日本のゲームMVPは中島照人。世界選手権初戦から才能の輝きを見せた

快勝も選手に笑顔無し。昇格して、笑おう

2023IIHF男子世界選手権ディビジョンIB 
会場:トンディラバアイスホール(エストニア・タリン)
リーグ戦(現地4/23 12:30FaceOff. )

日本 8(2-0、2-0、4-1)1 オランダ
ショットオンゴール:日本47 オランダ16

取材・文・写真/アイスプレスジャパン編集部

快勝した初戦。しかし選手に笑顔はなかった

2023世界選手権ディビジョンIBの開幕戦、対オランダ戦。
日本代表は序盤からスピードあふれるスケーティングと積極的なシュートへの姿勢でオランダを圧倒し8-1で勝利。2019年に全く同じこの会場で敗れた相手にリベンジを果たした。

しかし、試合終了後の日本代表メンバーに笑顔は全くなかった。試合の残り12秒で失点し完封勝利を逃した、ということもあるだろう。しかし選手たちはこう思っているのではないだろうか?
「あくまで大会の初戦に勝った、ただそれだけ」、と。
早くも2戦目には中国との対戦が組まれている。昇格組ではあるが中国はかなり強いと目されている。北京五輪を契機に北米や欧州で中国代表としてプレーできる血縁を持ったメンバーを加えるなどしてチームを大幅に強化。今回のメンバーにはKHLクンルンレッドスターズのメンバーが22人中19人もラインナップされている。その試合のことを考えると笑顔がないのもうなづけるし、逆にそんな表情を見せる日本代表メンバーが頼もしくもある。

序盤からスピードで圧倒。得点力の強化もはっきり示す

日本の先制点は鈴木健斗。鮮やかなコンビネーションだった

試合は序盤、日本がオランダに攻めさせて様子を見ていたようにも思えたが、開始3分過ぎから日本が一気にギアを上げた。高速でのスケーティングから滑らかにパスを繋ぎ、相手ゴールに迫る。ディフェンス(DF)の攻撃参加も積極的で、早くもオランダDF陣とGKをそのスピードでパニックに追い込んだ。

先制点はそんな日本の積極性が生んだ見事な連携から。
日本のプレッシャーを受けた相手DFが自陣のディフェンデイングゾーンからパックを前に出せず、たまらずゴール裏にパックを流したところ、そこに待ち構えてパックをかっさらったのが大津晃介(おおつこうすけ/ひがし北海道クレインズ)。完全にゴール裏でフリーとなった大津はしっかりタメを作ってパックをゴール前へ。そこには鈴木健斗(すずきけんと/栃木日光アイスバックス)が待ち構えており、完璧なパスをあとはゴールへたたき込むだけ。
実に素晴らしい形で日本が第1ピリオド15分33秒に先制点を奪う。

鈴木のゴール直後、オランダベンチではパックをゴール裏に流した選手の胸ぐらを別の選手がつかみ今にもケンカが始まりそうな雰囲気になるほどで、この先制点が与えた相手へのダメージは絶大だった。オランダはここからほぼ試合全体を通して守勢に回ることとなった。

失点直後、揉めるオランダベンチ

18分5秒には、右に流れたハリデー慈英(はりでーじぇい/レッドイーグルス北海道)が振り向きざまにシュートを決めて2-0。これで日本はだいぶ有利に試合を進められる展開に。内容的にも全く問題の無い展開で日本は第2ピリオドへのインターバルに入る。

ハリデー慈英のゴールでさらに差を広げる

出場選手全員が活躍。4つのラインでバランス良くプレーできたのも収穫

第2ピリオドは若手の躍動が光った。早くも2分9秒には、米山幸希(よねやまこうき/ひがし北海道クレインズ)が打った強烈なシュートリバウンドを古橋真来(ふるはしまくる/栃木日光アイスバックス)が押し込んで3-0。
さらに9分38秒には自陣ブルーライン付近から榛澤力(はんざわちから/NCAA・Sacred Heart大学)が中島照人(なかじまてると/東洋大学)へ縦に柔らかくパスを送ると、中島のノーマークを演出し、抜け出した中島が見事にGKをも交わしてゴール。これでほぼ試合は決着した。

GKとの1対1も冷静に決めた中島(照)

第3ピリオドは中島彰吾(なかじましょうご/レッドイーグルス北海道)、中島照人の2点目、エース平野裕志朗(ひらのゆうしろう/AHLアボッツフォード・カナックス)、入倉大雅(いりくらたいが/レッドイーグルス北海道)が得点を挙げるなど、収穫祭の様相に。

8点目は入倉大雅が1対1を決めてとどめを刺した

特に日本にとってポジティブだったのは、平野や古橋といったエースだけでなく、中堅・若手とまんべんなく活躍し得点が取れたこと。また、石田陸(いしだりく/東洋大学)、床勇大可(とこゆたか/法政大学)そして榛澤、中島(照)など若い選手も全く物怖じすることなく自分らしさを前面に出してプレーできていたことだ。
4つのラインが全体的にまんべんなく活躍しており、ベンチのマネージメントとしても納得のいく出来だったのではないだろうか?

エース平野裕志朗はこの日1得点。マークが分散すればより平野の力が生きてくる

現地4/24、中国との「決戦」へ

初日に行われた3試合の結果を受けると、次戦・日本対中国戦は早くもこの大会の優勝を占う決戦となる様相となってきた。
KHLクンルン・レッドスター勢の個の能力は高いので要警戒だが、日本代表も自慢の守備力は相変わらずハイレベルで、攻撃力にも自信を持ち始めている。間違いなく良い試合ができるだろう。

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