ゴールを喜ぶGRITSのメンバー。新横浜でもこんなシーンが多数見られるか?

取材・文・写真/アイスプレスジャパン編集部

アジアリーグアイスホッケーに昨季加入した横浜GRITS。
加入初年度の成績は16戦で16敗、勝ち点は延長突入での1にとどまった。しかし、今シーズンに向けては、マイク・ケネデイコーチが残留し、チームも夏の間しっかりとした練習を重ねるなどして着術に強化。今季開幕カードの対ひがし北海道クレインズ戦では初戦こそ大敗に終わったものの、第二戦では一時1点差においあげるなど決して侮れないチーム力となっていることを披露した。
今週末9/18、19にはホームのKOSE新横浜スケートセンターで待望の開幕カード。東北フリーブレイズを相手にどのような戦いを見せるのか? クレインズとの開幕第2戦を終えた選手の言葉から、その可能性を探ってみた。

「もう胸を借りるつもりはない」横浜GRITS、2021年、初勝利へ

昨季の全日本選手権優勝チームに初戦2-9、2戦目3-6。
横浜GRITSの21-22シーズンは、連敗で始まった。

しかし、第2戦となった9/12の試合は、今季へ向けての進化を見せた試合でもあった。

試合後の浅沼芳征監督の表情は敗れた悔しさの中にも、なにか戦える手ごたえをつかんだ、といった思いも垣間見せた。

「開幕戦を終えて、1年前を思い出しました。点差的には1年前とそんなに変わらない試合(王子相手に1-8)になってしまいましたが、チームとしては成長しているだろうな、と。安直に判断してはいけないんですが成長はしている、と。一方で、『試合を終わってこのままのスタートだと去年と変わらないぞ』、ともチームで話しました。選手達も反省するポイントは分かっていましたし、我々の指摘に対してもすぐ対応してくれたのが今日の試合に繋がったのかなと、思っています」(浅沼監督)

今季はベンチで大声を出せないが、ベンチの選手達も共に戦っていた。左端が浅沼監督

たしかに、2戦目のグリッツは前戦の反省を踏まえ、攻めるという姿勢で、試合序盤からチーム全体に浸透していた感がある。

第1ピリオド3:46に、しっかり攻めの形を作りパスを回す。そしてゴール正面ブルーライン付近からの9FW平野裕志朗のシュートがゴール右サイドに突き刺さり、クレインズファンをも驚かす先制点。ゴール前にはしっかりスクリーン役の選手が相手GKの壁となっていたことが示すとおり、練習の成果をしっかり見せられたファインゴールだった。

決めた平野は、「昨日ああいう試合で負けて、その後びっちりミーティングして……。常にハードワークでプレーし、ああいったシュートをどんどん打っていったことが結果に繋がった」と振り返る。その一方で、浅沼監督とマイク・ケネディヘッドコーチは戦術的な対応策にもこの日着手していた。平野が言葉を続ける。

「マイク(・ケネディ)コーチに『今日はアメリカでのプレーをしてくれ』と言われて。ならば、『自分をウィングの位置にしてくれ』と頼みました」(平野)。

率先して戦う姿勢を背中で伝える9平野。その思いはチームに浸透している

アメリカのプレーとは、どういうことか。
開幕戦では、平野自身がパックを持ってインサイドのゾーンに入り、ゴール前に切り込むことはできたが、そこでDFのキツいマークに遭い、手詰まりとなった。ならば、チームを勢いづけるためにもダンプして、リンクを広く使い、平野自身がラッシュしてパックを奪いに行く。相手DFのワンミスがあれば一気にチャンスが広がるため、DFにとってはプレッシャーになる。そんなプレーをしていこう、とコーチと平野の間で意思統一したということだ。

※ダンプインチェイス=相手ゴール裏の深い位置にパックを流し込み、そこへ自チームの選手が走り込んでパックを奪いそこから攻撃を展開する戦術。スピードがあるか体格の良いFWがいると効果的で、比較的に北米のチームが好んで採用する戦術。

「アメリカでもダンプインチェイスで相手のミスからチャンスを作るというプレースタイルを常にやっていたので、そこにシフトチェンジしたという形です。相手が自分に(守りを)合わせてきているのは分かっていたので、自分が色々なプレーをできるように、リンクの中で位置を意識的に変えるからそこに皆がスイッチして入ってくれるように、と。それがチャンスに繋がったシーンは多かったと思います」(平野)。

