エアポケットにはまった第1ピリオド。
大津晃、古橋のゴールで食らいつくもイギリスの砦を崩せず

第2ピリオド、古橋のゴールで2-3と追撃した日本代表。次こそはイギリスから白星を奪う

取材・文・写真/アイスプレスジャパン編集部

現地9/1(日)12:30~(日本時間9/1 19:30)
2026ミラノ・コルティナダンペッツォ冬季五輪最終予選グループF
会場:GIGANTIUM(デンマーク・オールボー)

日本  2 (0-3、2-0、0-0)3 イギリス
ゴール:【日本】大津晃、古橋 【イギリス】NORRIS、KIRK、WALLER
GK:【日本】成澤 【イギリス】WHISTLE
SOG:日本 31(6、14、11) イギリス 33(16、6、11)

炎が上がるなか成澤優太が入場。3試合通して強敵から数多くのスーパーセーブを見せた

 最終的に五輪出場権を獲得した強豪・デンマークに肉薄した勢いを駆って、ライバルであるイギリスを撃ち落とすことはできなかった。
 次回の世界選手権Div-IAでは同組に入ることになるイギリス。日本はこのところイギリスに分が悪いがこの試合に勝てばその力関係も逆転してプレッシャーをかけることができる。
 そんな必勝の気持ちを持って日本代表はイギリスにここデンマークの地で挑んだが、第1ピリオドの入りが悪かったことが、結局試合の最後まで影響してしまった。

 試合開始直後1分過ぎに日本が相手をスティックで引っかけてしまいフッキングのペナルティを宣告される。その直後のショートハンドのピンチに、ここまで2戦で機能していた守りにほころびが出た。
イギリスの攻撃陣に奇麗にパスを回されて、最後は右サイドから強烈なショットをNORRISに打たれ、2:59に日本は今大会初めて相手に先制を許す。
 さらに13:51に再度日本がペナルティをして迎えたこの日2度目となるショートハンドのピンチ。ここでも30秒たらずでKIRKにパワープレーゴールをあっさりと許してしまう。これまで2戦の出来からはまったく考えられない日本のスタート。さらに16:20にはWALLERのシュートでイギリスに3点目を献上。チームの歯車がなぜか狂ってしまっていた。

イギリス2点目の瞬間。日本は第1ピリオドで今大会一番良くない入りだった

 山中武司コーチはこの第1ピリオドの流れについて「アンラッキーな部分はあった。ただ相手が格上なので、こういうピリオドも時にはある。まだ返せる点差で踏みとどまってくれた」と冷静に状況を見ていたが「その中で遅い展開のホッケーをしてしまった。自分たちから相手が望むようなスローな展開で入ってしまった」と分析。ジャロッド・スカルディヘッドコーチも「難しいスタートになってしまった。ただスピードに関しては我々の方が上回っているのでそこを生かす」とスタッフはインターバルでの立て直しを懸命に図った。

「速いアイスホッケーに戻そう」スカルディHCの指示に選手たちは応えた

「テンポを早くするように。パックを早く動かす、そして足をどんどん使って速いスピードのアイスホッケーに戻すこと」という指揮官の指示を受けて望んだ第2ピリオド。日本の選手はその指示を忠実に実行。「あの辺りの理解度の高さ、すぐに修正できる点はこのチームのストロングポイント。よくやってくれたと思う」という山中コーチの言葉通り、日本は見違えるような動きを見せる。

選手に檄を飛ばすJ・スカルディヘッドコーチ(後列左)


 すると追撃の1点がピリオド開始直後の2:51に生まれる。
 大津夕聖(HLアニャン・アジアリーグ)からの絶妙なパスを受けた、兄・大津晃介(栃木日光アイスバックス・アジアリーグ)が一気に縦にスケーティング。最後は相手GKのWHISTLEも見事にかわして相手ゴールにパックを流し込む。

「ゴールに向かっていくパターンのうちの1つ。シュートがポストに当たったときは、『入れ』と念じた。自分の得意のパターンで決めることができた。弟からのパスがここに来ると分かっていたので、相手DFとの間合いも見ながらジャストなタイミングを図って、ゴール前に良い形で入り込むことができた」と大津晃介はそのシーンを振り返る。これで一気に日本は反転攻勢に入った。

