「ベンチでポジティブな言葉が」
3連覇かかるクレインズ、斉藤毅監督が口にした「進化」
取材・文/今井豊蔵 写真/福村香奈絵、アイスプレスジャパン編集部
全日本選手権2回戦 ひがし北海道クレインズ4 (1-0、2-3、1-0) 3横浜グリッツ
勝者と敗者に明確なコントラストがついた。
試合終了と同時に横浜グリッツの選手は何人も氷に膝を着き、ひがし北海道クレインズはGKの脇本侑也を中心に笑顔の輪ができた。最後までどちらに勝利が転がり込むかわからなかったクロスゲームは、第3ピリオド14分16秒、クレインズのルーキーFW磯谷奏汰が決勝点を奪った。
今季から指揮をとる斉藤毅監督は「苦しい展開でも勝ち切れたのは良かったと思います」と大会3連覇がかかるチームが、まずは順調に結果を残したことを喜ぶ。「3失点している。チームとしていい守りができないと勝つのは難しい」と課題を感じながら、レッドイーグルス北海道が待つ準決勝へ駒を進めた。
クレインズとグリッツは9月の対戦では1勝1敗だった。ただクレインズは戦いながら大きな成長を遂げている。アジアリーグでは、開幕カードで大敗した首位のHLアニャンに敵地で2勝2敗と五分に渡り合えるまでになった。
ルーキーFW磯谷奏汰が決勝点…若いチームが走り出した
変化の証を斉藤監督は「ベンチ内でポジティブな言葉がハッキリ聞こえるようになった」と証言する。この試合、1点をリードして第2ピリオドに突入した。それが開始早々の19秒、グリッツFW杉本華唯のゴールで同点とされた。「開始早々で苦しいところ。それでも変な空気にはならなかった」と斉藤監督。大幅な若返りを果たしたチームは、時間と共に成熟している。
アジアリーグでもリーグ4位タイの14ゴールを挙げている磯谷は、成長株の筆頭。「得意の粘りでゴールにつなげられた」という決勝点は、GKからのリバウンドを2度叩いてのもの。現役時代は守って良し、攻めて良しの万能FWだった斉藤監督からもアドバイスを受けて力にしており「自分がダメな時に色々教えてくれた。自信をくれる監督です」と笑顔を見せた。
2得点のFW齊藤大地は「グリッツがめっちゃいいフォアチェックで来ていて、僕らはほとんどプレーさせてもらっていない」と相手からのプレッシャーを感じていた。そこを乗り越えての勝利には大きな意味がある。
「若いチームなんで、思った時に自分が動かないと後悔する」という斉藤監督は、第2ピリオドを3-3の同点で終えると、GKを先発の磯部裕次郎から脇本へ交代させる策をとった。大胆な策に乗せられた選手たちが、頂点へと突っ走る。