新規のファンを“ゲッツ!!”できるか? 日本アイスホッケー連盟による久しぶりの記者会見を開催

日ア連が新体制へ移行後初となる記者会見を行った。左から江守副会長、諸橋副会長、A・ラミレス理事

取材・文・写真/アイスプレスジャパン編集部

アイスホッケー男子では国内最高権威の大会とされる第91回全日本アイスホッケー選手権大会(A)が12/7(木)に横浜を会場に開幕。12/10(日)の決勝戦まで熱戦が繰り広げられる。
その大会前に合わせる形か、日本アイスホッケー連盟(以下日ア連)による記者会見が東京・原宿にあるJAPAN SPORTS OLIMPIC SQUARE(オリンピックスクエア)にて開催された。日ア連によるこういった形の記者会見は本当に久しぶりである。12/5午後に行われた記者会見にはおよそ15名ほどの記者が出席。新聞のほか、地上波テレビのカメラも数台入るなどアイスホッケーの会見としては通常より多くのメディアが集まった。アイスプレスジャパン(以下IPJ)にもご案内をいただいたので、いちアイスホッケーメディアとして編集長が参加させていただいた。今記事ではその内容を速報する。

「女性理事、外国人理事が増えて新しい時代にふさわしい体制に近づいた」(諸橋副会長)

登壇したのはこの9月に新体制として発表された江守秀次(えもり しゅうじ)氏と諸橋寛子(もろはし ひろこ)氏の両副会長。また広報委員長への就任が決まったRAMIREZ CAPRILES ALEXANDER RAMON氏の3人。そう、プロ野球界で大活躍され“ラミちゃん”の愛称で多くのファンから親しまれ尊敬を集めているアレックス・ラミレス氏、である。ラミレス氏は先日、アジアリーグアイスホッケー・横浜グリッツの共同代表に就任しているが、藤木幸太(ふじき こうた)日ア連新会長から推薦を受けこのたび9月に日ア連の新理事に選任されていた。江守副会長は2期目となる。諸橋副会長は新任の理事そして副会長として選任されている。今回の改選による理事の任期は2023年9月24日から2025年9月までのおよそ2年間だ。

会見冒頭、諸橋副会長から「連盟として、アイスホッケーをプレーするだけでなく、見たり支えたりという面においてもっと地域の子供たちを巻き込んだり、アイスホッケーを通じてコミュニティを創出することがスポーツの発展そしてその結果、環境の整備だったり、地域貢献に繋がると感じています。前体制の知見・経験・歴史を踏まえつつラミレスさんをはじめとする新理事とともにアイスホッケーの普及に寄与していきたいと思っています」との発言があり、今年9月から変わった日ア連の新体制について、ダイバーシティの観点から女性理事や外国人理事の登用も増えてより時代にふさわしい体制に近づいたとの見解が述べられた。

会見中の模様

つづいて、江守副会長から全日本選手権についての説明が行われた。
江守副会長ははじめに「藤木幸太新会長が欠席していることは申し訳ありません」と謝罪の言葉をのべ「藤木新会長からみな様にお伝えしたいことがいっぱいあったと思いますが、私がどこまでカバーできるかちょっとわかりませんけれども、簡単ですがご説明をさせていただき、また細かいことにつきましてはですね、担当理事の方からご説明をさせていただく」と言葉を繋いだ。

その後、江守副会長は12/7開幕の全日本選手権の概要について説明。アジアリーグ勢のトップ選手に社会人チームや大学チームが挑むエキサイティングな大会であること、それゆえ多くのメディアに取材をいただきたいとの旨の発言がなされた。