日本、怒濤の猛攻。古橋の思い切ったシュートが決まって1点差に

 日本はさらに猛攻を仕掛ける。ゴール裏に集まった日本応援の声がリンクに響くなか、その応援が実ったのが16:55。
 佐藤大翔(栃木日光アイスバックス・アジアリーグ)がシュート気味に放ったパックがバックボードに跳ね返ったところ、右サイドでそのパックを拾った古橋真来(栃木日光アイスバックス・アジアリーグ)が角度の無いところから思いきってシュートを放った。

最終予選という決戦の場で2試合連続ゴール。「持っている男」古橋の勝負強さが光った

 そのシュートが見事にイギリスのGK、WHISTLEから見て左サイドのわずかな隙間を通ってゴールに。一気に湧き上がる歓声のなか、ベンチで待機していた日本の選手たちも思い切り両こぶしを天に突き上げる。

「ボードを使ったパスを受けた瞬間、ゴールラインの内側で打てば入るかなと思ったので。良い位置を取ってシュートを打つことができた。フリーで打つことが出来たし、集中していたので一瞬のチャンスをものにできたと思う」(古橋)という彼らしいゴール。この古橋のゴールで日本は2-3と一気に追い上げに成功。最終ピリオドにすべてを懸けることとなった。

最後6人対4人の攻撃も1点届かず。重くのしかかった3失点目

 迎えた最終第3ピリオド。日本は勢いを駆って攻めに出たが、イギリスもインターバルの間にプレーを修正。やや引き気味にDFを位置させることで日本の攻撃を受け止める。このピリオドはシュート数11-11の互角の展開。
 4分過ぎに日本は入倉大雅(レッドイーグルス北海道・アジアリーグ)がワンタッチでパックの角度を変えて狙うが惜しくもゴールならず。11分過ぎには相手FWにノーマークでシュートを打たれる大ピンチがあったが、GK成澤優太(レッドイーグルス北海道・アジアリーグ)が左手1本でシュートをキャッチする超ファインセーブ。13:31にはパワープレーで絶好のチャンスを得る日本だが、攻め続けてもなかなか点が取れない。

 それでも日本は堅いガードをかいくぐって相手ゴールに迫ると、パスを送ろうとした相手のスティックが折れてゴール正面に流れたパックを榛澤力(HLアニャン・アジアリーグ)が思い切って打つがこれは阻まれ、さらにその直後には中島照人(HCメラーノ・ALPSリーグ)があと一歩までゴールに迫るがこれもセーブされる。
 試合残り2:31、日本が6人攻撃を仕掛けると、右サイドで中島彰吾(レッドイーグルス北海道・アジアリーグ)がボードに叩きつけられてペナルティをもらい、日本は残り1分36秒を6人対4人の2人多いパワープレーの状況を得る。
 まさにラストチャンス。このパワープレーでなんとか1点をもぎ取りたい日本はシュートを立て続けに放つ。この怒濤の攻撃に、日本選手の思いはスタンドのファンに思い切り届いていた。

 しかし、残念ながらこの6人攻撃は成就することなくタイムアップ。日本は序盤に喫した3得点が最後まで重く響いて2-3で敗戦。この最終予選は3戦全敗の勝点1で大会を終えることとなった。

試合終了の瞬間

現時点での実力は100%以上出した日本代表。ここからの強化が重要だ

 世界ランキングで上回られている3チームに対して、敗戦は2点差1つ、1点差2試合と日本代表は堅守を武器にあと少しで勝てるというところまでは迫った。100%以上の力は出した。しかし、勝ちきることは出来なかった。

 3試合、上位に肉薄しながらも届かず。

 しかし試合内容は、今後も的確な強化を続けられれば日本代表は世界の強豪ともしっかり戦うことができることを示してくれた。近い将来、今大会で対戦した3チームのみならず、上位のチームを倒せる位置までは確実に来ている、と感じるデンマーク・オールボーでの最終予選だった。
 世界選手権や五輪予選といった大きい大会で日本が勝利し、歓喜の瞬間が訪れるか否か?
そのためには今後、「日本代表の強化がしっかりと正しい方向でなされるか」、その1点にかかっている。

日本のゲームベストプレイヤーには大津晃介が選ばれた



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