【ジャパンカップ】アイスバックス創設25年目、全日本選手権に続きジャパンカップでも頂点に。福藤豊が2冠に導く好セーブ

日光、そして日本の“レジェンド”はまさに円熟のゴールテンディングを新横浜で披露した(撮影:今井豊蔵)

取材・文/今井豊蔵 写真/今井豊蔵・アイスプレスジャパン編集部

アジアリーグアイスホッケー ジャパンカップ2024
12月28日(土) @KOSÉ新横浜スケートセンター 観客数:1071人

横浜グリッツ 2(1-0、1-2、1-1)3 H.C.栃木日光アイスバックス
ゴール:【グリッツ】杉本、大澤 【アイスバックス】出口、寺尾、磯谷
GK:【グリッツ】冨田 【アイスバックス】福藤
シュート数:【グリッツ】36(15、11、10) 【アイスバックス】27(8、13、6)

「僕自身が落ちることがあったら…」 福藤豊、まさかの2試合連続KOから復活

身を挺してシュートを止める。対HLアニャン戦の不調を克服し、福藤は”2冠”をチームにもたらした(撮影:今井豊蔵)

 アジアリーグ・アイスホッケーに参戦する日本の4チームが2回戦総当たりで優勝を争うジャパンカップは28日に2試合を行い、新横浜では日光アイスバックスが3-2で横浜グリッツをくだして優勝。全日本選手権に続く今季2つ目のタイトルを獲得した。

 この試合34セーブ2失点のGK福藤豊は、2試合続いた途中交代という屈辱を乗り越えての栄冠。「苦しんだ後に何があるのかなと思っていましたよ」という42歳へ向けてジャパンカップ優勝決定が伝えられるとリンクへ紙テープが飛んだ。試合終了のアナウンスとともに、ゴール前に立つ福藤が軽く左手を上げたところにバックスの選手が集まり、口々に労いの言葉をかける。

「正直押し込まれる時間がすごく長かったんですけど、僕のセーブで救うことができたかな」。ピンチのあとにチャンスあり。ゴーリーの好セーブが試合の空気までも変えると知り尽くしている大ベテランは、静かに喜びを口にした。

 今季は、2年目20歳のGK大塚一佐に出番を譲ることが増えている。さらに15日のレッドイーグルス戦では、第2ピリオド13分までに6失点を喫すると屈辱の途中交代。22日に韓国で行われたHLアニャン戦でも、第2ピリオド17分までに7失点し大塚への交代を命じられた。日本人で唯一NHLの舞台に立った男は、2試合連続のノックアウトをどんな思いで受け止めたのか。

優勝決定の瞬間、左手を挙げて自ら勝利を喜んだ(撮影:今井豊蔵)

「代えられて当然だと思っていました。僕のプレーができていない。でもそこで僕自身が落ちることがあったら、さらにチームに迷惑をかけてしまう。だからこれも成長の機会。苦しんだあとに何があるのかなと思っていましたよ」。
 自らのセーブで流れを引き寄せることだけを考えての一戦、序盤リズムをつかんだのはグリッツだった。第1ピリオド1分16秒、この試合のファーストショットをFW杉本華唯に決められる。ただその後のシュートの嵐を、福藤は冷静な準備と、突っ込んでくる選手に対して体を張る好セーブでしのぎ続けた。
 藤澤悌史監督も「先に失点したのは恐れていた流れですが、その後は福藤が助けてくれた。ピンチもありましたがしっかり守ってくれた」と賛辞を惜しまない。 第1ピリオドのシュート数はバックスの8本に対しグリッツが15本。福藤はここをなんとか最小失点でしのいで流れを引き戻した。すると第2ピリオドにFW寺尾勇利、FW出口圭太のゴールで逆転。第3ピリオドにもFW磯谷奏汰のゴールでリードを広げた。

8週間で17試合。“全日本の代償”を越えて見えてきたもの

仲間に祝福され笑顔を見せる福藤。”守護神”はこれからも最高のプレーを見せ続ける(撮影:編集部)

 チーム創設から25年目の今季、シーズン前に掲げた「3冠」という目標のうち、全日本選手権とジャパンカップを奪った。経営もリンク上での成績も苦しかったチーム創生期を考えると隔世の感がある。当時の主力FWだった藤澤監督は「獲りたいものを2つ取れたのは大きい。3冠を獲ろうというのが口だけじゃなく、実行してくれた選手に感謝したい。底力を見せてくれたし、チャンピオンらしい試合をしてくれた」と、選手たちが見せてくれた進化を称える。

 バックスにとっては試練と歓喜の年末だった。優勝した全日本選手権では決勝までの3連戦を戦い、さらに21、22日には他チームが休む中で韓国遠征の2試合が組まれたこともあり、直近の8週間で実に17試合を戦った。藤澤監督は「ここが今季のポイントになるとはずっと言っていた。疲れは残っていると思うけど、その中で結果を残してくれたのは大きい」。戦い抜いた自信とともにアジアリーグ後半戦に向かう。

観客席のファンから祝福の紙テープが飛んだ。アイスバックスは悲願のリーグ制覇を目指し後半戦へ向かう(撮影:編集部)

 残るは1冠。まだ獲ったことのないアジアリーグでの優勝だ。ジャパンカップの最中に、韓国で組まれた首位のHLアニャンとの連戦は2連敗。それも22日の2戦目は10失点という大敗だった。全日本での優勝後、失点が増えていたことに福藤は「全日本にかける思いが濃すぎたとも思うんです。みんな、そんなこと絶対に言いませんよ。でもメンタルに代償と言えるものがあった。そこでジャパンカップの優勝がきっかけになって、本当に獲りたいものを取れたらいい」。

 自分たちの戦い方を取り戻せたと言わんばかりだった。

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