女子日本代表=スマイルジャパン。大久保智仁監督のもと新体制で始動!

右から大久保智仁新監督、久保英恵新コーチ、鈴木貴人強化本部長。この新体制でスマイルジャパンは世界での“復権”をめざす

取材・文/沢田聡子 写真/沢田聡子

ボディチェック容認へ動く世界の女子アイスホッケー。早急なアジャストが急務

 2030年フランス・アルプスオリンピックに向かうスマイルジャパンが、新体制の下で始動する。

 日本アイスホッケー連盟は6月19日、都内にて女子日本代表新体制記者発表会を開催した。連盟は4月、2026年ミラノ・コルティナオリンピック(2月)までチームを率いた飯塚祐司監督の退任を発表。さらに5月12日には、後任の監督に大久保智仁氏、コーチに久保英恵氏と榛澤淳氏が就任することを明らかにしていた。それを受ける形で開催された今回の会見には、鈴木貴人強化本部長、大久保新監督、久保新コーチ(榛澤新コーチは欠席)、連盟のアンバサダーを務める石原伸晃氏が出席した。

 会見に臨んだ大久保智仁監督は、現役時代の精悍な風貌に穏やかさが加わり、指導者として過ごしてきた月日を感じさせた。女子代表の監督就任にあたっては「大変光栄」としながらも、「責任の重さは強く感じております」とも述べた。

今秋の女子アジア選手権、そして女子世界選手権トップディビジョンがまずは目標となる

「我々スタッフも選手も、今まで女子日本代表が築いてきた伝統や文化はこれからもしっかりと引き継ぎながら、もっともっと海外のチームに対抗できるようなものを目指して。同じ目標に向かって成長しながら、2030年のフランス・アルプスオリンピックに出場するという目標に向けて、全力で頑張っていきたいなと思っております。女子は今、4大会連続でオリンピック出場を成し遂げております。私自身今年から監督に就任したということで、2030年のオリンピックに出場させることが最大のミッションだと思っております」

 さらに、オリンピックでの決勝トーナメント進出という目標も掲げた大久保監督は「それを目指す上で何をしなければいけないか。しっかりとスタッフ陣の連携を取りながら、チーム作りをやっていきたい」と決意を語った。

 大久保監督は1976年9月22日生まれの49歳。日本リーグ・西武鉄道にてDFとして選手デビューを果たすと、その後コクド、日光アイスバックスでプレー。アジアリーグアイスホッケーでは韓国・カンウォンランド/ハイワンで2シーズン助っ人外国人としてプレーした経験もある。その後、再びSEIBUプリンスラビッツ、日光アイスバックス、そして東北フリーブレイズで主力DFとしてプレーし2013年に引退。選手として最後の所属チームとなった東北フリーブレイズで指導者としてのキャリアをスタートした。
 東北フリーブレイズでコーチ・監督を務めた以外にも、男子日本代表コーチ(2017-19年)、男子U18日本代表コーチ(23-25年)・監督(25-26年)も経験。また23-26年には女子クラブチームの強豪・SEIBUプリンセスラビッツを監督として率いており、昨季はSEIBUプリンセスラビッツを全日本選手権優勝に導いている。

 鈴木貴人強化本部長は大久保監督を選任した理由として、男女両方のカテゴリーで指導経験があることを挙げた。
「女子アイスホッケーもフィジカルなものが認められつつある中で、男子アイスホッケーの要素も知っている監督、またこれだけキャリアのある監督はなかなかいないと考え、大久保さんに監督になっていただくこととなりました」

 大久保氏と共に、選手としてはスマイルジャパンのレジェンドでありSEIBUプリンセスラビッツ・女子U18日本代表でコーチを務めた経験もある久保氏、育成年代や男子U18日本代表のコーチを経験した榛澤氏が、女子日本代表を率いる。

 鈴木強化本部長は、女子アイスホッケーについて「前回の世界選手権、そこから(ミラノ)オリンピックと、本当に短い期間ですごく変化があったと感じています」と語った。最大の変化は、フィジカルプレーが認められる場面が多くなっていることだという。
「日本代表女子がここから成長していくためには、元々あるスキルや俊敏性をフィジカルなホッケーの中でどう活かしていくかというところで、この3人の力が必要だと考えました」

