「北海道ワイルズのこれから」に向けて。岡本新代表が考えていること、とは? 

北海道ワイルズ対愛知県選抜。ベンチから試合を見つめる岡本博司新代表(後列左)と齊藤毅監督(後列右)

取材・文・写真/アイスプレスジャパン編集部

間近に迫る来季の加入申請提出期限

12/26(火)にアジアリーグアイスホッケーは公式サイトでリリースを発表。12/26の13時時点でまだ北海道ワイルズからの来季加盟申請書類が届いていないことを公表した。来季に参入を行う場合のアジアリーグアイスホッケーへの加入申請提出期限は12/31いっぱいまで許されているので、現在各所で調整が進んでいるものと思われる。
12月初旬に行われた全日本選手権(A)で北海道ワイルズは2回戦を勝ち上がり、準決勝進出。準決勝では東北フリーブレイズに対しゲームウィニングショットまでもつれ込む激戦を展開したが惜しくも敗れた。アイスプレスジャパン(IPJ)が行ったXによるアンケートでも「ワイルズの全日本選手権参加に賛成」という投票が70%を越えるなど、ファンレベルではワイルズ選手の活躍が見たいという声が多く挙がっている。

その後、苫小牧にてレッドイーグルス北海道(アジアリーグ)、日本製鉄IH部室蘭スティーラーズ(北海道社会人)、DYNAX(北海道社会人)との4チームによるクリスマスエキシビションマッチに参戦したほか、さらに年明け2024年の1/20、21(土日)には札幌でレッドイーグルス北海道とのトレーニングマッチ2連戦を行うことが発表されるなど、すでに日程が発表されている横浜グリッツとの対抗戦に加えてワイルズが試合を行うペースが徐々に上がってきているように見える。

11月に代表交代を発表した北海道ワイルズ

北海道ワイルズは全日本選手権(A)を前にした11月15日付けで、山田謙治前代表が退き、岡本博司新代表の就任を公式サイトで発表した。⇒https://wilds.jp/2023/11/15/3193/

この代表交代の発表を受けて、弊メディア、アイスプレスジャパンはその直後、11月20日に愛知県・名古屋で行われた愛知県選抜vs北海道ワイルズの試合に取材へ赴き、そのさいに岡本新代表に単独インタビューを行った。
アジアリーグ加盟申請期限を間近に控え、北海道ワイルズの動向についてアイスホッケーファンや関係者のみな様に情報をお伝えすることは必要と思い、このタイミングで岡本新代表とのインタビューに基づいた記事を発表したいと思う。

今後の北海道ワイルズがどうチーム作りを進めていくのか、また多くのファンが気になっているであろう資金面の問題について、クレインズの名をどうするのか、などを聞いた。ぜひお読みいただければ幸いだ。

北海道ワイルズ対愛知県選抜の試合日に、岡本新代表へのインタビューは行われた

ワイルズの舵取りを託された「岡本博司新代表」とはどんな人物か?

岡本博司新代表は、北海道ワイルズのチーム発足当初、チームを支える有力なスポンサーの1人という立場だった。IPJ編集長が岡本氏とはじめて会ったのが、今季スタート前に釧路・鳥取神社で行われた必勝祈願の場。その当時は岡本氏はスーツ姿で選手とともに神前で頭を垂れ、神社神職からのお祓いを受けていた。

そもそも、今春ひがし北海道クレインズの未払い問題が発覚した際、選手たちへの当面の資金提供をおこなったのは当時スポンサーだった岡本氏も多くを出資したと報道されている。

その岡本氏がここで代表就任を受け入れる決断をしたのはどういうことか? まずは岡本新代表がワイルズへと関わるきっかけと新代表就任の経緯について聞いてみた。

2023年9/8、釧路・鳥取神社で必勝祈願に臨んだ北海道ワイルズのメンバー。前列右から3人目が岡本新代表、4人目が山田前代表

岡本新代表との質疑応答

IPJ まずは岡本新代表の人となりについておうかがいしたい。鳥取神社で名刺をいただきましたが、企業経営者として名古屋周辺はじめ愛知県で水道設備関係のお仕事をされている、と。

岡本新代表(以下、岡本) はい。名古屋周辺が私たちの会社がお仕事をさせていただいている土地となります。

IPJ 釧路とはご縁があるのですか? よく試合を見に行っていたとか?

岡本 そういうことはないです。また名古屋でスケート界に関わっていたということもありません。私がワイルズと関わる経緯でいえば、きっかけとなったのは山田前代表ではなく齊藤毅監督と会ったことがきっかけです。その後山田前代表と出会ったのは2023年の3月。齊藤監督から「岡本さんもぜひ協力してほしい」と言われ山田前代表と会いました。そのさいに状況を聞くなかで「僕自身もクレインズを救いたい。何ができるかは全然わからないがちょっと一緒にやってみましょうか?」と言う流れです。

IPJ 齊藤監督から頼まれて、受諾した理由は何でしょうか? アイスホッケーというマイナースポーツ、かつ日本製紙という大企業が部を支えていくことを断念したチーム。それでもこの状況でスポンサーになろうと思った根拠は、どういうところでしょうか?

