代表同士のバトル第1章は、シュートアウト戦までもつれ込む激戦に
日本代表ブラック 2(1-0、0-0、0-1 、OT0-0、SO1-0)1日本代表ホワイト
■得点者 池田一騎(BK・クレインズ)、大澤勇斗(WH・レッドイーグルス)
■GK 成澤優太(BK・レッドイーグルス)、福藤豊(WH・アイスバックス)
取材・文・写真/アイスプレスジャパン編集部
2021年11月13、14日の2日間にわたって、『ブリヂストン presents アイスホッケー日本代表強化試合アジアリーグオールスターゲーム』と銘打たれた試合が、苫小牧・白鳥王子アイスアリーナで開催された。この試合は35人の選手が招集され11月9日から行われていた男子日本代表合宿の最後を飾るもの。招集メンバーを日本代表ブラック(BK)と日本代表ホワイト(WH)の2チームに分けての対戦となり、リック・キャリアー男子日本代表ヘッドコーチへのアピールの場でもある。
日本代表が国内での有観客試合を行うのは久しぶりとあって、各チームの戦いぶり、そして日本代表メンバーを争う選手達のパフォーマンスに注目が集まった。この記事では11/13(土)に行われた第1戦の模様をお伝えする。
男子日本代表復活への第1歩となるか? 35名を大量招集
日本代表の黒と白のユニフォームが氷上に勢ぞろいすると、場内の緊張感がさらに増したように感じる。今回の試合は来年5月に予定されている世界選手権に向けてのファーストサバイバルとなり、激戦が予想された。
総勢35名と非常に多くのメンバーが今回の合宿には選ばれているが、その意図をリック・キャリアーヘッドコーチ(HC)は「人数が多い中での競争のほうがお互いを高め合える可能性が高い。そういった意図で選手を集めた。日本のホッケー、アジアリーグの選手が成長するにあたって、日本代表のシステムを経験し選手が各々にプレーに取り入れる必要性があると感じている」と説明する。
その見立て通り、ブラック、ホワイト両者ともしっかりガードを固めお互いに様子を見ていくような展開でスタートした。
第1ピリオド3分過ぎにチームブラックが最初のチャンスを作る。
5分すぎには古橋真来のパスにデニー・シモンが反応。右サイドからゴールを狙うがこれは福藤豊がしっかりとブロックしてチームホワイトは事なきを得る。
すると徐々にチームブラックはフォアチェックが機能し始め、だんだんと攻撃の先手をとり続ける展開に。
第1ピリオド中盤には人里茂樹が惜しいシュートを放てば、その後にはデニーのロングパスから古橋が抜け出しGKとの1対1へ。これは福藤が前に出てシュートコースを塞ぎ守り切ったが、攻撃の流れは止まらずチームブラックは3人対2人の状況を作ると右サイドの鈴木健斗がゴール正面で待つ池田一騎へ横パス。
池田はワンタイマーでGKのブロッカーサイドを撃ち抜き、待望の先制点を挙げる。
さすがの福藤も正面を横切るパスで振られてしまうと対応しきれなかった。ニュートラルゾーンで守から攻へ切り替えた瞬間には3人対DF2人の状況になっていたし、鈴木(健)のパスも完璧な位置へコントロールされていた。
その後もブラック優勢の展開で第1ピリオドを終える。
ディフェンシブで締まったゲーム。互いに堅い守りが光る展開で、延長でも決着つかず
第2ピリオドに入ると、チームホワイトもスピードを生かした展開で反撃に出る。5分過ぎには中屋敷侑史から今勇輔とつなぎ最後は寺尾勇利が狙うが、これはチームブラックGK成澤優太の好セーブに遭い得点ならず。12分過ぎには大津晃介が正面から素晴らしいシュートを放つがこれも成澤がセーブ。18分過ぎには生江太樹が抜けだしGKと1対1の状況になるもこれまた成澤が素晴らしい反応を見せ得点を許さず。
第3ピリオドもお互いにディフェンスが良く、決定機を相手に与えない堅い守りが光った。福藤、成澤と長らく日本代表のゴールを守ってきた2人も期待通り高いレベルで安定したゴールセービングを見せ、このまま1-0でチームブラックの逃げ切りかと思われた。
しかし17分過ぎにチームホワイトが大津(晃)の個人技からゴールをこじ開ける。大津(晃)がスピードを生かしゴール裏を右から左へとラップアラウンドして至近距離からシュートを放つと、右サイドで待ち構えていた大澤勇斗の元へリバウンドがはじけ大澤がこれを押し込んで同点に。
その後は第3ピリオド、延長とお互いにしっかりした守りが続き両者得点ならず。試合はシュートアウト戦までもつれ込んだ。
8人目までもつれ込むシュートアウト戦で決着
シュートアウト戦はある意味、日本代表のなかでも屈指のシューターが勢ぞろいしたといっても過言ではない布陣に。シュートアウトの順番と成否は下記の通り。
先攻:チームホワイト 後攻:チームブラック
(1) 寺尾勇利× 鈴木健斗〇
(2) 髙木健太× 松金健太×
(3) 大津晃介〇 池田一騎×
(4) 三田村康平× 彦坂優×
(5) 中島彰吾× シモン・デニー×
