取材・文・写真/アイスプレスジャパン編集部
“最後まで諦めないホッケー”で、首位奪取を狙う
アジアリーグアイスホッケーのジャパンカップ。その前期日程も各チームが4から6試合を消化し中盤戦へ突入した。
現在、レッドイーグルス北海道が全勝で首位を走っているが、その特急列車を止めるべく、虎視眈々と勝利を狙っているのが東北フリーブレイズだ。
10/16(土)、10/17(日)とフリーブレイズはホームリンクのFLAT八戸で首位レッドイーグルスを迎え撃つ。
フリーブレイズは今季開幕戦で敵地苫小牧に乗り込みレッドイーグルスと対戦。
その時は、開幕戦がオーバータイムでゴールを許し3-4での惜敗。2戦目はさらに惜しい結果で延長からGWS(ゲームウイニングショット)戦にもつれ込んだ末、わずかの差で惜敗している。
その試合を取材した千葉記者によれば、「フリーブレイズはしっかりプレシーズンゲームをこなしているせいか、パックの奪い合いの強さ、連携の良さなど良い点が目立った。非常にまとまっているチームとの印象を受けた」とのことだ。
映像で確認すると、外国人選手の補強もなくメンバーは例年より少ない人数ながらも、全員が最後まで諦めない姿勢で戦う姿には非常に心を動かされた。
パワープレーでの得点力は今季も健在
翌週9/18、19にはフリーブレイズが新横浜に遠征して横浜グリッツとの2連戦。
グリッツは平野裕志朗もフル出場させこの2連戦に“初勝利”を、と照準を合わせて臨んでいたが、フリーブレイズはその挑戦者を一蹴する。
9/18の試合はグリッツの粘りにあい途中まで0-0が続く緊迫感ある展開が続いたが、第2ピリオドにベテランFW23樫野善一のゴール、そして第3ピリオドには期待のFW、92生江太樹の得点で突き放す。
「ゴール前のディフレクションは自分の仕事だと思っているし、普段の練習からの形が出せた。流れがどちらに行くか分からない展開で得点を奪えて良かった」と生江。
最後は6人攻撃に出たグリッツにエンプティネットゴールで引導を渡し3-1。フリーブレイズはシーズン初勝利を挙げるとともに、その矜恃を見せつけた。
大久保智仁監督は「グリッツは全員がハードワークしてくるチームで、補強により選手層も厚くなっていた。そのため昨季とはまったく違うチームだと想定していた。ただ、うちのチームは夏場のトレーニングからしっかりと積み上げてこれたので、相手いかんではなく自分たちのホッケーをやろう、と話し、その通りしっかり戦うことができた」と安堵の表情を見せながらも、チームの仕上がり具合には手応えを感じていた様子だった。
翌9/19の試合ではFW8佐藤翔のハットトリックを筆頭に7選手がゴールを奪う10-3の快勝。
「攻め込まれるシーンも多く、優勝を目指すにはもっともっとレベルアップしなければならないことを感じた2試合だった」とキャプテンのFW91人里茂樹は反省点を口にするも、「点数を数多く取れたのはチームにとってプラスだった。レッドイーグルスに対しては悔しい負け方をしたが、シーズン通してパワープレーで得点が取れている。そこも含め全ての面でレベルアップして優勝を奪い取りたい。僕自身はラインの仲間と良く話し合いが出来て良い状態を維持できている」(人里キャプテン)とチームの調子自体は上昇傾向にあることをうかがわせる。
大久保監督は現役時代、名DFとして名を馳せた。その数多いプレー経験を生かし、グリッツ2連戦ではFW73ロウラー和輝を急遽DFにコンバートしてしのぐなど、采配にも冴えがある。「もともと6人しかいないDFにケガ人も出て編成には苦労しているが、新横浜ではロウラー和輝がDFでシンプルにプレーしてくれて、そこをサポートする選手達も良い声を掛け、みんなで戦ってくれている。チームワークを含めて良い戦い方が出来ているのではないかと思います」(大久保監督)
先週10/9、10に敵地・釧路で行われた対ひがし北海道クレインズ2連戦でも、フリーブレイズはともに延長にもつれ込む激戦を展開しながら最後はきっちりと勝ちきった。誰も最後まで諦めない戦いぶりと結束は今季のフリーブレイズの大きなストロングポイント。
この勝利で、チームの士気が最高に盛り上がっているのは充分に想像できる。
従来のリーグ戦レギュレーションなら、延長負けは相手の勝ち点を削り自分たちも1ポイントを獲得できるため善戦の報いも少しは受けられる。しかし、ジャパンカップはコロナ禍で試合消化にばらつきが出ることも想定してか勝率で順位を決定するという方法だ。
そのため、たとえGWSで敗れようとも負けは負け。首位を奪うには、どんな勝ち方でもいいから白星を奪って相手の勝率を下げるほかないのだ。
コロナの関係で試合が中止となり、フリーブレイズの本拠地開幕戦はここまでずれ込んでしまったが、熱いファンが集まるFLAT八戸でレッドイーグルス相手に“大物食い”を見せることが出来るのか?
大久保監督の采配と、選手達の戦いぶりから目が離せない。