スターズ神戸、20試合目でついに初勝利! 勝利GK・石田龍之進「僕がここで勝たなければ……と思っていました」

取材・文/アイスプレスジャパン編集部 写真提供/スターズ神戸
2026年1月10日(土) アジアリーグアイスホッケー2025‐26シーズン @尼崎スポーツの森
スターズ神戸 5(2-1、2-1、1-2)4 横浜グリッツ 観衆:658人
ゴール:【スターズ】シン・ドンヒョンx2、イ・ミンジェ、ワン・ジン、トーマス・オーデルマット【グリッツ】池田、種市x2、ラウター
GK:【スターズ】石田【グリッツ】古川→磯部
シュート数:【スターズ】22(7、8、7)【グリッツ】49(13、16、20)
今季からアジアリーグに新加入したスターズ神戸が参戦20試合目にして初勝利を挙げた。
試合開始わずか32秒でシン・ドンヒョンが先制ゴールを奪うと、1‐1の同点から15分26秒にはまたもシン・ドンヒョンが単騎で抜け出し追加点。横浜グリッツに池田、種市のゴールを許し一時は同点に追いつかれるも、第2ピリオドにイ・ミンジェ、ワン・ジンが立て続けに決めて一気にグリッツを突き放す。
スターズが4-2と2点をリードして迎えた勝負の第3ピリオド。貴重な追加点はトーマス・オーデルマットのシュートから生まれた。
ここでスターズは3点差とできたことが勝利をグッと近づけた。その後グリッツは猛攻に転じ、シュートの雨をスターズゴールに浴びせたが、先発GK・石田龍之進が最後の砦となって立ちはだかる。その後1点まで追い上げられる展開となったもののスターズ神戸は逃げ切り、ついにチームの歴史に残る初勝利をつかみ取った。
今季2025-26シーズンからのアジアリーグアイスホッケー新規参入となったスターズ神戸。今季19試合を消化してPSS負け1つ、60分負け18の勝点1。しかし内容的にも、スターズ神戸はいつ勝利してもおかしくないパフォーマンスを見せていた。そんななか、ついに訪れたホームリンクでのアジアリーグ初勝利。658人の観衆、なかでもスターズ神戸のサポーターは歴史的な勝利の目撃者となった。

「僕が土曜日に勝てなかったら……(石田)」並々ならぬ緊張感で臨んだホーム戦
この日、スターズ神戸の先発GKを務めたのは石田龍之進。13試合目の出場だった。
「今回に関しては練習で『土曜日に(先発GKで)出るよ』、と言われていました。そして試合に出るときにいつもより緊張して臨んだんです」
緊張して臨んだ……それはどういう理由か? 聞くと石田はさらに言葉を繋いだ。
「(緊張していたのは)もう自分で分かっていて……。僕が土曜日に勝てなかったら、日曜日には(もう1人のGK)ジャン・ガラムが勝つだろうな、というふうに思っていました。土曜日僕が勝てなかったときに、チームが修正して、日曜日に内容が良くなってグリッツに勝つ、そうなる予感があったんです。だからこそ『絶対に自分が先に勝ちたい』と思っていた。そういう意味では、ガラムと僕の一騎打ちでチームから“先攻”に指名されたような気持ちでした」
チーム内での激しい競争を勝ち抜くために、必ず結果を出さなければならない。それはこれまでのアイスホッケー人生で石田が何度も経験してきたことだ。
昨季は北米プロリーグに挑戦するも、チームがなかなか見つからず苦労した。それは我々外部の者が言葉で伝えるよりも何百倍も苦しい胸の内だったろう。これまで貯金した自己資金で渡米したもののチームからの契約はまさに週ごと。リリースされれば荷物をまとめツテを頼って別の街へ。貯金はどんどん目減りしていく……。そんな経験を何度もくりかえしてきたからこそ、このアジアリーグでも一歩も譲るつもりはなかった。
「本当に勝つならここしかないし、ここで負けたらスターズ初の勝利GKはガラムになる。そういう気持ちで氷上に向かいました」
「集中力が上がりすぎると時間がゆっくり感じる」自分との対話を重ねて見つけた境地
試合はいきなり動いた。フェイスオフからまず横浜グリッツが攻め込むが、スターズ神戸はそのシュートをブロックするとそこからカウンター気味に一気に攻め込む。そしてコンビネーションから最後はシンが押し込んで開始32秒でゴールを奪う。
「先に味方が点を取ってくれた。その直後のプレーで、相手がスロット(※)の真ん中からノーマークシュートを打ってきたときに、ちゃんと手がでて、パシッと一番いいところでグラブキャッチできたのでこれはもう、『今日の自分は大丈夫だ』っていう感覚がありました」
※スロット=ゴールから見て左右45度の範囲、約10m以内のエリア。シュートが決まる確率が高いといわれる。
ファーストシュートに対してしっかり反応できた瞬間、この日の石田はいわゆる“ゾーン”に入った。
「僕は集中力が上がりすぎると時間がゆっくり感じるんです。そうなったときは相手のシュートに対峙したときに『これもあるし……このプレーもある……、さらにはこの選択肢もあるな』って余計な選択肢がたくさん頭に浮かんでしまう。それでパックが手につかなくなったり、ミスに繋がったり……それを12月の東北フリーブレイズとの試合で経験したんです」 選択肢が多すぎる……。集中力が極限に達したときに自分がどうなるのか、それを石田は冷静に分析していた。
「けれども、そこからもう1回元のペースに戻せたときに、めちゃくちゃ調子が落ち着くんですよ。フリーブレイズ戦では1点目に今振り返ってももったいない失点をしたんですけれども、そこから調子を戻したときにすごくパフォーマンスが上がった実感があったので、今回もそうなるだろうと思いながらプレーを続けました」
その後、試合は点の奪い合いとなったがスターズ神戸は第2ピリオドを終えて4-2と2点リードで折り返す。アジアリーグ初勝利に向けて願ってもない展開となった。

