苦境のアニャンハルラ、米国遠征で活路を切り開けるか?
文/今井豊蔵 写真/アイスプレスジャパン編集部
アジアリーグアイスホッケーに韓国から唯一参加するアニャンハルラは、10月4日から18日まで米国でキャンプと練習試合を行うと発表した。
期間中にジョージア州ダルースで行われる「ショーケース2021」に参加するなど、ECHL(NHLからみて3部相当)のチームと3試合を戦う。
ハルラの公式ウェブサイトは「2年目の(リーグ)開店休業という危機を、ハルラは『先進アイスホッケーに直接触れる』という新たな方向転換という、果敢な決断を下した」と表現。7日からジョージア州のダルースアイスフォーラムで氷上トレーニングののち、13日にはECHLのアトランタ・グラディエイターズ、15日にはECHLグリーンビル・スワンプラビッツ、16日には再びアトランタと試合を行い19日に帰国する。
選手のECHL移籍も積極的に容認へ
この壮大な遠征の実現には、今季からチームの指揮を取るペク・ジソン監督のネットワークが存分に生かされている模様だ。ペク監督はかつてNHLピッツバーグ・ペンギンズなどでDFとしてプレー、スタンレーカップも獲得している。引退後もレッドウィングス傘下AHLでアシスタントコーチを務めるなど、指導経験も豊富。
韓国代表監督として自力での世界選手権トップディビジョン昇格に導き、平昌五輪でも指揮を執った。
さらにヤン・スンジュン団長は「アジアリーグの中止など、難しい状況からペク・ジソン監督のネットワークを生かし、チームと選手にいい刺激となるようなイベントにしたい。北米に韓国アイスホッケーの存在を知らしめ、選手たちの海外進出へ橋渡しすることが目標だ。競争力を認められた選手が希望する場合には、現地チームとの契約へ最大限配慮する計画もある」とコメントし、「ショーケース2021」に出場したハルラ選手が北米チームからオファーを受けた場合は移籍を積極的に認めるつもりでいる。
欧州との橋渡しは、マルティネツ前監督が尽力
また、ハルラは昨季まで指揮を取ったパトリック・マルティネツ氏をチームアンバサダーに任命。欧州チームともネットワークを構築しようとしている。
マルティネツ氏は現在、チェコ1部のチェスケー・ブディヨビッツエでアシスタントコーチ。同氏がスパルタ・プラハのスポーツマネジャー(GMに相当)だった時期には、プラハでのキャンプやスパルタとの練習試合を実現させてもいる。
ハルラはアジアの枠を越えて、チーム強化を狙う
今季のアジアリーグは、国境をまたいだ移動が難しいことから国際リーグの中止がすでに決定し、日本国内の5チームがジャパンカップを消化することが決まっている。
韓国では現在、アイスホッケー協会のトップが不在という混乱が続いており、大学やプロレベルの競技日程編成も行えていない状態。代表チームの競技力を維持するのも難しい“四面楚歌”という状況から、アジアの外へ目を向けたハルラの試みがどのような結果を生むのか、注目に値する。
<編集部より>
アニャンハルラの米国遠征についての情報が入り、韓国事情にも詳しい今井さんに寄稿していただきました。
コロナ禍のためにハルラは2年続けてアジアリーグで戦うことがかなわず、国内チームも減少していることから試合の数とレベルの確保に苦しんでいましたが、思い切った施策を打ってきました。
韓国代表チームにも多くの選手を送り込んでいることもあり、選手が国際試合で活躍出来るレベルを維持するためにも、拮抗した相手との試合を多くすることは必要と判断したのでしょう。
資金面ではかなりの投資となると思われますが、この取り組みが良い方向性を生み出すことを期待します。