グリッツ古川駿が「ノッてる」理由…レッドイーグルス完封の裏側
「得意だなんて思わない」変えた行動、変わらぬ身上
アジアリーグアイスホッケー2026-27 10/24(土)KÒSE新横浜スケートセンター
横浜グリッツ 3(1-0、1-0、1-0)0 レッドイーグルス北海道
ゴール:【グリッツ】大澤、三浦(優)、齊藤 【レッドイーグルス】なし
GK:【グリッツ】古川 【レッドイーグルス】小野田
シュート数:【グリッツ】26(10、10、6) 【レッドイーグルス】40(9、13、18)

取材・文/今井豊蔵 写真/今井豊蔵、横浜グリッツ
10月24日、横浜グリッツは本拠地新横浜で行われたレッドイーグルス北海道戦で、3−0の完封勝利を収めた。このカードで完封勝ちするのは、アジアリーグ参戦7年目で初めてだ。立役者は、40セーブ無失点のGK古川駿。初のプレーオフ進出を目指すチームは勢いに乗れるか。
レッドイーグルス戦で初の完封、チームの歴史に刻んだ40セーブ
試合後のリンク、円になったグリッツ選手の真ん中でマイクを渡された古川は、一度思い切り溜めてから喜びを爆発させた。「っしゃあ〜」「グリッツに来てからホームでは初完封。みんなの前で完封できたことを嬉しく思います。今シーズンは絶対にプレーオフ行きたいと思います!」。周りの選手が驚くほどの熱を、ファンに向けて発した。
古川はレッドイーグルスに強い印象がある。グリッツがチーム史上初めて、レッドイーグルスに勝利した2023年12月3日の新横浜でも、GKは古川だった。さらに「僕がプロで初勝利したのも、全日本選手権の王子戦だったんです」。東北フリーブレイズでプレーしていた2018年、ダイドードリンコアイスアリーナ(東伏見)で王子イーグルス(当時)に4−3で勝利している。

「得意だなんて思わないですよ。でもずっとGKをしてきて、強いチームを相手にプレーすることに慣れているのはあるかもしれません。無双するようなチームでプレーしたことはほとんどなかったので……」
青森県出身の古川は、強いチームにいかに勝つかを考えるホッケー人生が長かった。中学でも、八戸工大一高でも「北海道のチームを倒すことだけを目指してましたから」と笑う。雨あられのように撃たれるシュート。劣勢の中で我慢し、いかに勝利につなげるかを追求してきたのだ。勝てば下剋上と言われるような戦いで、勝利を奪い取るのが身上だ。
2022-23シーズンからグリッツに移籍して、5シーズン目になる。ただ気迫とは裏腹に、セーブ率は一つの基準となる9割を一度も超えていない。打たれるシュートが他チームより多いのはあるが「移籍してきてから、いい成績を残せていなくて…」。何かを変えなければと思った古川は、一つ行動に出ていた。

「性格的に合っているのかも」ガラリと変えた試合前の行動
「去年の後半からですね。がっつり入り込みすぎないようにしたんです」
元々、徹底的に準備をして試合を迎えていた。試合の「何分前にこれをするとか、ガチガチにルーティンを固めるタイプ」だったが、それを一旦やめたのだという。
ロッカールームでチームメートと話しながらリラックスして、試合を迎えるようにした。以前はほとんど口をきかないくらいだったのを変えた。しっかり体を温め、動ける体勢を作るのは変わらない。「たまたまかもしれませんが、こうしてからいい感覚があるんです。性格的に合っているのかもしれません」。この日の出番を告げられたのは、前日の練習後。自然体で試合を迎える流れに変えた。

今季、スターズ神戸との開幕カードでは出番がなかった。初戦は冨田開、2戦目は磯部裕次郎が先発し連勝した。開幕3番手からのスタートも、結果で居場所を作る。18日のアイスバックス戦では、56セーブ2失点でGWS戦に持ち込んだ。試合には1−2で敗れたものの、仲間やファンの心を動かすセービングだった。
「競争は激しいので。今は試合に出られているかもしれませんが、いつまた代えられるかわからない。出場試合を増やすのはもちろん大切だと思っています」。
移籍1年目の2023−24シーズンこそチームのGKで最多の18試合に出場したが、その後は3歳下の冨田がファーストゴーリーに収まっている。状態のいいGKを使っていくというチーム方針の中で、出番を増やせるのは数字とそれに伴う信頼だ。
岩本裕司監督は「去年までの古川は、当たってるなと思う時でも急に動きがバタバタしてしまうところがあった。リバウンドの処理とか。それが今年は動きが落ち着いている。しっかりパックを見られているんじゃないですかね」と古川の変化を高く評価している。念願のプレーオフ進出をつかみ取るには、GKが一つの「チーム」になることも欠かせない。古川が残した結果が、残る2人を奮い立たせる。