【2020-21J−IceNorth】室蘭スティーラーズが2連覇!
DYNAXとの直接対決制し、北海道勢の頂点へ
コロナ禍に襲われたこのシーズンにおいても、関係者の努力で全30試合のリーグ戦を完走した「Jアイスノース(J-ice North Div.)」。リーグ優勝争いは終盤を迎えても白熱し、『この試合に勝った方が優勝』という状況でDYNAX(ダイナックス)と室蘭スティーラーズが激突するという展開に。
選手にとってもファンにとっても心震えるシチュエーションとなった緊迫のゲームは、直前の同カードで苦杯を喫した室蘭スティーラーズがリベンジを成し遂げて、2年連続のリーグ優勝をもぎ取る形となった。
絶対に負けたくないという意地のぶつかり合い。選手の思いの強さ。 アイスホッケーに懸ける北の鉄人たちが繰り広げるプレーには、トップリーグにも決して負けない「熱さ」があった。
試合後の両チームの監督・選手の声をひもときながら、この決戦の内幕に迫りたい。
取材・文・写真/関谷智紀(アイスプレスジャパン編集部)
2021年2月7日 会場:苫小牧・DYNAX沼ノ端アイスアリーナ
日本製鉄室蘭IH部・室蘭スティーラーズ 6(0-1、5-0、1-0)1 DYNAXアイスホッケークラブ
北海道社会人のライバル対決は序盤から熱戦に
この両者の前戦(1/17@室蘭)は、運動量に勝るDYNAXが序盤から室蘭スティーラーズを圧倒。負ければそこで優勝が消えるという敵地でのゲームを5−3で制し優勝への望みを繋いでいた。
しかしこの試合を迎えるにあたって、DYNAXはケガで主力DF2人を欠き、この試合の登録DFメンバーは4人。人数が限られる分、体力的にも相手より消耗度合いが激しいのは分かっているだけに「どう守るか」、という課題が突きつけられていた。
その点を踏まえDYNAX・大澤洋介監督は「疲労度も考え、攻撃についてもシンプルにワンプレーで終えるように」とスティーラーズ攻撃陣の動きを見ながら慎重に試合をスタートさせるというゲームプランを指示していた。
第1ピリオド、その選択が結果に繋がる。
DF陣が規律をもって連携し、スティーラーズの攻撃を序盤からしっかりと跳ね返していく。すると徐々に流れがDYNAXに傾き、最初にゲームが動いたのが4:47。
自陣ブルーラインでDFが跳ね返したパックを中央で拾った山野下元氣が右サイドをタイミング良く駆け上がった今野友尋にパス。今野はスピード差でスティーラーズDF陣を一気に振り切ると、GKとの1対1のシチュエーションでも落ち着いてゴール左に切り返して先制点を奪う。
12分過ぎのパワープレーでは綺麗なパス回しからゴール右にいた府中祐也が決めにかかるが、ここはスティーラーズGK山口連が身体をなげうって必死のセーブ。追加点こそならなかったが、大澤監督の狙い通りDYNAXは守りからリズムを作り流れを掴んでいく。16分過ぎには山口のプレーへのお返しとばかりに、GK高橋勇海がノーマークを身を挺して止めるなどのスーパープレーも飛び出した。
第1ピリオドはDYNAXが1点をリードしてインターバルへと突入。「運動量の多い相手に対してしっかり守ることができ、事実上の決勝で先制できたのは大きい」(大澤監督)。DYNAXのゲーム運びの上手さが目立つ展開となった。
「よりアグレッシブに」その決断が流れを変えた
いっぽうのスティーラーズ。
1点ビハインドで第2ピリオドを迎えることとなったが、「立ち上がりスロースタートの展開が多いのがこのチームだが、動きは悪いとは感じていなかった。第2ピリオドに向けて『よりアグレッシブに攻撃を続けよう、その中で必ずチャンスは来るのでそこを逃さないようにしよう』と指示した」(スティーラーズ・鈴木亜久里コーチ)と焦りは無く、虎視眈々と巻き返しを図っていた。
第2ピリオドも、守りからリズムを作るDYNAXが主導権を握り続けられるか、あるいはスティーラーズが強化した攻撃力でその堅い守りをこじ開けられるか? どちらに転ぶか緊迫の展開は、第2ピリオド開始わずか29秒。1つのプレーをきっかけに試合が一気に動き出す。
フェイスオフ直後からスティーラーズがプレッシャーをかけ、まずは正面から切江蓮がシュート。ここはDYNAXが守ったものの、DFから前線に向けて狙ったパスをタイミング良く阿部魁がカットするとすぐさまゴール右にいた小泉智也にワンタイマーでパス。小泉がこれを押し込んでスティーラーズが1−1の同点に追いつく。
「1点が入って吹っ切れたのかな、と。これでリズムが一気に出てきた」(鈴木コーチ)というスティーラーズはさらにアグレッシブに。
2:51には左サイドから小泉が形を作り、ゴール正面の阿部のワンタッチからルーズパックを拾った工藤翔介が最後は個人技でGKを交わしてゴール。「自分が試合を決めたいという強い気持ちでこの試合に臨んでいた」という工藤のゴールで、スティーラーズがあれよという間に試合をひっくり返す。
その2分後にはパワープレーのチャンスからスティーラーズ村上亮のシュートリバウンドをゴール右から野澤一矢がトップネットに突き刺して3−1とする。
実はスティーラーズの鈴木コーチはこの決戦に向けて、戦術の見直しとともにラインの組み替えも敢行し、小泉-阿部-工藤を1つのラインにまとめていた。「ある意味賭けでもあった」(鈴木コーチ)という組み替えだったが、「僕らは『爆発セット』と呼んでいたのですが、直前の練習から息も合って練習でも点をバンバン奪えるなど、コミュニケーションが抜群だった」(工藤)とその賭けは見事に成功。結果として怒濤の連続得点の要因となったことは間違いない。
傾いた流れは押し戻せず。予想外の大差で試合は決着
これで追いかける展開を強いられたDYNAX。「攻撃に移ってもFWとDFの間隔が空いてしまったところで分断され、なかなかラストパスが通らなかった」(大澤監督)というように体力の消耗が少しずつ影響し、前戦のように綺麗なパス交換を見せながら相手に複数で襲いかかるシチュエーションを作ることができない。
「相手のハードワークにかなり勝られた、というのが正直なところ。運動量の差がやはり結果に出た。第1ピリオドの動きを続けたかったが、失点もミスからという部分が多かった。貪欲にゴールを狙いにくる相手の姿勢はウチのチームに足りないところ」(大澤監督)。
終わってみれば第2ピリオドだけでスティーラーズは5点を挙げDYNAXを圧倒。
最終的には室蘭スティーラーズが6−1という大差でこの決戦を制し、2020-21シーズンのJアイスノースのチャンピオンに輝くこととなった。
選手達の喜びの声
「連覇できてとにかく嬉しい。いつも応援している方々に恩返しができ『ホッ、としている』というのが正直なところです。でも、ここからです」(スティーラーズ・小泉)
「優勝は素直に嬉しいです。前戦ではホームで優勝を決められなくて悔しかったですが、その悔しさを忘れずに練習に取り組めました。この後のチャンピオンシップ*でもJアイスノース代表として頑張っていきたい」(同・工藤)
注*:その後の決定で今季のJアイス-プレーオフは開催されないこととなった。
「スタッフ、コーチ陣とともに『どうやったらDYNAXに勝てるか』と話し合いを積み重ねてきました。その結果がこういう形で出て本当に良かったです。相手ゾーンの深く中で勝負出来るようにFWがよく走り、運動量を持ってゴールに向かうプレーを続けられたことが勝因だったとは思います」(同・横山恭也キャプテン)
と、それぞれが連覇の喜びを噛みしめた室蘭ステーラーズの面々。彼らの次の目標は、2/21の道新杯決勝、そして3月初旬に行われる予定の全日本選手権Bで優勝を勝ち取ることだ。
なお、この試合は選手の家族、スポンサー関係者など限定での公開試合だったが、ソーシャルディスタンスを保ちながら観客席を埋めた両チームのサポーターから好プレーのたびに大きな拍手が湧くなど、見る者の心を掴むゲームだったことも最後に一言付け加えておきたい。
◎優勝直後の室蘭スティーラーズ監督・選手インタビューは、アイスプレスジャパンTVにて順次公開予定◎
「気持ちの伝わってくる試合」はこれからも。好敵手同士の戦いは続く
さて、この両チームの戦いは、新章へと突入していく。
次なる戦いは、トーナメントの「道新杯」だ。
2/20の試合で、DYNAX、スティーラーズともに1回戦を突破。
2/21(日)に札幌・月寒で再び相まみえることとなった。
「室蘭スティーラーズさんとは道新杯でもう一度戦うチャンスが残っている。地域のライバルとしてリスペクトしている相手です。しっかり戦い抜いて、今度は勝てるように。コロナの中でもこうして試合をできる環境に感謝して、仕事をしながらも大好きにホッケーに打ち込む姿、頑張っている姿をより多くの人に見せたいと思っています」(DYNAX・大澤監督)
「この状況でアイスホッケーをプレーさせていただいていることに感謝して、自分たちのプレーを通じてより多くの方に勇気を持ってもらったり、感動を与えたいということを目標として、選手達は日々頑張っています。リーグと道新杯の2冠をとって初めて本当に喜べると思いますし、今後も勝利に向かう姿を通じて勇気と感動を届けられるよう努力を重ねていきます。」(スティーラーズ・鈴木コーチ)
白熱の第3章は、2/21(日)12:50から札幌・月寒体育館で行われる「道新杯争奪全道アイスホッケー大会」の決勝戦が舞台。
この試合はDYNAXアイスホッケークラブのYouTubeチャンネル(https://www.youtube.com/channel/UCTttrdES7UjV7rez1f0ZXww)で配信される予定だ。
苫小牧と室蘭の両雄・DYNAXとスティーラーズのライバル関係はこれからも深化し、より激しい火花を散らして行くことは間違いないだろう。これからもこの2チームから目が離せない。
Jアイスノース(J-Ice North)最終順位表
①室蘭スティーラーズ 勝ち点27(9,0,0,1)
②ダイナックス 勝ち点26(8,1,0,1)
③釧路厚生社IHC 勝ち点19(6,0,1,3)
④タダノ 勝ち点10(3,0,1,6)
⑤札幌HC 勝ち点5(1,1,0,8)
⑥東部ブレイズ 勝ち点3(1,0,0,9)
※カッコ内は(60分勝利、延長勝利、延長負け、60分負け)の試合数
【Jアイスノース個人成績】
最優秀GK 山口 連(日本製鉄室蘭)
得 点 王 木戸 啓太(釧路厚生社)
アシスト王 坂本 颯(ダイナックス)
ポイント王 木戸 啓太(釧路厚生社)
ベストDF 橋本 潤(札幌ホッケークラブ)