<先攻後攻交代 ブラックが先攻に>
(6)入倉大雅× 大澤勇斗×
(7)古橋真来× 中屋敷侑史×
(8)人里茂樹〇 生江太樹×
8人目にもつれ込むシュートアウト戦の結果、チームブラックが勝利。
福藤、成澤の両守護神がシュートアウトでも素晴らしい出来を見せ、非常に緊迫感のあるゲームを締めくくったが、ゲームベストプレイヤーにもこの2人が選ばれた。
福藤は「この合宿もこの試合を入れて残り2日です。この合宿で準備してきたものをしっかりと出し、ファンの皆さんが満足していただけるように頑張ります。引き続き応援よろしく御願いいたします」とマイクを持ち会場のファンにメッセージを送った。
成澤も「今日は好ゲームでしたし、どっちが勝ってもおかしくない状況だったのですが、チームブラックはとてもシンプルに攻撃し、シンプルにディフェンシブゾーンをクリアできたのが勝因だったと思います。明日もハードな戦いになりますが、ぜひ応援よろしくお願いします」と苫小牧のファンに呼びかけると観客から大きな拍手が送られていた。
リック・キャリアーHCは事前の会見で日本のストロングポイントについて聞かれたとき「スピードとスキルの高さ」と明快に答えたが、この日の試合はまさに彼の考える日本選手の特徴が遺憾なく発揮された内容だった。スピードに乗ったときの攻撃の展開力と守りのレベルの高さ、また60分間しっかり集中を保ち戦術が崩れないという日本の良さは遺憾なく発揮された試合だったと思う。
この日の試合は日本代表入りを懸けた選手達が繰り広げる高いパフォーマンスレベルに加え、ロースコアの守りあいによってより緊迫感のあるゲーム展開となった。ゴールの奪い合いで観客席が沸くといったシーンは少なかったが、玄人受けする試合内容だった事は間違いない。
一方で両GKのプレーレベルが高かった事を差し引いても、もっと相手を崩すようなパスの組み立て、コンビネーションを見せて欲しかったし、パワープレーでの攻撃パターンの構築にも課題が残った印象だ。このあたりは今後どう修正してくるのか、キャリアーHCはじめスタッフ陣の手腕に期待したい。
ALオールスター日本代表戦第1戦 選手のコメント
最後にこの日活躍した選手と、両チームキャプテンの試合後コメントをご紹介する。
【チームブラック・先制ゴールを決めた池田一騎選手】
「ラインメイトが良い流れを作ってくれ、最初のゴールを決めることができて嬉しかったです。チームブラック一丸となって戦うことができ、スタッフが求めるロースコアでの試合が達成できた、両チームともに良いゲームだったと思います」
【同点ゴールを決めたチームホワイト・大澤勇斗選手】
「大津が良いエントリーをしてシュートまで行きそうだと思ったので、ゴール前にこぼれ球を狙いに行ったところ、本当にこぼれてきました。点数を欲しかった時間なので良かったと思います。チームとしてアグレッシブにしっかり当たってハードにプレイしようというゲームプランに沿って出来た部分はありましたが、全体的に見るとホワイトは攻められている時間が多かったので、明日はしっかり勝ちにいきたい」
チームホワイトキャプテン・中島彰吾選手
「1週間ハードな日程でしたが、これまでやってきたことを少しでも多く出せるようにチームとして取り組んで今日の試合に臨みました。負けてはしまいましたが、チームでやろうとしていたことは100%は出せていないものの、皆が努力した結果、良い試合ができたと思います。明日は勝ちにこだわってチーム一丸となって楽しんでやりたいですね」
チームブラックキャプテン・古橋真来選手
「チーム一丸となってオーバータイム含め65分間ハードワークで、ロースコアのゲームができたので良かったです。シュートも相手にあまり打たせていなかったので、そこは評価していいかと思います。合宿ではチームホワイト、ブラック別々で練習していたのですが、ブラックは全員良いコミュニケーションの中で、全員競争し合っているのが、今日の試合に100%出ていたと思うので、あとはチャンスをしっかり決めて、延長にいかない試合展開で勝利したいです」
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キャリアーHCは日本が目指すアイスホッケーとして「ディフェンスファーストのスタイルで臨み、ディフェンスからオフェンスへのトランジションをいかに早くできるかが大事」と指摘し、この合宿でも細かい部分からプレーを指導してきたとのことだ。
チームを外から見る立場からすると、それが世界で通用するか否かは日本代表同士の試合ではなかなか判断が難しい。来年2月のナショナルブレイクで海外勢とのマッチメイクが可能となればそのあたりははっきりするとは思うが、コロナ禍の状況によっては海外勢との試合がないまま世界選手権本番に臨むことも考えられる。
カナダで多くの若手選手を育ててきたキャリアーHCの経験と手腕で、日本代表のチーム力の底上げをぜひ果たしてほしい。