平野裕志朗選手がVTR出演。大澤ちほさんは女子アイスホッケーを展望

文・写真/アイスプレスジャパン編集部

『50周年記念座談会』もいよいよ終盤。ここからは現在AHLアボッツフォード・カナックスでプレーする平野裕志朗選手がVTRで出演。熱い思いのたけを語ってくれた。
そして女子日本代表で長くキャプテンを務めた大澤ちほさんがラストで登場。今後の女子アイスホッケーに期待することなども含めトークを繰り広げた。その模様をご紹介する。

大澤ちほさん(左)はキャプテンとして3度出場したオリンピックでの経験を話してくれた

(司会:加藤じろうさん)
さてこの後、海外でプレーをしている選手になりますけれども、さあ、ここで皆さんにですねこのVTRをご覧いただきたいと思います。


AHLアボッツフォード・カナックス平野裕志朗選手がVTR出演
「日本アイスホッケー界を変えるために、負けてはいられない」

「日本アイスホッケー連盟の皆さん、選手、そして会場にお越しの皆さん、こんにちは。カナダ、アボッツフォード・カナックスでプレーしている平野裕志朗です。
日本アイスホッケー連盟創立50周年おめでとうございます。今回こういった形で参加させていただくことに感謝申し上げます。座談会テーマの通り、日本アイスホッケー界の過去・現在・未来を見つめ直そうという、大切な時間になっていると思います。まずはじめに連盟あてにいただいた質問にお答えした後、最後に私の思いを皆さんにお伝えできたらいいなと思います。

まず1つ目の質問です。海外挑戦が長いですが、海外に挑戦し続けている理由は何ですか?
理由は2つあります。1つはやはり自分の夢でもある。NHLという世界最高峰の舞台に出場すること。私がNHLの舞台に立つことができれば、日本のアイスホッケー界は大きく変わると確信しています。
もう1つは情報や組織の仕組み、技術など、日本のアイスホッケーに活用できるものを持ち帰りたい。それがもう1つの理由です。まだまだ伝えたいことがありますが、今回はこの辺にしておきます。

質問2つ目です。得点力不足といわれる日本が世界で戦うために必要なことは?
得点力不足も確かに改善していかなきゃいけないと思います。ですが、やはり日本は最後まで守り切り、勝ち切るチームを作っていかないといけないと私は思っています。そのために、攻め守りもやっていける、そういった課題があがっている以上、あとはどう行動に移していくか、これが今の日本に必要なことだと私は思います。

質問3つ目です。今の子供たちにどんなホッケー環境が必要でしょうか?
これはやはり子供たちが氷の上に乗れる時間・回数を増やしてあげる、それが最前提にあると思います。そして私が教えに帰ったときに少し見かけることなんですが、日本各地の小学生チームなのにホッケー経験のない親御さんがコーチをしているというときがあります。これが悪いというわけではないんですが、一番成長するゴールデンエイジ世代には、日本のアイスホッケー界としてしっかりとした育成システムを作ってあげる必要があると私は思います。

最後に私の思いを皆さんにお伝えできたらいいなと思います。
先日、サッカーのワールドカップで日本代表が戦っていたとき日本国民がどれだけ盛り上がっていたのかを考えると、なぜ日本アイスホッケーにできないのか、そういった思いで毎日を過ごしています。
自分もあれだけたくさんの人に熱いものを届けたい。
必ず日本のアイスホッケーにもできる、そう信じて今も戦っています。
しかしまだまだ足りない、そういった現状が今の日本アイスホッケー界に立ちはだかっているのは事実です。
今この会場にいる1人1人が日本のアイスホッケー界を変えるために自分に何ができるのか。それを考え行動していく。連盟の方だけではなく、選手、そしてファンの方々が良い意味でいろんな人たちを巻き込み、何か行動していく。それが1人でも多くできたときに日本のアイスホッケー界は変わっていくんだと私は思っています。
今、私は17試合連続で試合に出場することができていません。心が折れそうになるほど苦しい状況で毎日を過ごし、それでも自分の夢、そして日本アイスホッケー界を変えるために、負けていられない、戦い続けなきゃいけない、そんな使命を勝手に背負い、僕は戦い続けています。
どんなにつらくても、苦しくても、負けそうになっても、明るい未来を信じ前に進み続けることが今の僕たちに必要なことだと私は思います。