「さすがに勝ちを確信するようなことはなかったですが、逆に『ここで勝たなければいけない』という感覚が強くなりました」と、グリッツがシュート20本と怒濤の猛攻を仕掛けてきた第3ピリオドも石田はゴールを死守する。先にスターズが点を奪って5-2としたがそこから1点を返され再び2点差。そして、グリッツは残り3分で6人攻撃を仕掛けてくる。スターズはペナルティで1人少なく6人対4人の状態。そのパワープレーでグリッツは試合残り24秒、種市が押し込み1点差と追い上げてきた。その次のプレーでも石田はグリッツの6人攻撃に対峙し続けた。
「『もうこれで負けたらシャレにならん』と思って、残り20秒ちょっとを絶対に守ろうという気持ちで戦いました。最後、ラウターが僕のブロッカーサイドから入り込んできてシュートを叩いてきた。これは絶対にリバウンドを危険なところに出してはいけないと考えてプレーして。残り数秒でパックをコーナーに弾いた瞬間に勝利を確信できました」

アメリカでの苦闘を経ながらも石田は昨夏オーストラリアに渡りAIHL(豪州アイスホッケーリーグ)に2年続けて参戦。メルボルン・アイスで活躍した石田はプレーオフも制しオーストラリアチャンピオンにもなった。同リーグでのGK防御率はトップの成績。自らのプレーで進むべき道を切り開いている。この挑戦者マインドはスターズ神戸の一員として初勝利を掴んだこれからも変わらないだろう。
「やっぱりたかが1勝、かもしれないですけれども特別な1勝だったと思いますし、そこに関してはやっぱりすごく安心した気持ちだったり嬉しい気持ちにはなりました」と語る石田に、その“特別な1勝”がグリッツと戦っての勝利だったことにどんな思いがあるのかも聞いた。関西大出身の石田は横浜グリッツで2022-23シーズンにアジアリーグデビューを果たしており、古巣からの大きな1勝だった。
「今違うチームの選手として自分がグリッツに対してできることって何なのか、と考えたときに、やはり『自分がちゃんと別のチームに行っても成長していることを見せる』という点に尽きるのかなと思います。今回こうやって勝てたことは、確かにグリッツにとっては勝ち点3を失っていることですが、お世話になった人たちとか先輩に対して『神戸で元気にやってるんだな』という風に、ちゃんと思ってもらえるようなそういうプレーができたかな、と思っています」
スターズ神戸にとって、大きな意味があるアジアリーグ初勝利。これをきっかけにこの後も勝点を積み上げていかなければいけないことを選手たち、そして石田自身も分かっている。
「次のグリッツとの対戦がすぐ新横浜(1/24&25)であります。今日は勝ちましたがプレイヤーも僕もまだまだ改善点は多かった試合だったので、もっともっと内容を突き詰めて、前回取りこぼした横浜での勝点3を今度こそ奪いたい。ある意味僕の第2のホームともいえる横浜でもう1回、ファンの皆さんに『僕は神戸で元気でやっています』というところを見せたい、と思っています」
困難にあっても心折れず、自身のブログでは時に持ち前のユーモアセンスでそれらを吹き飛ばして自らのエネルギーとしてきた石田。道が閉ざされようとも、次なる活躍の場はおのれの力で切り開き、ここまで来た。次なる勝利の日に向けて、石田龍之進はまた自分自身を磨き続ける。