「フィニッシュの差が勝敗を分けた」0-4でチェコに苦杯
取材・文/アイスプレスジャパン編集部
現地8/23(月)IIHF女子世界選手権 グループB 第2戦 対チェコ戦 試合後コメント
大会2試合目となった対チェコ戦は、厳しい結果となった。
第1ピリオド、ゴール前での競り合いでパックが高く跳ねて入るというややアンラッキーもあった形で先制点を奪われた日本は、その後もチェコの攻勢を前に抵抗するも、相手の高いシュート力とフィニッシュでの力強さに苦しめられた。最終的には0-4のスコアで今大会初黒星を喫した形となったが、特に欧州勢の女子アイスホッケーのレベルアップを実感させられる試合となった。
この試合後も大会本部によるリモートでのプレスカンファレンスが行われ、この日は飯塚祐司監督の会見からスタートした。
会見ではまず最初に、IIHFのジャーナリスト、L.Aycroyd氏によるインタビューが行われた。
※以下、質問と回答は弊編集部による抄訳/編集をもとにダイジェストでお届けする。
「課題はフィニッシュ。試合の入りは良く、ハンガリー戦でも継続したい」飯塚監督コメント
――(IIHF)この試合で学んだことはありますか?
飯塚監督:
第1ピリオドのスタートは我々のホッケーが出来ていたと思います。
その自分たちのペースがとれている時のチャンスに、点数が取り切れなかったところがやはり、課題だと思っています。
私たちは2年前にチェコと世界選手権で戦って1-3と、ほとんど今日の内容のように圧倒されたんですけれども、このチーム(チェコ)に勝つためにスピードと早いプレッシャーをかけることで対抗しようと。それは機能していたと思います。チェコとは、最後のフィニッシュの部分で差があったとは感じています。
※一部ネット回線の影響で聞き取りづらく、文脈から判断して書き起こしています。
――(IIHF)次のハンガリー戦に向けてどう準備していきますか?
スタート(ゲームの入り)に関しては今日のゲームと同様で良いと思います。
スペシャルプレーでまだ得点を決めていないので、そこのプレーの質を高めて、決めていけるようにしていきたい。
続いて日本の報道陣からの質問に移る
==(IPJ)この試合に向けてのゲームプランは?
ここ2試合、チェコの試合を見ていましたが、第1ピリオドに確実に2点を取っているなど良い立ち上がりをしてきているので、それに立ち向かうべく我々も第1ピリオドから飛ばしていこう、と。アグレッシブなプレッシャーから相手にホッケーをさせないというゲームプランで、試合前のミーティングから確認してスタートしました。
==(IPJ)IIHFのサイトでの情報ですが、ラインを組み替えられていました、その意図は?
私の書き間違えなだけであって、ラインチェンジをしていません。
==(IPJ)ということは、実際の試合では?
試合では昨日と同じラインで出ています。
==(IPJ)この試合の総括をお伺いしたいのですが
チェコの得点力という部分に屈したというのがこのゲームだったと思います。
あと、スコアリングチャンスの数についてはそれほど差が無かったと思いますし、トータル的なシュート数も我々の方が上回っていながらも1点も取れなくて4失点している、と。
そういうところは得点能力の高さがチェコの方が上だった、と学ぶと同時に、次の試合の課題としなければならないと思います。
==(IPJ)明日のハンガリー戦に向けての意気込み、どのような形で勝利を奪いに行くか教えてください
アイスホッケーは最終的に点を取らないと勝てないスポーツですのでまずスコアリング(を改善したい)。
今日の試合は申し分ないスタートは切れていたので、今日と同じように試合をスタートし、我々のペースに持ち込みつつより多い時間帯を主導権を握りながらホッケーを進め、最終的にはスコアリングして勝利したいと思っています。
日本の報道陣からの質問が続く
――2試合で1ゴールという状況ですが、最後の得点を奪いにいく部分での手応えは?
デンマーク戦とほぼ変わらないくらいか多少それよりはチャンスが少なかったとは思いますけれども、スコアリングチャンスの数自体はチェコと日本の差はなかったと思います。やはり、フィニッシュでの差というのがスコアに表れてしまったかな、と。
やはりフィニッシュの精度ですね。相手のGKも優秀なキーパーですので、なかなかシュート1発では決めさせてもらえませんのでその後のリバウンドであったり、相手に対してのスクリーンであったりそういうところの精度を上げていかないとなかなかゴールを取るところまで行けない。そういうところを次の試合では活かして決め切りたいと思っています。
――4失点していますが、ディフェンス面での評価は?
最後の競り合い、「競り際」というのでしょうかね。パックが流れて出てきたところを最後に抑え切れていない部分であったり、ちょっとしたポジションのズレから一瞬のスキを突かれたり、という部分がありましたので、そういった部分を次のゲームでは修正していかなければならないなと思います。
――ミスが出てしまったと言うことなんですかね?
言い訳になってしまいますが、ミスというよりもゲーム勘というのがまだ戻っていないのかなと言うところですね。最後のパックの「競り際」というところですかね、そこで一瞬空けてしまうというところがまだあるかな、と。全体的には前回チェコと当たったときよりは差は詰まっているとも思うのですが、最後の最後の部分というのがまだ相手が1枚上手かなと思います。ゴール付近での我々の守りの力を上げていかなければと感じました。
――得点面に関してもゲーム勘の無さというのは感じましたか?
