「1個下だという見られ方をしてしまう」
大熱戦も4強の壁、一発勝負に見えたグリッツの危機感

CRA 4-3 YGR。試合終了の瞬間(撮影:編集部)

取材・文/今井豊蔵 写真/福村香奈絵、アイスプレスジャパン編集部

全日本選手権2回戦
ひがし北海道クレインズ 4(1−0、2−3、1−0)3 横浜グリッツ

アイスホッケーの日本一を決める全日本選手権には、プロ、社会人、大学生と普段は対戦することのないカテゴリーの各チームが集まる。アジアリーグのチームはほとんどが2回戦からの登場で、初戦は違うカテゴリーのチームと戦う。ただこれまで4強入りしたことのない横浜グリッツだけは、1回戦からの参戦。2回戦で早くもアジアリーグのチームとの対戦が回ってくる。
この大会の優勝を目標に掲げたチームは、その2回戦で、大熱戦の末に1点差で敗れた。試合終了のブザーが鳴ると、何人かの選手はガックリ下を向き、動けなかった。重苦しいムードが漂った。

この場面をグリッツの浅沼芳征監督は「強い気持ちで臨んで、選手たちは出し切ったということではないかと思う。ただ勝負は勝つか負けるかに尽きるので……」と悔しさを噛み殺しながら振り返る。

クレインズと互角の戦いも…1点差負けに選手はガックリ

選手からはより真っ直ぐな言葉が並んだ。FW鈴木ロイは「去年と同じ結果だったのがシンプルに悔しいです。1年間努力してきて、ベスト4の壁を越えられなかった。他のアジアリーグ4チームからは、1個下だという見られ方をしてしまう。そうではないと証明したかった……」。チーム創設の準備段階から参画し、今季はゲームキャプテンを務めることも多かったDF川村一希も「こういう試合を勝てないのが、今のグリッツのレベル」と、言葉を絞り出した。

鈴木ロイ(撮影:福村香奈絵)

グリッツは社会人リーグで戦うダイナックスとの1回戦を11−4と大勝し、この試合に向かった。クレインズと、アジアリーグ開幕直後の9月に対戦したときは1勝1敗。そこからのお互いの進化は、氷に乗っている選手たちが一番感じていた。立ち上がりから、両チームが激しくパックを奪い合い、クレインズが1点を先制して第1ピリオドを終える。グリッツは第2ピリオドに反撃に出た。

10分19秒にルーキーFW杉本華唯が同点ゴール、5分26秒にFWラウターのゴールで勝ち越した。その後は点の取り合いとなり、クレインズがFW池田一騎とFW齊藤大地、グリッツはFW鈴木ロイの得点を加え、3−3の同点で第3ピリオドを迎えた。

「次頑張ろうというチームではいけない」一発勝負が呼び覚ました心の叫び

決勝点は第3ピリオド14分16秒、クレインズのFW磯谷奏汰がゴール前で2度シュートリバウンドを叩き、パックをゴールへとねじ込んだ。グリッツにとっては4失点のうち、3失点が1人少ない状況で、反則が大きく響いた。激しいぶつかり合いに我慢できなくなり、相手を止めるために反則を犯す。川村はこのゲームを勝ち切るために足りなかったものを「気持ちというかメンタルの勝負。いらない反則もそうですし、失点の仕方でスキを見せてしまった部分がある。いかにロースコアで戦えるチームにしていくかが課題」と口にする。さらに、言い聞かせるかのように続けた。

「いいゲームで良かった。次は頑張ろう、というチームではいけない。そこはチームとしても個人としても、もっと結果を求めていかないと。成長はできていると思うんですけど、グリッツはもう3年目です。4年目頑張る、5年目頑張るじゃなくてもう、結果を出さないと。いつまでもこのレベルにいてはいけないんです」

鈴木も「3年目ということは、(2009年にアジアリーグ参戦した)フリーブレイズはすでに優勝もしていました。ずっとドベにいるのはまずい。どこかで変えないといけないんです。『次また次』ではなく、勝つために何をできるか真剣に考えないと、プレーでもそうです。とにかく勝つための選択を」

この試合、シュート数はグリッツが36本、クレインズが28本。互角以上に戦った証明だ。浅沼監督は「シュートが決定打になっていない。練習でできないことを試合でできるわけがない。試合をどう意識して練習していくか」。アジアリーグの他チームと比べて少ない練習時間をどう「効果的に」使えばいいのか、常に考え続ける必要があると言う。

争うシュープ(奥左)と大津晃介(奥右)。外国人選手の加入でチーム力は上がるも、もう一段上を目指したい(撮影:福村香奈絵)

試合が続くリーグ戦では、切り替えも大切になる。ただ負ければ終わりの全日本ではそうはいかなかった。舞台が変わったことで、選手たちの言葉はより重く、強く響いた。白星をなかなかつかめない現状を良しとしている選手は一人もいない。グリッツ3年目のシーズンはすでに折り返し点を過ぎた。残り3カ月で、何を見せられるか。

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