だから皆さんも一緒に戦ってください。

日本アイスホッケー界をみんなで盛り上げていきましょう。改めて日本アイスホッケー連盟50周年おめでとうございます。残りの時間も楽しんでください。平野裕志朗でした」

大澤ちほさん
「女子アイスホッケーの素晴らしさと楽しさをこれからも伝えていきたい」


(司会)
ありがとうございました。続きましては、こちらにいらっしゃいます大澤ちほさんです。
大澤さんはソチオリンピックから3回のオリンピックで日本代表のキャプテンを務められ、北京五輪後に代表は引退されましたが、その後も後進の指導に忙しいと聞いております。アイスホッケーどころの苫小牧というアイスホッケー界の聖地で育った大澤さんですが、今まで、またこれからアイスホッケー界に感じていること、また、女子のホッケーという立場からひとこと言っておきたいことなどもあるかもしれません。そんな大澤ちほさんにお話を伺います。よろしくお願いいたします。
まずお聞きしたいんですけれども、アイスホッケーは…完全燃焼してますか?

(大澤ちほさん)
完全燃焼してます。完全燃焼で引退しました。

(司会)よろしいですか、はい。ということでちょっと残念な感じもありますけれどもお話を伺っていきたいと思います。まずオリンピックで活躍されたというのもありますけれども、それより苫小牧生まれ育ったということで、小さい頃からのお話なんかもちょっと軽く触れていただきたいと思いますけど、小さいときはアイスホッケーで何が一番楽しみだったんですか。

(大澤)苫小牧出身なんですけど、あのアイスホッケーがもう自然と触れられる環境だったので、常にアイスホッケーを見てましたし、常にスティックを握って学校から帰ってきたら陸上でホッケーをしてるっていう生活だったんですけど、もう全部が楽しかったですね。
スティックを持つことも楽しいし、リンクに行くことも楽しいし。今でもそうですけど、スケートを履くこと、リンクに向かうこと、全部が楽しいので、ずっとアイスホッケーの魅力にどっぷりハマりながら、子供のときから生きてきていますね。

(司会)という大澤さんでいらっしゃいますけれども。本当にソチオリンピック以来、3度の代表のキャプテンも務められました。本当にキャプテンというのはCマークをつけてということですけども、実際あれだけの試合でCマークをつけてプレーしていた、しかもナショナルチーム、プレッシャーはあったんじゃないでしょうか?

(大澤)プレッシャーはほとんどなかったです。良くも悪くもプレッシャーはほとんどなく、本当にみんなと協力しながら楽しくやっていたっていうところが強いです。まったくプレッシャーとか厳しさとかそういうのを感じずにやっていたところが強かったですかね。
元々私はキャプテンにあまり向いてないようなタイプで、自分のことしか考えないで自分のこと中心で発言したりとか行動したりするタイプだったので、最初キャプテンをやるとなったときはチームのことを考える脳に切り替えることが一番難しかったんですけど(笑)、そこの努力はちょっとするようにしましたね。

(司会)その中でチャンピオンとして試合に勝ってということで、いろんな経験をしたわけですけども。一番この試合、記憶に残ってるっていう試合はありますか?