得点に関してはそれほど、形が悪いとか崩しが悪いとかというのはありません。最終的にはフィニッシュの差だと思っています。
床亜矢可選手と米山選手がこの試合で感じたこととは?
続いて、床亜矢可選手と米山知奈選手が会見に臨んだ。
――(IIHF)第1ピリオドと第2ピリオドの差をどう感じていますか?
床(亜):
第1ピリオドはチェコがアグレッシブに来ると感じていたので、「ハードにプレーして日本がそのアグレッシブさを超えてプレーしていこう」という思いを共有してプレーできたと思います。よりアグレッシブに行こうという意思統一のもとフォアチェックとかがはまって自分たちのプレーができたと思います。いっぽう、第2ピリオドはさらにギアを上げてきたチェコに対して引いてしまった時間帯があって、パックを支配されている状態が長く続いてしまったと思います。
――(IIHF)得点について。相手GKのプレーはどう感じましたか?
米山:
やはり1本のシュートでは入らないという事が多くて、リバウンドなどにもしっかり対応されていたのでそれを自分たちがもっと上回っていかないといけないと思いました。
――(IIHF)次の試合ハンガリーに対してはどう戦っていきたいですか?
床(亜) :
ハンガリーはフォアチェックであったり、かなりアグレッシブに戦ってくるというのがテストマッチの印象だったので、それをさらに超える日本の強み、スケーティングスピードであったり粘り強さという部分をいかして必ず勝ちたいです。
続いて日本の報道陣からの質問に移る
――練習試合すらままならない状況から世界選手権でこうして試合ができていることで、感じていることがありましたらお伺いしたい
米山:
2年間国際試合ができなかったなかでこうやって試合ができていることは本当に有り難いですし嬉しいことで、実際にリンクでプレーしていても喜びを感じています。
その分やっぱり結果を残すという部分で、国際試合が2年できなかったからといってそれは言い訳にはならないので、しっかり結果も求めてやっていきたいと思っています。
床(亜) :
本当に今、(米山)知奈さんが言ってくださったとおりで、なかなか厳しい状況の中でも日本代表として世界選手権に出場させていただいているということは、感謝の気持ちでいっぱいですし、アイスホッケー大国に来たんだなということは強く感じる大会で、やはりテレビでは当たり前のようにアイスホッケーが放映されていたり、たくさんの優しいスタッフの方に囲まれて大会ができている幸せというのを感じています。
その中で今回予選グループの試合は全勝で進んでいきたい、と思っていたところで今回は負けてしまったのですが、自分たちが目指すベスト4という目標に向けてチャンスはあるので一つひとつ丁寧に戦って行きたいと思っています。
――相手であるチェコは大陸続きの国との国際試合ができるといった環境でした。そのあたり戦ってみてどう感じましたか?
米山:
私自身の印象になりますが、2年前に対戦したときよりは今日の方が自分たちのプレーができる時間が長かった印象があります。
床(亜) :
私も同じく2年前に戦った時よりは自分たちのプレーはできて、シュート数も日本の方が上回っていたので、そういうところでは戦うことができたと思います。
ただ、スウェーデンリーグであったり、海外のリーグで活躍している選手達のスコアリングスキルというのはとても高いと思いましたし、ゴールに入れなければならない場面できっちり得点してくるというところは改めて強い相手だとは思いました。
――得点力が課題というのは見えてきましたが、次の試合に向けて必要な部分は?
米山:
一発で入るシュートはなかなか無いと思うので、スクリーンであったりリバウンドであったりもっともっと執着心をもって戦っていかなければならないと思います。
床(亜) :
(国際規格である)日本のリンクは今回プレーしているリンクよりは大きくて、その分ディフェンスとフォワードでクロスして攻めたりといったいろいろなアイデアを持って取り組んでいたのですけれども、それがなかなか狭いリンクでできないなか、それでもやっぱりアメリカとかトップの選手はこういう狭いリンクの中でもスペースを探して得点という部分につなげていると思います。そういうところはしっかり見習って行きたいと思いますし、このリンクに来てもう1週間ほど経ったので、そういうところでの質というのをより高めてスコアに繋げていきたいと思います。
※編集部注:日本ではIIHFの国際規格に合わせたリンク(60m × 30m)だが、今大会はカナダやアメリカでは一般的であるNHLサイズ(約61m×約26m。正確には200フィート×85フィート)のリンクが会場となっている。
==(IPJ)今日の勝敗のポイントについて、どこにあったかと考えていますか?
米山:
やはりスコアにも表れていると思うんですけれども、確実にチャンスで決めるというところが、やはりチェコの方が勝っていたと思います。
床(亜) :
私も同じく、決定力の差と思います。
次の相手はハンガリー。勝てば準々決勝に大きく近づく1戦
この試合では、国外でのリーグに留学して実戦経験を積んだ選手が多く在籍し、ヨーロッパ勢の中でも成長著しいチェコに屈する形とはなったが、監督、選手とももちろん上位進出を諦めてはいない。
次の試合は世界ランク12位のハンガリーが相手。これに勝利することができれば、準々決勝進出ラインであるグループB3位以上が見えてくる。2試合で1点という得点力の改善は急がれるが、守りのディシプリン(規律)は整えられており、ハンガリーに対して大量失点をするような展開となることは考えにくい。
監督の目論見通り、早い時間帯で主導権を握ることができれば白星に大きく近づくだけに、スマイルジャパンのメンバーはチェコ戦の敗戦を引きずることなく、まだまだ上を見すえて戦い続けてほしい。
大会3日目終了時点での順位表は↓