「トップディビジョン⇒ディビジョン1A降格が2チーム」は今後もデフォルト。
順位決定戦の変更は「予選リーグの試合」をより尊重するため

2024年大会はカナダの劇的な優勝で幕。それとは別に、IPJがレギュレーションについて確認の質問をIIHFに行っていた

取材・文・写真/アイスプレスジャパン編集部

現地4/14に閉幕した女子アイスホッケー世界選手権トップディビジョン。
決勝戦は予想通りカナダ対アメリカのライバル対決となったが、試合内容は予想をはるかに上回る大激戦。5-5で突入した延長戦でカナダが劇的な決勝ゴールを決めて、アメリカから優勝カップを奪還。まさに女子アイスホッケー最高峰の魅力が詰まった素晴らしい大会となった。

日本は最終的に予選グループB組3位で準々決勝に臨み、アメリカに敗れたところで大会終了となったが、初戦の中国戦まさかのGWS負けから立ち直り、残留を勝ち取った。スマイルジャパンの選手たちの健闘を称えたい。

さて、大会途中でXでの下記ポスト↓でご紹介した内容についてより詳しくお伝えする。
大会途中でレギュレーション(大会規定)が変わっている可能性があるのでないかという点をアイスプレスジャパン編集部(IPJ)は指摘したが、そのさい大会期間中に文書にてIIHF担当者に問い合わせた質問に対しての回答を頂いていたのでここにご紹介したい。

回答いただいたのは、IIHFスポーツディレクターのキム・ペデルセン(Kim Pedersen)氏。まずはその回答を下記にお伝えする。

レギュレーション変更についての質問と回答

Q1、降格チームが2カ国ということに決まったのはいつの時点か? 初日の段階では1試合予定されている順位決定戦は9-10位とアナウンスされそれに負けた1チームが降格とされていたが、途中から5-6位決定戦&2チーム降格に変更された経緯は?

A1、降格チームについて>
トップディビジョンが10チームに変更されたとき、降格チームも2チームに変更されました。
2チームが降格した最初の大会は、2019年にフィンランドのエスポーで開催され、フランスとスウェーデンが降格しました。ロシアが(安全上の懸念から)大会から除外された後、2022年にはスウェーデンがトップディビジョンに入り、ディビジョンIAからは1チームだけが昇格する形でした。
昨年2023年のカナダ・ブロンプトン大会から、私たちは降格は2チームとし、今回のアメリカ・ユーティカ大会でもそうすることになりました。
降格2チームという決定は、世界選手権トップディビジョンの下位チームとディビジョン1Aの上位チームとの戦力が非常に拮抗しているためであり、ロシアがプレーするかどうかは関係ありません。
またIIHF公式ウェブサイトに関しては何も変わっていません。選手権期間中の降格情報がこのページになかったため、ウェブサイトに追加しただけです。

Q2、順位決定戦が2023年のカナダ・ブロンプトン大会の時のように準々決勝敗者4チームによるミニトーナメントではなく、準々決勝敗者のうち予選グループの成績上位による5-6位決定戦のみとなったのはどういう理由か? 大会のファシリティ(運営環境)からしてミニトーナメントを行うことは十分可能なように思えるが?

A2、私たちは最終ランキングが予選ラウンドの成績から決定される他のIIHF選手権(男子のトップディビジョンなど)と、ランキングの手順を一致させました。今大会の構成(AグループとBグループ)では、5位/6位で順位決定戦を行うことが重要であり、予選ラウンドの試合はできるだけ多くカウントされるべきだというのが私たちの立場です。

上記の回答に関してIPJの見解と解説

Q1について、いつ2チーム降格になったかを聞いたところペデルセン氏の文書での回答は上記「大会前からだ」という回答だった。

いっぽうで実際に現地では大会初日にIPJ編集長が現地のNOC(アメリカ連盟)の担当者と手書きで図まで書いて「今回の順位決定戦は9-10位で、負けた方が降格ですよね。5位決定戦はないですよね」「そうだね」と確認しており、我々メディアの感覚では大会途中に変わったとしか思えなかった。実際にNOCの担当者もコチラから話題に出すまでレギュレーション変更は知らなかった模様だ。

なので、『またIIHF公式ウェブサイトに関しては何も変わっていません。選手権期間中の降格情報がこのページになかったため、ウェブサイトに追加しただけです』というのは事実とは違うように思うのだが?? まあこれが国際大会というものなのだろう。特に結果的に降格に絡んだ3カ国(日本、デンマーク、中国)からは抗議の声は(表向きには)あがっておらず、このレギュレーションを各国が受け入れたものと理解するしかない。

ただ、過去にも2022年に行われたデンマーク大会で「5位となった日本だが翌年の予選グループはBスタート」というアナウンスが一度なされた後に撤回されAグループスタートとされた例もあったと記憶している。

なので、「今後もこういったレギュレーションの変更は起こりえる」と考えて情報収集のアンテナを広げている必要があり、突発的な事態に対応できるように体制を整えるべきだと感じた1件でもあった。もし理不尽な決定であると感じたときは日本側からも説明を求めたり、時には抗議をする必要に駆られるときも今後あるかもしれない。

Q2については、現時点で「IIHFは予選リーグの試合にできるだけ重みを持たせたい」と考えていることが分かる回答だった。

「せっかくサブリンクが隣にあるし、それがしっかりした観客席付きの良い施設なのだから5-8位決定ミニトーナメントをやってもいいのでは? その方が盛り上がるし試合数も増えるし入場料も取れるし各国は拮抗した試合をまたできるし……」と日本的な感覚では思うものの、そこで予選リーグの結果がひっくり返ることを良しとしない、という現段階でのIIHFの考え方をまずは理解したい。ということは、やはり次回大会以降も大会初戦から非常に重みのあるゲームが続くと言うことだ。(まあ、またあっさりミニトーナメントに変わるかも知れないけれども。そこはIIHFも試行錯誤しているのだろう)

来年2025年はチェコ南部、オーストリア国境に近いチェスケーブジェヨビツェという街で女子アイスホッケー世界選手権トップディビジョンが開催されると発表された。会期は4月9~20日(予定)だ。

来年は、チェコを舞台に、スマイルジャパンのメンバーが躍動してくれることを期待したい。

大会中の記者会見で発表された2025年チェコ大会のロゴとアニメキャラクター。テイストはやはり日本とは違いますね

最後に

最後に、現地でIIHFの広報・メディア対応を担当していただいたEstelle Pecaut-Kruegelさんのお力添えで、この回答を得ることができた。「エステラさん」と敬意を込めて現地で我々は呼ばせていただいたが、取材対応を丁寧にしていただいた彼女にも改めて深く感謝を申し上げたい。

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