韓国からの挑戦者、パク・ジュンソが初ゴール「言葉にできないくらいうれしい」
夢のグリッツ加入で抱く野望「ずっと日本に…」

取材・文/今井豊蔵 写真/今井豊蔵
アジアリーグアイスホッケー2025-26
10月11日(土) @KOSÉ新横浜スケートセンター 3回戦 観衆:1174人
横浜グリッツ 4(1-4、0-3、3-2)9 レッドイーグルス北海道
ゴール:【グリッツ】パク・ジュンソ、池田x2、杉本 【レッドイーグルス】小林、三田村x2、高橋x2、入倉、磯谷、三浦、中島(彰)
GK:【グリッツ】冨田⇒磯部 【レッドイーグルス】成澤
シュート数:【グリッツ】24(9、5、10) 【レッドイーグルス】53(23、21、9)
レッドイーグルス戦で初ゴール、今季韓国から新加入のDF
横浜グリッツには今季、韓国の延世大学を卒業して1年目のDFパク・ジュンソが加入し開幕から経験を積んでいる。10月11日のレッドイーグルス北海道戦では初ゴールを記録した。アジアリーグと日本のアイスホッケーに憧れつかんだチャンス。22歳は日々何を感じ、どんなホッケーキャリアを思い描いているのか。
「言葉にできないくらいうれしいです。一生懸命準備してきた結果なので」
パク・ジュンソは、出場8試合目でつかんだ初ゴールをこう振り返る。第1ピリオド3分に先制を許したグリッツは4分41秒、FW運上雄基がゴール前にドライブし、バックハンドでシュート。ここでゴール前のラッシュに飛び込み、リバウンドを押し込んだ。

ジャンプアップしての攻撃参加から生まれたゴールは、自身の持ち味を生かした結果だという。「DFなので守備が優先ではあるんですが、FWの攻撃を引っ張れるように、チームの得点に寄与できるようにするのが自分のスタイルだと思っています」。初ゴールのパックは運上を経由して、手元に戻ってきた。夢の舞台にたどり着いたという証明だ。いざアジアリーグに飛び込んで、感じた違いとは――。
「一番大きいのはテンポですかね。アジアリーグは本当に速い。ボディチェックも強く来て、瞬間瞬間の状況がすぐに変わっていく。気を抜くと、状況を把握しそこねるケースが本当に多かった。これまで大学とか、少しレベルが下のチームと試合をしていたところから一段階上がったので、試合を見ることも大事だと思っています」。さらに日韓のプレースタイルにも「日本は韓国よりスピードが速くて、本当にすばしっこい。センスもいい」と、もまれているところだ。
韓国南部の昌原(チャンウォン)出身。スケートが大好きな少年だった。小学生の頃、一般滑走で見せていたスケーティングをコーチにほめられ、できたばかりのアイスホッケーチームに入った。当時からずっとDFだ。「ずっとスケーティングに自信があったので、後ろから行って、みんなを交わしてシュートするような状況が多かったんです」。指導してくれたのは、アニャンハルラでDFとしてプレーしたイ・スンヨプ氏。何度もチームでバスに乗って、アジアリーグを見に行ったのが夢の原点だ。
アジアリーグに憧れた選手が夢を叶える時代……日本語も日本食もしっかり準備

「その頃からアジアリーグに行きたい、韓国代表になりたいとずっと思っていました。ホッケーがどんどん好きになっていったんです。中学校からは覚悟を決めてソウルに行って、選手コースに乗りました。最初は他の地域からソウルに来た友達と一緒に住んでいましたけど、高校からは一人暮らしです」。うまくなりたいという一念で、道を切り開いてきた。
パク・ジュンソは現在22歳。小中学生だった10年前は、韓国アイスホッケー界が2018年の平昌オリンピックへ向け、人もお金もかけていた時代だ。ホッケーが活気付いていた時代に選手を夢見た少年が、アジアリーグにたどり着く時代となった。さらにパク・ジュンソは、交流の機会が増えた日本のホッケーにもひかれるようになっていた。
「小さい頃から、日本で合宿や試合をする機会がたくさんありました。日本は住み心地も文化も素晴らしくて、住んでみたいなと思うようになったんです」
アジアの国が束になって強くなろうという、アジアリーグ発足時の理念を思い出すような足取りだ。パク・ジュンソが在学した延世大学は昨季まで2年間、開幕前にグリッツと練習試合を行った。このチャンスに日本でプレーしたいという熱意を訴え、契約に至った。もちろん、ここはスタート地点だ。「日本のチームに入れたので、文化も言葉もさらに学んで、もっと完全に適応できればと思っています」と決意を口にする。
大学3年から日本語の授業を受け、準備してきた。YouTubeの動画を見たり、1対1のレッスンにも通い上達。「みんなが日本語をほめてくれるのがうれしいんです。上手だと言ってくれるので、もっと使いたくなる」と笑う。食事の面で困ったことを問われても「全然ないです」ときっぱり。「一人暮らしが長いので、料理にも慣れていますし。日本食は好きですよ。基本的な牛丼から作って、親子丼とかも。すき焼きも食べてみてとても好きです」。料理のレパートリーもどんどん増えている。
「つらいことはないです。日本にずっと住みたい」と繰り返すパク・ジュンソ。そのためにはもちろん、ホッケー選手として一人前にならないといけない。チーム内には、格好のお手本もいる。「松金(健太)選手から学ぶことが多いと思っています。パスやシュートの状況を読む能力がとても高いので。練習の時から注意深く見て、一つでも何かを得たいと思っています」。
守りも攻めもこなせるDFへ、さらに上を目指して走り続ける。