この日のグリッツは粘り強かった。守りも前日の形から修正、一気に崩れるようなことがなくなり、クレインズ相手にしっかり試合を作ることはできていた。

1-3と逆転されたが、グリッツはあきらめない。
第2ピリオド6:36にパワープレーで平野が左45度の角度からGK33ヤニス・オージンシュのグラブサイドを撃ち抜いて2-3と追い上げ、クレインズを一時ひやりとさせるシーンもあった。
また、第3ピリオドでもパワープレーのチャンスで、5:49に87FW茂木慎之介のパスから84FW松渕雄太が決めたシーンはグリッツ側が思い通りにパスを組み立ててフィニッシュに結びつけたゴール。グリッツが、平野頼みのチームではなく、戦う集団として選手たちが着実に成長していることを示したシーンのようにも感じられた。

松渕のゴールシーン、手前の14矢野⇒茂木と繋ぎ最後は松渕が決めた

今季からキャプテンに就任したDF54熊谷豪士は試合後、

「まだまだ修正点はありますし、気持ちの面でもそう、ミスを少なくしないとダメですよね」と反省の言葉から口にしたが、「もっともっと選手のプロ意識を高めて行けば、他のチームとも互角に戦える集団になると思います。相手のラッシュは僕たちのミスから生まれるので、もっとプレーをシンプルにし、個人技は控えて、パスをしたら仲間を信じてサポートに行くというホッケーをしないといけない。それができるようもっと精度を上げていきたいですし、まだまだ成長できると思っています」

熊谷豪士キャプテン

この日の試合では、4ライン目の21FW金子透悟、FW72梅野宏愛の動きがよく、その分主力の負担が減ったことを浅沼監督は評価していた。また、新加入の61FW鈴木ロイを平野のラインに組み攻撃力がアップしたこと、13FW 岩本和真が練習から高い意識付けをチームにもたらしてくれたとも。監督はいまだ60分の戦いでは手にできていない初勝利に向けてこう語る。

「ゴールを決めてチームに流れを呼び戻したとき、さらにチームを勢いづけるようなプレーがまだまだ足りない。チャンスを作った先のしつこい攻撃、厚みのある攻撃をするために、運動量を上げること。相手が諦めるときにチャンスはくると思うので、しつこいプレー、GRITという言葉に象徴される『やり抜くプレー』が試される。今後の試合では、相手を凌駕するプレーを60分間続けるんだ、というチームの雰囲気を作っていきたい。もうどのチームに対しても胸を借りるという言葉は使いたくない」(浅沼監督)。

平野も「スキルもメンタルも全ての分野で全選手が上がってきている。あとは気持ち。『相手が誰だろうとどのチームだろうと関係ないよ』というところがまだまだ足りないな、と思っているので。そこの部分だけですね。開幕連戦は大差で負けてしまったというのはとても悔しいですけれども、チームとしても個人のスキルとしても着実に上昇していると思います」とチームメイトたちの成長を肌で感じていることを話してくれた。

9/18、19にホーム新横浜で行われる2連戦、対東北フリーブレイズ戦でグリッツは今季初勝利を目指す。この試合で平野と16DF菅田路莞が海外挑戦のためラストゲームとなる一方で、DFに元日本代表の秋本デニスが加わるため、戦力的には非常に楽しみなメンバーでホーム開幕カードを迎える。

熊谷キャプテンは「昨季1シーズン勝ちなしで、それでも沢山のファンが応援してくれてグリッツの成長を見てくれていると思いますけれども、ファンの皆さんがあっと驚くようなプレーを見せられるように。その成長を見てくれているファンのみなさんといつの日か優勝を分かち合いたい、と思ってプレーしています。ホームでのフリーブレイズ戦、2勝したい……いや、します!

と最後は力強く、ファンへのメッセージを送ってくれた。

今シーズン、横浜GRITSは、アジアリーグジャパンカップの台風の目となれるか? その真価が問われる2連戦がまもなくはじまる。

開幕2戦目は一方的ではない試合を見せたGRITS。“初勝利”も近いことを予感させる
この日はGK小野航平が先発。ファインセーブでチームを鼓舞した
「より緊密なリンク上でのコミュニケーションも必要だ」と浅沼監督。さらなる進化を遂げたい

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