「点を取る感覚は蘇ってきた」 グリッツFW鈴木ロイが「最底辺」からの復活ゴール…突きつけられた勝利への課題
取材・文・写真/今井豊蔵 コメント取材/アイスプレスジャパン編集部
10月13日 アジアリーグ 横浜グリッツ3(2-0、0-2、1-2)4 レッドイーグルス北海道
ゴール:【グリッツ】鈴木、池田、ラウター【レッドイーグルス】入倉、武部、中島、安藤
GK:【グリッツ】冨田【レッドイーグルス】小野田
シュート数:【グリッツ】38【レッドイーグルス】31
一時はレッドイーグルスから勝ち越し。互角に戦ったが……
今季8試合目でようやく初ゴールを決めたグリッツFW鈴木ロイは「やっと、これが1歩目のきっかけです。乗っていけるようにしたい」と笑った。第1ピリオド1分42秒、レッドイーグルスの反則で得たパワープレーの好機を生かした。ゴール正面からFW池田涼希が、シュートと見せかけてゴール左に構えた鈴木にパス。これを冷静に決めると、観客席に向かって体全体で喜びを表した。さらに第1ピリオド終了4秒前には、再びパワープレーの状況で池田もゴールを決め、リードを2点に広げた。
鈴木は今夏、チームへの合流が8月の最終週まで遅れた。「体は動かないし、最底辺の状態でした」と当時を振り返る。ようやく「100%ではないですが、上がってきたと言えるところまではきた」という状態だ。グリッツでは各選手の課題を可視化するため、シーズンの目標をシートに書き込み、ロッカーで見えるようにしている。鈴木のそれは、10ゴール15アシスト。「ようやく1ゴールですが、点を取る感覚は蘇ってきた」。2試合で計6本のシュートを放ち、上昇の気配だ。
ただ、この展開で勝ち切れないのがグリッツの現状だ。第2ピリオドにレッドイーグルスの反撃を許し、FW入倉大雅、DF武部太輝のゴールで同点とされた。第3ピリオド2分44秒にはFW久慈修平がゴール前まで持ち込んで倒れ込みながらシュート。こぼれたパックをFWアレックス・ラウターが押し込んで再び勝ち越したものの、その後レッドイーグルスのFW中島彰吾、FW安藤優作に立て続けのゴールを決められ万事休す。8試合を終えて勝ち点6は東北フリーブレイズと同じながら、直接対戦時の得点差で最下位に沈んでいる。
鈴木は「相手の方がゲーム巧者というか、うちはゴールできる時間帯にできていない」と悔しがり「もっとスマートに、時間帯を考えてプレーしないといけない」と課題を挙げる。岩本裕司ヘッドコーチも現在のチームのレベルを「苦しい場面で、どんなプレーをすれば良いか適切な選択をできる選手がまだまだ少ない。60分集中してやれるホッケーIQが足りていない」と見ている。
“勝ち切る”ために詰めたい、僅かな差
好勝負をできるようになっても勝ちきれないとは、近年のグリッツが指摘され続けている部分だ。今季は夏から陸上トレーニングを強化し、試合の最後まで戦い切れる体力を身につけようとしてきた。鈴木は「(連戦の)日曜日の3ピリまでしっかり走れるようにしようとやってきて、できつつあるとは思います。昨年と比べて負けの質が変わっている。対等に試合できている」とは言うが、勝ち切るという最後の一歩はなかなか遠い。
岩本ヘッドコーチは「これまでと警戒のされ方が変わっている。その中で勝つことがなかなか難しい」とこぼす。ホッケーIQの引き上げは短時間では難しい。ベンチに戻ってきた選手にプレーの注意点を伝える際、あえて大きな声で、他の選手にも分かるように口にしているという。
今季、レッドイーグルスから移籍したFW久慈修平はこの試合、両チームの誰よりも多い6本のシュートを放った。とにかく前に進もうとする姿勢が、第3ピリオドの勝ち越しを生んだ。ここから先に進めるかは、続く若手が出てくるかがカギだ。「もう1人2人、引っ張れる選手が出てこないと。まだまだ甘えていますよ。ドライブする姿を僕が見せているようじゃ。必要なものは示しているつもりです」。そこで鈴木も“後継者”として期待される一人だ。
リーグは各チームとひと回り対戦を終え、HLアニャンが勝ち点26と頭一つ抜け出した。そしてレッドイーグルスの18、アイスバックスの10と続く。鈴木は「現状の順位が意味がないくらい、日本のチームの力は接戦だと思う。ついていくにはまず連敗しないこと」。混戦に持ち込み浮上していくためには、若手FWの覚醒が必要不可欠だ。
<岩本和真キャプテン 試合後コメント>
「内容的には本当に悪くなかった。結局最終的には負けているので悔しいですが、そこはレッドイーグルさんとのやはり経験の差が出たかなと思います。グリッツは点の取り方が淡白じゃなくなったというか、5人でしっかりと攻めて全員で点数を取りに行けている部分など力が付いてきている感はある。普段の練習から競争を激しくして、チームをさらに良い方向で変えていけたらと思います」