 ミラノ・コルティナ冬季オリンピックで1次リーグB組に入った女子日本代表は、1勝3敗という成績で決勝トーナメント進出を逃した。0-4で敗れてミラノ五輪での最終戦となった対スウェーデン戦後、飯塚前監督は大会を通して見えた課題を問われ「フィジカルでしょうね」と即答している。
「コンタクトプレーの強さというのは、ここ2、3年ですね。女子アイスホッケーのルールは変更にはなってないんですけれども、ペナルティの基準が全然変わってきていると思うんです。特に4年前とは、もう全く違うスポーツになりつつある。そこに我々がまだ対応しきれてないということはわかってはいたんですけれども、半年や1年で(対応)できるものではないので。4年後にまたこの場に戻ってきてこれ以上のものを出すには、ここは一番重点的なところなのかなと思います」(飯塚前監督)

 この会見でミラノ五輪女子日本代表の課題を問われた大久保新監督も、通常より狭いリンクで大柄な選手に相対したことによる困難を挙げている。
「まだ正式にルールが変わったわけではないですけれども、世界基準で少しずつ、コンタクトでなかなかペナルティが取られなくなってきた。やはりそういう中で、サイズではどうしても勝てない日本が勝っていくために、これからどうしていかなければいけないか。もちろん体を強くしていくことも大事になってくると思いますけど、これから国際試合の狭いリンクで大柄な選手たちと戦う上で、何が大事なのかをしっかりと見ていきたい」

 さらに大久保監督は会見後の囲み取材で、海外のリーグではコンタクトプレーの許容範囲拡大がルール化されており、そこで活動するレフェリーが五輪でも笛を吹いていると語った。
「現実を考えて、なかなか海外にも出ていけない中で、ポンと海外に行って急にレベルの高い大きい選手とやっても、もちろん対応できないというのは、それはもうわかっているので。それを少しでも解消するために、対策は打っていかなくてはいけないかなと思っています」

 大久保監督によれば、ミラノ五輪の前から行っていた男子高校生との練習試合は引き続き組んでいくということだが、やはり国際大会への出場を増やしたいところだ。今年10月に日本(開催都市は未定)で行われるアジア選手権(日本、カザフスタン、韓国、中国が出場予定)は、日本代表にとって貴重な機会となるだろう。
 また、今まで春に行われていた女子世界選手権は、今季は今年11月にデンマークで行われることが決まっている。4年後の五輪を見据えても世界選手権のトップディビジョンで戦い続けることは必須であり、新たな指導部は短期・長期の両面を考慮した強化方法を考える必要に迫られている。難題に立ち向かう新体制だが、フレッシュな指導陣が力を合わせ、日本アイスホッケーの希望であるスマイルジャパンの未来を切り開いてくれることを願ってやまない。 

日本アイスホッケー連盟アンバサダーの石原伸晃さんも加わってのフォトセッションも行われた

編集部より>女子日本代表新体制記者発表会のレポ-トを2月のミラノ・コルティナ冬季オリンピックも取材された沢田聡子記者にお願いしました。女子アイスホッケーは数年前から男子同様のボディチェック容認の方向に舵を切っており、そのアジャストを速やかにできるかどうか、がこれからの女子日本代表にとって世界のトップに留まり続けられるかどうかのポイントとなることは間違いありません。
また長年にわたって得点力、シュート力が課題と言われてきた女子日本代表にとって、”世界でもトップクラスのシュート力”を持つ、と現役時代に称された久保英恵コーチの就任はその課題を克服するきっかけになるかもしれません。現在、女子日本代表チームは苫小牧にて6月28日までの予定で強化合宿を行っています。徐々に新体制のカラーが浸透してくると思いますが、『スマイルジャパン(女子日本代表)がどんなアイスホッケーを世界に向けて打ち出していくのか?』を大きな期待を持って見守って行きたい、と思います。

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