初となる決勝進出の夢は潰えても……。「横浜グリッツの歴史を作るために」アレックス・ラウターは奮闘を誓う

「グリッツの歴史を作る大事な試合。全力で3位を勝ち取りたい」3位決定戦に臨むA・ラウター

取材・文/アイスプレスジャパン編集部 写真/アイスプレスジャパン編集部

 カテゴリを超えてアイスホッケーの日本一を決める全日本選手権(A)が、18日から長野市のビッグハットで行われている。20日の準決勝第1試合、チーム創設後初となる準決勝進出を果たした横浜グリッツが前年覇者のH.C.栃木日光アイスバックスと対戦した。序盤から得点を許してはそのたびに追いつく展開。第2ピリオド中盤に飛び出した池田涼希の2連続ゴールで一時は3‐3の同点にする必死の粘りを見せた。しかし第3ピリオド、グリッツのペナルティで与えたパワープレーでアイスバックスが着実に得点して先行、グリッツは試合終了間際まで追いすがったが届かず、初となる全日本選手権での決勝進出という夢はついえた。

肩甲骨骨折の大けがから復帰後すぐに大活躍。「私が入団してから最強のチームにグリッツは成長している」

1-1の同点に追いつくラウターのもとに駆け寄るチームメイト。ラウターのゴールがチームをよみがえらせた

 最終的に敗れはしたが、チームとしても初の舞台となる準決勝でアレックス・ラウターのプレーは輝いていた。試合開始6分33秒、グリッツはペナルティからパワープレーを与えるとそのパワープレーであっさりと失点。今季アジアリーグでの対アイスバックスの戦績は4戦して全敗、相性の悪い相手にこのままずるずると流れを手放してもおかしくはなかった。

 しかし14分3秒、ラウターのゴールがチームをよみがえらせるスイッチの役目を果たした。池田涼希も「正直、初めての準決勝ということでみな硬さがあった。でもアレックス(・ラウター)のゴールからグリッツのペースが始まった」というゴール。右サイドでタイラー・ロックウェルからのパスを受けるとすぐさまシュートモーションに入り、わずかな振りから強烈なシュートを放ってGK大塚一佐の堅い守りを打ち抜いた。

 そこから息を吹き返したグリッツは第2ピリオド中盤に池田が2連続得点で3‐3の同点に追いつく。特に同点ゴールとなった3点目はパワープレーのチャンスでラウターが形を作った。ゴール前で身体を張っていたラウターは右サイドへ流れてパックを受け取るとすぐさま中央の杉本華唯へパス。ゴール右横でフリーになっていた池田に向けて杉本がクロスパスを送ると、がら空きとなったバックドアから池田がパックをゴールへ叩き込んだ。ラウターの視野の広さが生み出した同点ゴールだった。
 第3ピリオドに入ってもラウターはゴールを狙い続け、試合終了間際にはゴール正面から強烈なシュートを放つなど攻め続けたもののわずかに届かず。「あのゴールさえ決めきることができていれば……。6人攻撃も1点差ならチャンスはあったかもしれない。だがこの結果は誰のせいでもない。ただ自分たちグリッツがもっと良くなる必要があるだけです」
 初の決勝進出は夢と消えたが、グリッツにとっては全日本選手権での最高成績を更新。日曜はさらにそれを更新したい。グリッツが創立されてから初となる全日本のメダル獲得にラウターは全力を尽くす。「明日の対戦相手はまだわかりませんが、3位決定戦に勝つことが本当に重要だと思います。今夜のミーティングで改善点を洗い出したい。それがアジアリーグの順位を上げていくことにもつながると思っています」

「グリッツの歴史を作る1試合となる」3位決定戦でも全力で戦い抜く

 全日本選手権の直前、12月14日にアウエー苫小牧でレッドイーグルス北海道から奪った延長Vゴールは圧巻だった。ラウターがチームに加入して4年目。氷上では熱く戦いながらも、常に冷静にチーム全体を俯瞰しチームメイトにも助言を惜しまない彼の存在が、グリッツ全体のレベルを引き上げてきたことは間違いない。日本と横浜が大好きで、だからこそ新興チームであるグリッツにもっともっと貢献したいとラウターは決意している。

「僕たちは着実に成長している」ラウターは横浜の地を舞台にグリッツの歴史を作る決意だ

「プレーオフ常連のチームは重要な試合で力を発揮する方法を知っている。今日の準決勝はグリッツにとっても良い一歩となったが、明日はさらに重要。勝利してその経験を積めれば、今後のチーム作りに向けて非常に有益な試合となる。だからこそ、全力を尽くして初の3位となりメダルを獲得したい」

 全日本選手権で銅メダルを獲得することでチームに経験と自信が積み重なれば、その先にグリッツの新たな歴史が築かれることをラウターはしっかりと分かっている。

「ユウト(大澤勇斗選手)とカイ(杉本華唯)とプレーすることは本当に楽しいし、これ以上ない最高のラインメイトです。横浜グリッツでプレーし、チームメイトとともに戦えることに心から感謝しています。僕たちは毎年確実に成長しています。今年こそがチームを大きく羽ばたかせるチャンス。そのためにも明日の3位決定戦でも僕の全力を尽くします」

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