あの“ラミちゃん”が新広報委員長に。「アイスホッケーを通じ社会に貢献し子どもたちに夢を与えたい」

ボードを両手に笑顔のA・ラミレス理事。自身が広告塔になってアイスホッケーの認知度向上に一役買う、と意気込む

続いてアレックス・ラミレス新理事/広報委員長がマイクを取り、「この9月から現在の役職に就任させていただきました。選任いただいたことをとても嬉しく思っています。またやりがいも感じています」とあいさつ。
「『なぜラミちゃんがアイスホッケー??』と疑問に思うかたも多くいらっしゃると思いますが、数年前に藤木新会長に誘われて横浜グリッツの試合を見に行きました。そのときにアイスホッケーの素晴らしさを体感しまして、本当にそれからはたくさんの試合を見ています。アイスホッケーというのは本当にポジティブな要素が多いですし、ファンの熱狂する姿や選手のプレーを見ても本当に素晴らしいスポーツだというふうに感じています。そして僕が感じたのはこの競技を通じて社会に貢献できるのではないか? ということでした。そのため会長から理事就任の打診をされたときに躊躇なくお請けしました。子供たちそして今アイスホッケーをプレーをしている方々が夢を持ってもらえるようなスポーツにしアイスホッケーをより普及させたいというふうに強く感じています」と言葉を続けた。
さらにラミレス氏は新広報委員長としてプロ野球での経験を活かし他の理事とも連携してアイスホッケーの発展普及に貢献していきたいと意気込みを語り、今回の全日本選手権では各試合20席ほどの「ラミちゃんシート」をもうけて自身が代表を務める一般社団法人・VAMOS TOGETHERを通じ子どもたちとその家族を招待することを発表。
「野球界では試合の勝敗だけでなく来ていただいた観客の方に楽しんでいただくこと、エンターテイメントが必要なことなど自分自身その大切さを学びました。今日こうして記者会見をさせていただいてメディアの方々にもお越しいただきましたので、メディアの方々にもこのアイスホッケーの普及という部分ではご協力をいただければと思います。とにかくこのアイスホッケーというスポーツをいろんな方々に見ていただきたい。そして選手が夢を持って一生懸命プレーしている姿というのは多くの方々に感動を感じていただけるものだと思います。広報委員長として、エンターテイメントの立場でいろいろなことをサポートできればと考えていますし、とにかくみんながアイスホッケー選手になりたいと夢を持ってもらえるような連盟にしていきたいです」と意気込みを語った。

「広報の充実と情報公開」がこれからの時代には不可欠>IPJの質問は次回詳報します

その後記者会見は、会長以下19名の理事および3名の監事についての紹介。またそのなかから専務理事1名、常務理事3名についての紹介が行われ、メディアからの質疑応答そしてフォトセッションへと会見は進んだ。

質疑応答においては各社から登壇者への質問が飛んだが、IPJからも

・なぜ藤木新会長がこの会見に不在なのか?
・ラミレス新広報委員長の手腕にはとても期待をしているが、いっぽうで現在の広報体制は他競技と比べても非常に貧弱である。その改善はどう行っていくのか?
・今後男女日本代表について国際試合などを日本で行う計画、考えはあるか?
・現在アイスホッケーは非常に危機的状況にあるが、それに対して登壇者のみなさんが何が一番の問題点と感じているのか? また今後どう変えていきたいと考えているのか?

という点について質問を行ったので、改めて次回の記事で詳細をお伝えしたいと考えている。

よりフラットでオープンな議論のできる連盟となれるか? 今後の取り組みを期待する

最後は常務理事も加わって“ゲッツ!!”のポーズで締めた。日ア連は変われるか?

この会見の模様は会見終了後すぐにネットニュースで発信された。IPJが確認する限り最初に記事を出したのはORICONニュースという音楽・芸能系のサイト。そのサイトが発信した記事をスポーツ紙が拾って拡散するなどの動きがあったのは変化してきた現代のメディア事情ならでは。やはりネームバリューのあるラミレス氏=“ラミちゃん”が新広報委員長に就任したというトピックスに対してメディア側のアンテナがしっかりと反応したことがうかがえる。現状のマイナーな地位に甘んじているアイスホッケーがより世の中に知られていくためには、今後もこういった形で少しずつでも話題性ある情報を広報し続けることが必要不可欠だと実感させられた動きだった。

会見後ある関係者に話を聞いたが、この会見の設定自体においても一部の方面からは難色を示された部分もあったという。しかしながら会見日時のタイミングや会見の趣旨・ポイントについて完璧にタイムリーではない部分もあったことは否めないものの、こういった形で日ア連が情報公開の観点からも新しい取り組みを始めたことは素直に「素晴らしいこと」と評価したいと思う。新理事の間ではこれまでよりもスピード感のある連携が行われているとの話も聞いた。
エンターテイメント性をよりアップさせたいというラミレス新広報委員長への期待はもちろんのこと。それに加えて、新体制となった日ア連がよりフラットでオープンな議論ができる組織へ変革するために歩を進めてくれるのであればそれはとても歓迎すべき方向性だと考えている。

IPJでは後日にこの会見についてより詳しくお伝えする予定だ。

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