(大澤)一番は選べないんですけど、やっぱりオリンピック予選はすごく私3回バンクーバーオリンピック予選とソチオリンピックの予選を経験しているんですけれども、どの試合にも代えられないくらいの緊張感があるので、最終予選になると特に。自分たちの活躍でオリンピックの切符をつかめるかつかめないかっていう瀬戸際で戦う瞬間っていうのは、オリンピックよりもやはり印象にずっと残ってますね。そこで勝ちも経験していますし、負けて切符をつかめなかったことも経験してるので、本当にすごく印象に残っています。

(司会)本当にスマイルジャパンがなかなか勝ちきれなかった時代も見えていたという経験もあると思いますけども。これからなんですけども、まだまだあの女子ホッケーの可能性というのは日本代表、まだまだあるんじゃないかと思いますけどどうですか?

(大澤)今の若手のスマイルジャパンは本当に未来が楽しみなメンバーの集まりで、私達世代はあんまり器用さとか、スキルの高さっていうのはなくて。本当にフィジカルだとか、身体能力で戦っているっていうところが強かったんですけど、今の若いメンバーは本当にスキルが高くって、レベルの高いホッケーをやっているので、今後いろんな経験を積んで世界で勝っていけるメンバーが集まっているのですごく楽しみです。

(司会)はい。そしてこうやってお話いただいてますけれども。このね、プレーヤーの経験もいろんな形で経験されたと思うんですけども。どうですか、このアイスホッケーの普及という部分でも、また大切な役割を請け負ったんじゃないかと思いますけども。

(大澤)今までの経験を、スケート教室だったりとか講演とか、いろんなところで自分の言葉で発信したりとか伝えるっていうことはやっていきたいなとすごく思っていますし、「アイスホッケーって本当に面白いスポーツだ」っていうのをここに会場にいる皆さんはわかってると思うんですけど、この魅力をどんどんいろんなところで発信していけたらなと思います。

(司会)それを聞いて今ふっと思ったんですけど。手を振っていたファンの方がいらっしゃいましたので、まだまだ人気のある大澤さんですけども。まだ現役ができるんじゃないですか?っていうふうに思っているファンの方、ちょっと手を挙げていただけますか。
「まだまだ大澤選手いけるぞ」という方は? (会場拍手)

(大澤)ありがとうございます。今もちょっとはプレーしてます。

(司会)今の拍手を聞くとかなりトップレベルで行ってもいいかなといえそうですね。
それでいいますと、お隣にいらっしゃる星野好男さんもまたカムバックすることはございませんか。

(星野好男さん)(笑)。女子ホッケーの選手とは何度か一緒に氷に乗りましたけども、年々うまくなっていますよね。本当にスピードもついて非常に上手くなっています。あとやっぱり残念なのは点をとるのがやっぱりできないっていうのは、日本の最大の課題じゃないかなと思いますね。

(司会)星野さんからエールもいただきましたのでまたいろいろな形で、日本のそしてアジアのアイスホッケーを活性化するようにご活躍を期待しております。これからも頑張ってください。

(大澤)ありがとうございます。

(司会)さて、皆さんと共に楽しい時間を過ごしてまいりました。今の星野さんのメッセージも含めて滅多に聞くことができないエピソードもいただきましたけども、皆さんいかがだったでしょうか。まだまだ話は尽きぬところなんですけれども、残念ながらお時間が迫ってまいったようです。
日本のアイスホッケーの過去・現在・未来につきまして、楽しく貴重なお話を聞かせていただきました。ご登壇いただきました皆様、どうもありがとうございました。どうぞ拍手をお願いいたします。

司会の加藤じろうさんの呼びかけで会場から大きな拍手がおこり、座談会は終了となった。


これからも日本のそしてアジアのアイスホッケーは、さらに活性化すると思います。ぜひこのあとのアジアのアイスホッケーを楽しんでいただきたいと思います。

まだまだこれからアイスホッケーの歴史が続く限り、新たなヒロイン、そしてヒーローが生まれてくると思います。ぜひ皆さんと新しい氷上のヒーローそしてヒロインがまた登場する日が来ることを期待して、このアイスリンクでお会いしたいと思います。

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