グリッツはペナルティーでDFが退場を余儀なくされ、ゴール前はアイスバックスが自在に攻める狩り場と化した

2日で18失点…徐々に重ねた自信を砕かれた横浜グリッツ 初勝利へのカギはどこに?

取材・文/今井豊蔵 写真/アイスプレスジャパン編集部

アジアリーグ参戦2年目の横浜グリッツにとっては、“初勝利への道のりまだ遠し”という2日間となった。
対戦した栃木日光アイスバックスとは昨季、延長までもつれ込んだ末に敗れた試合があった。さらに今年8月29日のプレシーズンマッチでは、3-2で白星を挙げてもいた。徐々に感じていた手ごたえを、粉々に砕かれるほどの衝撃があった。

勝利を期して臨んだアイスバックス戦は、ワーストタイ12失点

9日の試合は4-12の大敗。12失点は、昨季開幕直後の王子イーグルス戦で喫して以来のチームワーストタイだ。第1ピリオド1分23秒、DF熊谷豪士のゴールで先制したもののすぐに失点。さらにDFの秋本デニスがマッチペナルティを宣告され、試合から消えた。たった4人となったDFの体力的な負担は増し、連携も崩れた。1人少ない5分間で立て続けに3失点し、勝負の大勢は決してしまった。浅沼芳征監督は「DFとFWの声の掛け合いが足りなかった」と、結果よりも過程を悔いた。ゴール前で相手FWが2人、DFが1人という形を易々と作られ、失点を重ねた。

 

試合中にはヘッドコーチのマイク・ケネディが退場を食らうという珍しい場面もあった。新型コロナウイルスへの感染拡大を防ぐため、今季はベンチからの大声や、マスクを着けない行為がペナルティとされるルールを設けて行われている。ケネディコーチの激しい感情表現は、これに抵触すると判断された。流れの悪さを象徴する出来事だった。

退場の判定に抗議する横浜グリッツ、ケネディヘッドコーチ

 

グリッツには、対戦したアイスバックスに縁がある選手が多い。栃木県出身のFW松渕雄太は「バックスには憧れもありました。負けたくないチームの1つでしたけど、12失点しているのが現実」と悔しさをあらわにした。

FW池田涼希、FW茂木慎之介と組む1つ目のFWは、これからのグリッツ攻撃陣を引っ張らなければならないラインだ。「裕志朗さんはいつか必ずいなくなる。これまでは頼っていたところもありましたが『若い僕たちが引っ張っていかないといけない』とラインでは話しています」(松渕)。米国でのプレーへ向け、ビザ発給を待つFW平野裕志朗の後釜を狙っていく気概は十分だ。

松渕は気迫あるプレーを見せていた。あとは結果だ

翌日曜日の対戦では改善の兆し、「いかに戦い抜けるか」 

10日の試合も1-6で敗れた。ただ浅沼監督は「シュートチャンスがいろいろあったのと、GKの努力で抑えられた部分もあった。次に勝てるというチャンスは見せられたかと思います」と、前日とは打って変わってチームの成長を指摘した。第3ピリオドの最後まで走り切り、アイスバックスのゴールを攻め立てる時間帯もあった。

 

第2ピリオド5分23秒に、アイスバックスから移籍したFW岩本和真がグリッツの初ゴール。一度はノーゴールと判定されたものを、今季からリーグに導入された「チャレンジ」を申し出てひっくり返した。

岩本和真 のゴールシーン。上手くリバウンドを叩いたように見えたが……
ノーゴールの判定に頭を抱える

 

当初、レフェリーの判定はインクリーズによるノーゴール。ただ岩本にはゴールクリーズ(ゴール前の半円形の部分、ここに入ってのプレーでは得点が認められない)には入っていないとの確信があった。チャレンジは失敗すると、2分間のペナルティが課される。
映像判定を待つ間のドキドキを岩本は「何とかゴールになってくれと。チームを盛り上げたかったので」と振り返った。浅沼監督は「パワープレーだったので、もしペナルティを食らっても4人対4人。それならと覚悟を決めての申し出でした」。少しでも勝利に近づくなら、リスクも取っていく。前へ前へという姿勢が報われてのゴールだった。

待たされた後、ようやくのゴール判定に、この試合GRITSベンチが最も湧いた

それでも、納得はできない。岩本は「個人的にはバックスに勝ちたいというよりも、グリッツのファンにいいプレーを見せたかった。それでもやっぱりバックスのほうが上回っていたことには、悔しい気持ちでいっぱいですね。2日で18失点しているのは事実なので」と唇を噛む。 

グリッツがこれまで一番初勝利に近づいた試合は、昨年11月29日のアイスバックス戦だ。3-3で延長に突入し、直後の失点で3-4と涙を飲んだ。岩本はこの試合にアイスバックスのFWとして出場していた。いざ飛び込んで感じてきたグリッツの“現在地”を、こう口にする。

「選手の経験値も違うので、チームとして足りないものはあります。でもホッケーへの熱意、愛情は負けませんし、自分も初心に帰ってやれている。ホッケーをもっと覚えたときに、皆さんを驚かせるようなチームになれるのではと感じています。」

「アイスバックスが強くなっているからこそ、良いホッケーを見せて古巣に勝ちたい」その思いを胸に岩本は戦い続ける

 

他チームと比べた時に、戦力差は否めない。特にDFの枚数不足は切実だ。その差を埋めるにはいかに「徹する」ことができるかがカギだ。決めごとを最後まで守れるのか、走りきれるのか、やり切れるのかにかかってくる。試合から吸収するものが、どこよりも多いチームがグリッツ。成長の速度が増すほど、初勝利の喜びも近づいてくる。

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