岡本 そこが一番何か説明がしづらいというか、難しいところです。これを言うと、世の中の人に怒られるかもしれないのですが、僕の本音なので言いますが、基本的に困って僕を頼ってきた人がいるなら助けてあげたい、という思いだけです。僕にできるなら。

IPJ それが斎藤監督であり、選手・スタッフだったと?

岡本 はい。

ワイルズの資金面は? 

IPJ 岡本新代表と山田前代表はずっとビジネスパートナーだったんですか?

岡本 いいえ。先程も話しましたが、山田さんと知り合ったのは今年の3月で、まだ1年も経っていないです。ただ、あった瞬間にこの人も熱い人だなと思いました。しかし、僕と山田前代表はまったく性格が違う。やり方も多分違うと思うんです。山田さんはもう頭キレッキレで、コンサルタントの方だから海外でバリバリやられている方じゃないですか。なんで、いろんな局面でもう頭がすごく回転される。僕はどっちかっていうと、昔の昭和の義理人情の時代の人間、とにかく人として好きだなと思った人とは付き合っていきたいなと思っていて、毅くんとは会ったその日にこの子なら応援してあげたいな、と思ったので。本当にそれぐらいです。真剣に困っているな、じゃあ、ちょっとやれるだけやってみようかっていう話。本当に、アイスホッケー全然関係ないです、そのときは。アイスホッケーのチームの話なんだ、というくらいでした。

IPJ 今のお話を聞くと、岡本新代表はスポーツチームを作りたいとの思いはまったくなかった、と?。

岡本 全然ないですよ、全然ないです。まさかこんなことになるとは思っていなかったです。

IPJ 中立的に見ていると、今季ワイルズは正直、少数のスポンサーからの篤志的な資金援助に頼っている部分が否めない。選手の生活を助けたい、そこから始まったと岡本新代表はいいましたが、この資金面がいびつな形で今後もチームは存続できるのでしょうか?

岡本 そうですね、選手はとりあえず今年度に関しては救うことができる。それも決して楽ではないですけど。それよりも選手が来年ちゃんと戦えるのかどうか、という点が今一番重要になっています。

IPJ ここからはスポーツチームとしての独自財源を得ていかないと立ちゆかない、という時期が必ず来る。外野の勝手な意見として言いますが、岡本新代表が1年目2年目もこうやって支えてくれたんだから、もう義理を果たした、と言ってチームを離れても誰も怒らないのでは、とも思うのですが?

岡本 確かにそうですね。ワイルズを立ち上げた当初は一時的に選手を助けられればいいと思っていたし、ちゃんと形になれば地元釧路の方たちに譲り渡せばいいと思っていました。しかし市やリーグから受け入れてもらえなかったため、出資額が増えているのも事実です。「もう充分じゃないですか?」といわれても、今すでに出資している金額は返ってこない。そうなってくると、やっぱりせっかく出資したものを形にしたい。選手たちをちゃんと輝かせたうえで、利益を生める企業としてチームを存続させたいと思っています。
その中でもやっぱり釧路にチームを残したいとは思っている。釧路のいろんなキーマンと出会って話をして、商工会青年部の会長さんなどとも話をして。僕がせっかく出資しているものを、まず釧路で。釧路のポテンシャルを僕はまだもう1回ちゃんと見極めたい、とは思っています。本当のことをさらにいえば、ひがし北海道クレインズの有力なスポンサーだった企業のトップにもちゃんと会ってお話しをしたい、と申し入れています。ただ、現状では先方が出てきてくれない状況です。

IPJ 報道から判断する限りでは、今春の選手離脱からの法的措置への流れで、各所からワイルズに対する強い反発があったのは否めないかと思いますが?

岡本 (11/15のワイルズのリリースで)こちら側が行き過ぎでした、申しわけございません、との内容を発表させていただきました。また、クレインズのスポンサー各位に対しても重ねて謝罪をさせていただく意思はありますし、それについては各所に丁寧にお伝えをしています。あのリリースは新代表就任の発表というよりは、謝罪の発表が主でした。表題としては代表交代となっていますが。

IPJ そういう部分をワイルズが出したことによって、アジアリーグ側の判断も変化してくるのかな、とも感じていますが。今回のあの謝罪文に、連盟さんとかアジアリーグの意向って入っていたのですか?

岡本 山田前代表に対して責任を取らせてほしい、と。そうでないと世の中や周りが納得しない、と各方面から言われていました。それに対応させていただいた、ということです。

残るわだかまり。新たな動きは?~後編では本拠地について聞いた

ここまで、あくまで岡本新代表へのインタビューで出た、ワイルズ側による話であることはご理解いただきたい。しかしながら、ここまで赤裸々に新代表が話をしてくれるとも思ってはいなかった。インタビューが行われた11/20以降でワイルズ側の申し出に相手方が反応したかについて、そのような動きがあったとの情報は入ってきていない。わだかまりはまだ相当にあることがうかがわれる。

後編では、チームの本拠地について現時点での新代表の考えを。またクレインズの名をどうするのかについて聞いている。引き続きお読みいただければ幸いだ。

(後編⇒https://x.gd/RBhUtへつづく)



Update: