日本がエストニアを一蹴。守り合いを制し4連勝。優勝へ堅い守りに手ごたえ
2023IIHF男子世界選手権ディビジョンIB
会場:トンディラバアイスホール(エストニア・タリン)
リーグ戦第4戦(現地4/27 19:30FaceOff. )
日本 3(1-0、2-1、0-0)1 エストニア
ショットオンゴール:日本27 エストニア20
取材・文・写真/アイスプレスジャパン編集部
これまでの3試合とはまったく雰囲気の違うゲームとなった。日本と同じように守りから入り、鋭いカウンターで勝機をうかがうタイプのチーム、エストニア。
この日も日本に対して大エースのRobert ROOBAを中心に攻撃を組み立ててきた。しかし日本はセルビア戦でペナルティーキリングをきっかけに2失点したことへの反省点を見事に修正。失点をミス起因の1点のみに抑えて狙い通りのロースコアの展開に持ち込み、日本の土俵にエストニアをひきずりこんだ。
途中、2人少ないショートハンドとなるピンチのシーンにも第2、第3ピリオドを跨いでおちいったが、そこでは守備力も高いFW古橋真来(ふるはしまくる/栃木日光アイスバックス)を起用し、ディフェンスとの連携で見事に対応。守りの堅い日本らしい3-1という得点差できっちりエストニアに勝ち、4連勝。勝ち点を12に伸ばして、最終日ウクライナとの優勝をかけた直接対決に臨むこととなった。
平野がこじ開けた相手の穴を人里が見事に突いて先制
この日の先発GKは成澤優太(なりさわゆうた/レッドイーグルス北海道)。第1ピリオド序盤から相手のシュートを確実に成澤が止めるなかで日本はだんだんとリズムを作り上げていく。
日本の守りの前に、エストニアの攻撃の芽はニュートラルゾーンからブルーラインを超えるかこえないかくらいの早い段階で摘み取られていった。エストニアは個人で突破してシュートというかたちで打つほかなく、ゴールに繋がるような際どいシーンをほとんど作ることができなかった。
そんな形でしっかり守り抜く日本に待望の先制点をもたらしたのはまたも平野裕志朗(ひらのゆうしろう/AHLアボッツフォード・カナックス)と人里茂樹(ひとさとしげき/GKSカトヴィツェ(ポーランド))のコンビネーション。平野が右サイドで相手にプレッシャーをかけると、パックがゴール前のいい位置へするするっと流れて人里がそれを拾う。そのあとはもう人里の独壇場。6分38秒にGKの動きを見ながら余裕を持ってパックを左にムーブさせて見事に決めきった。
第1ピリオドでの日本の得点はこれだけではあったが、ディフェンシブな戦いにフォーカスする意識を貫き守りに集中力を割くなかではある意味充分ともいえた。
ハリデーの今大会2得点目の9秒後に失点も、守りに安定感
第2ピリオドも完全にエストニアは日本の術中にハマった。ここまでを通して日本にとってほぼ危険なシーンはなく、怖いのはミスと偶然のイタズラのみ。
そんな展開のなか、4分47秒。ブルーラインから打ったハリデー慈英(はりでーじえい/レッドイーグルス北海道)のシュートが直接ゴールに吸い込まれ2-0。ゴール前にはGKの目線をさえぎる形で入倉大雅(いりくらたいが/レッドイーグルス北海道)、髙木健太(たかぎけんた/レッドイーグルス北海道)と2枚がスクリーンに入っており、完全にGKの目線からシューターのハリデーを隠した素晴らしい得点だった。
これで2-0となり、日本にとってはかなり落ち着いた試合の展開に出来そうだと胸をなで下ろしたのもつかの間、ハリデーのゴールの直後、センターフェイスオフからの次のワンプレーでエストニアも追いすがる。この失点はフェイスオフでパックを奪ったあとその先へパスを出そうとした際に、出し先の選択を読まれてパックを簡単にスチールされたことに端を発するものだった。完全に日本チーム側のミスだったが、これに対しては複数のベテラン選手から即座に「ミスは気にせず良い部分を継続していこう」という主旨の声がベンチから飛んだという。精神的には追い詰められておらず、切り替えをうまくできたのか、その後すぐにいつも通りのディフェンスに戻ったのはここまでの世界選手権の経験がものをいったのかもしれない。
第2ピリオド15分43秒には平野裕志朗が右のフェイスオフスポット付近から振り向きざまに強烈なショットを決めて3-1。
これで2点差とした日本はその後も落ちついてエストニア攻撃陣に対応。守備に大きな破綻はなかったが、第2ピリオド終了間際に立て続けにペナルティを取られて3人対5人のショートハンドの大ピンチに。
しかしそこでも日本は持ち前の守備力を発揮し、2.3ピリオドにまたがったショートハンドのピンチを乗り越えると、第3ピリオドに入っても最後まで守りが崩れずそのまま逃げ切り。
開催国が相手でエストニアへの声援も激しくアウエー感に完全にさらされた試合であったが、それを物ともせず見事に4連勝をはたした。
いよいよ最終日。得点力を見せつけるウクライナ攻撃陣を止められるか?
この日エストニア戦での勝利は言うまでもなく守りの勝利。
ディフェンスを構築する山中コーチは「 ディフェンスの約束事を各選手がしっかり守って対応してくれた。良い守りだった 」と日本守備陣を称え、ウクライナ戦もいい戦いができると自信をみせた。
「ペナルティキリングで起用している選手たちは相当高いレベルでシステムを理解してくれている。中国戦でペナルティキリングから2失点したときにもすぐに修正に対応してくれた。中国戦では、パックを奪ってからパスを出す相手先を味方FWに直接でなくより安全なリム方向(リンク四隅のコーナ部分)へと変えることで対応でき失点を無くすことが出来た。こういう対応力が日本の選手はとても高い」(山中コーチ)
守備陣の要の1人、山田虎太朗(やまだこたろう/レッドイーグルス北海道)も「相手のホームゲームでやりづらい部分はたしかにあったが、GKの成澤選手中心に1失点で抑えることが出来て、ウクライナ戦に繋がる内容だった。相手のトップラインを封じることが目標だったがそれをうまくやり抜けたことが良かった」と語り、ウクライナ戦での活躍を改めて誓った。
ウクライナは日本の試合の1つ前に14-2でオランダを一蹴しており非常に攻撃力のあるチームだか、堅い守りの日本に対してもその攻撃力を発揮できるかどうかは未知数だ。
総合的には「攻めのウクライナ、守りの日本」と言う構図だが日本には例年にも増して得点を取れる選手がラインナップされていると言う強みがある。攻撃陣がいつも通りに試合ができれば自ずと結果も付いてくるだろう。