たって浮いたパックを見事にスティックで合わせ13:42にアニャンが同点に追いつく。わずかなチャンスを逃さないゴールへの嗅覚はやはりチャンピオンチーム、鋭い攻撃だった。

HLアニャンは77イ・チョンミンのゴールで追いつく

ただレッドイーグルスは同点に追いつかれてもその動きに全く焦りの色は見えず各選手が対応。
「チームとして終盤まで1-0で戦えました。長い時間を0で抑えられたことは非常に良かったと思いますし、同点にされても誰も下を向くことなくベンチから声もよく出ていました。決勝点はたまたま僕でしたが誰が決めてもおかしくない流れを作ることができました。それぞれが自覚を持って戦い切れた開幕戦だったと思います」(久慈)

その選手たちの意識が冒頭で紹介した久慈のメモリアルゴールを生みだした。
第3ピリオドに久慈のゴールで2-1と勝ち越したレッドイーグルスは、その後アニャンの反撃もしっかりと抑えきってタイムアップ。1812人の熱いファン=ワシスタントの前で前年チャンピオンから堂々と白星を奪い取った。

開幕勝利の瞬間、ベンチの荻野新監督もこのガッツポーズ

試合後の会見で荻野新監督はまず
「選手とコーチに、それからサポートスタッフの皆さんに本当にお礼を言いたいです。本当にやってくれたのは選手です、はい。あとはそこに携わっている小川(勝也)コーチですとか、トレーナー、エクイップメントスタッフにも感謝したい」と初勝利へ繋がったチームの献身に感謝を述べたあと
「守りの面ではしっかりみんな身体を張って守り、ロースコアに繋げられました。攻めに関しても積極的にシュートから入ってその後ゴール前での混戦を作ってスコアできた。成澤もすごく頑張ってくれてましたし、なによりも各選手がシュートブロックなど身体を張ったプレーでゴールを守ってくれていたと思います」とこの日の試合内容を高く評価した。

「記者のかたも例年よりベンチの雰囲気が違っていると感じていただけたと思うのですが、本当に選手たちから声がよく出ていましたし、チームが一つになっていたと思います。状況に対応しながら今どういうプレーをしたらいいか、といったプレーに関するやりとりがどんどん選手間で出ていた。そういったところが今日の試合の中では成長に繋がったのかなと思っています。明日はどういった試合をするかというのがキーになってくると思うので、今日の勝ちを自信にして、明日また良い戦いに繋げたいと思います」(荻野新監督)

この日のレッドイーグルスの戦いぶりはまさに強者のものだった。
ホームでHLアニャンに連勝ともなればプレーオフ進出の上位2枠へ向けて視界は一気に広がる。チャンピオンチーム・HLアニャンの巻き返しを9/17の試合で押し返せるか? 注目だ。

<HLアニャン> 
ペク・ジソン監督 試合後コメント

―現状で良いゲームは展開できたと思います。パワープレーではモメンタムを持ってみなゴールに向かってくれましたし、良い守りも見せてくれた。強い相手に対して戦ってくれました。願わくば明日はもっとパスをしっかり繋げて多くシュートを打ち得点に繋げたいですね。

チームの熟成にはやはりもう少し時間が必要だと見ています、まだシーズンははじまったばかりですから。シュートのタイミングもプレーを読む能力も、今はまだまだというところです。とはいえ明日の試合ではもっと良い形の攻撃をみなさんにお見せしたいと思います。

Update: