2026ミラノ・コルティナ五輪まであと半年。「スマイルジャパン」が過ごす”強化の夏”

五輪まであと半年。苫小牧での合宿では連日質の高いトレーニングが続く(※7月合宿 以下同)

取材・文/アイスプレスジャパン編集部 写真/アイスプレスジャパン編集部

悲願の五輪メダル獲得へ……”成長の夏”に

 日本アイスホッケー界として初となる冬季オリンピックでのベスト4進出。さらには悲願でもあるメダル獲得に向けて女子日本代表「スマイルジャパン」がオリンピックシーズンの活動を開始し精力的に合宿を行っている。
 飯塚祐司監督は7月合宿中に行われたメディアデーでの会見で「オリンピックでは初出場したソチ五輪から回を重ねるごとに少しずつ成績は上がっているが、ミラノ五輪での目標は準々決勝に勝ち切ってベスト8を突破すること。そのためにはグループBを1位で確実に通過できるチームにしたい」とこの夏、チーム強化の目標を掲げた。
「スマイルジャパン」のミラノ五輪初戦は2026年2月6日(木)12:10(日本時間20:10)にフェイスオフされる対フランス戦。そのフランス戦まであと半年と迫った。日本はフランス戦のあと、グループBでドイツ、イタリア、スウェーデンの順に対戦するスケジュール。グループBから準々決勝に進出できるのはグループ3位以上だが、準々決勝で勝ちベスト4をつかむためにはグループB1位となってA3位と対戦することがほぼ必要条件。選手たちはさらなるチーム力アップを成し遂げてB1位で準々決勝に進むことを目標に精力的な練習を重ねている。
 2025年7月2~11日までの「女子ユースキャンプ」で始動した「スマイルジャパン」のメンバーは、現在8月4~13日の日程でこの夏2回目となる「女子ユースキャンプ」を苫小牧で行っている真っ最中。各地から選手が結集しトレーニングを重ねる姿からは、ミラノ五輪に向けての選手たちの強い思いが伝わってくる。キャンプの見学は公開されているため、ぜひ近隣の方はリンクを訪れて彼女たちに声援を送ってほしいと思う。

合宿では紅白戦や男子高校生との試合も多く組まれており、戦術の浸透も着々と進む

 7月合宿では2月の五輪最終予選で見事に出場権を勝ち取ったメンバーや4月に行われたチェコでの世界選手権に参加した選手はもちろんのこと、今後の飛躍が期待される若手や海外組も加わった27名+サポートメンバーという布陣となった。7、8月の「女子ユースキャンプ」招集メンバーを見ると、より多くの選手のプレーを確認し成長度や今後の可能性を見極めたいという思惑も感じられる。合宿では体力強化のメニューを精力的にこなす内容に加え、紅白戦や男子高校生との練習試合でコンビネーションや実戦感覚を磨きあげている。8月キャンプには世界選手権でのケガ(骨折)から復帰した志賀紅音選手も参加している。※小池詩織キャプテンや細山田茜選手などベテラン勢はサポートメンバーとして参加
(7月合宿のメンバーリスト⇒https://www.jihf.or.jp/news/detail.php?id=2274
(8月合宿のメンバーリスト⇒https://www.jihf.or.jp/news/detail.php?id=2294

ベンチから選手の動きを見守る飯塚監督(左から3人目)。五輪に向けてさらなるチーム力UPに着手している

「今回合宿に呼んだ選手はみな五輪に出場できる力があるしその可能性があるメンバーなので、合宿を通じて私たちスタッフが選考に困るくらい成長してほしいと思っている」(飯塚監督)
 強化の方向性については「今年4月にチェコで行われた世界選手権ではチームとして少し前進することができた。ただ得点力という部分ではその前年のアメリカでの大会と比べて現状維持だったと感じている。ミラノ五輪で対戦するドイツやフランス、そしてスウェーデンという相手に対して確実に勝つためにはやはり得点力の強化が必要で、特に『フィニッシュの精度を追求していこう』と選手とも意識を統一して取り組んでいる。得点を取るための練習には時間を割いているし、選手個々の意識も高く取り組んでくれている。日本の強みは守りの堅さとハードワークなので、得点力強化とともにその部分も大切に底上げし弱点を補っていきたい」と監督は語ってくれた。

守りの要、GK増原選手も随所で安定したプレーを見せていた

 今後も「女子ユースキャンプ」は毎月行われる予定となっており、選手たちは月に一度の合宿で集結しオリンピックに向けて強化を進めていくことになる。
 また、8月下旬にはユースキャンプの後、ヨーロッパ遠征を行って現地で強化試合に参加、五輪本番で対戦する予定のフランスやドイツなどとの実戦を重ねていく計画だ。スマイルジャパンにとっては、世界選手権といったIIHF主催大会以外でなかなか海外のチーム、特にヨーロッパ勢との実戦を重ねる機会が少なかった。しかしヨーロッパ遠征にてアウエーの試合を経験できることは今後に向けて大いにプラスになるだろう。これには飯塚監督も「この時期に遠征できるのは久しぶりでもあり、ドイツやハンガリーなどとテストマッチを通じて国際経験を積めるのは大きい。また世界選手権の本番では、勝つために1stライン、2ndラインのシフトを多くせざるを得ない試合展開になることも多かった。テストマッチでは3rdラインや4thラインの選手にもアイスタイムを増やし、海外の強豪相手に何ができるのかなどを見ていきたい」と海外遠征のメリットを話している。また、詳細は未定とのことだが今年11、12月にも海外遠征を計画しているとの情報もあり、ミラノ五輪に向けて「スマイルジャパン」の強化は着実に進むことは間違いない。

男子高校生との練習試合でゴールを決め喜ぶスマイルジャパンのメンバー。2月にもこの笑顔を見たい

 前回の北京冬季五輪では「スマイルジャパン」が勝利することで、オリンピック開幕直後から大きな盛り上がりとなり、選手たちのプレーと笑顔が日本中に元気と勇気を届けた。そして連日ニュースやワイドショーなどで「スマイルジャパン」が多く取り上げられることで、女子アイスホッケーに注目が集まり応援の輪が広がる結果となった。2026年のミラノ五輪では得点力を強化した「スマイルジャパン」が日本を歓喜の声で沸かせてくれることをおおいに期待したい。
 

≪2026ミラノ・コルティナダンペッツォ冬季五輪 女子アイスホッケー日程≫
2026年2月5日(木)~19日(木)
【会場】イタリア・ミラノ Milano Santagiulia Ice Hockey Arena、Milano Rho Ice Hockey Arena
【参加国】グループA:カナダ(2)、アメリカ(1)、フィンランド(3)、チェコ(4)、スイス(5)
     グループB:スウェーデン(7)、ドイツ(9)、フランス(15)、イタリア(18)、日本(8)
     ※( )内順位は2025シーズンの世界ランキング

【日本代表「スマイルジャパン」試合日程】
2月 6日(金)12:10 vsフランス(日本時間  20:10)
2月 7日(土)12:10 vsドイツ(日本時間  20:10)
2月 9日(月)12:10 vsイタリア(日本時間  20:10)
2月10日(火)12:10 vsスウェーデン(日本時間  20:10)
2月13日(金)、14日(土) 準々決勝
2月16日(月) 準決勝
2月19日(木) 決勝・3位決定戦
※現地時間=日本時間マイナス8時間

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