日本人初のKHLプレイヤー誕生へ。佐藤優がチームと契約
取材・文・撮影:アイスプレスジャパン編集部
全くメジャーマスコミに報道されることはないだろう。今のところは。
しかしながら、「アイスホッケー界で待望されていたとんでもない快挙」が9月初旬、まさに達成されるということをここに声高らかにお伝えしたい。
現地時間8/23、佐藤優選手が自身のツイッターでKHLニジニーノブゴロド・トルピエドと正式に選手契約を交わしたことを発表した。(ニジニーノブゴロドはモスクワから東方約450kmにある都市名。トルピエドはチームの愛称)
Extremely excited to sign my first professional contract with @torpedonn !!
— Yu Sato 佐藤 優 (@yusato_17) August 23, 2022
この度、KHLに所属するTorpedo Nizhny Novgorodと本契約を結びました。
いよいよプロデビューです!日本人初KHLプレーヤーとして、より一層頑張りますので引き続き応援をお願いします! pic.twitter.com/GCotxNkDkv
NHLと双璧をなす、世界トップリーグへの挑戦が始まる
KHL(コンチネンタル・ホッケーリーグ)は有数のアイスホッケー強国であるロシアが、ある意味その威信をかけて2008年に創設したアイスホッケーの国際リーグだ。
かつてはロシア・ベラルーシ・カザフスタン・ラトビア・フィンランド・スロバキア・中国にチームを擁する年度もあったが、現状ではロシアのウクライナ侵攻による政治的状況もあって西側チームの撤退が相次ぎ2022-23シーズンは4ディビジョンに分かれた全22チームで優勝を争う。今季ロシアのほかは中国・カザフスタン・ベラルーシから各1チームが参加する形となっている。
とはいえアイスホッケーの世界では、アメリカ&カナダのチームで構成されるNHL(北米アイスホッケーリーグ)に準ずる規模と地位・実力・人気を誇る。モスクワなどの強豪チームにはNHLで活躍した現役の名選手、またNHLのトップ選手と比べても勝るとも劣らない実力ある若手選手がゴロゴロといるリーグでもある。
NHLと双璧をなす、このKHLという世界トップクラスのリーグで日本人選手がプレーすることになればもちろん歴史上初めてのこととなる。
佐藤優選手は2002年4月17日、埼玉県生まれの現在20歳。
まだまだ伸びしろもたっぷりで、溢れる才能と若さを兼ね備えた存在であると言っても過言ではないだろう。
野球なら「メジャーリーグに一本釣りされた」、という存在
ちょっとムリやりで恐縮ではあるが、野球を例にすれば……
メジャーリーグとほぼ実力的にも規模的にも匹敵するリーグが欧州にあり、そのなかのチームから佐藤選手に声がかけられたということである。
分かりやすい例えとして挙げるならば、カンザスシティ・ロイヤルズとかアリゾナ・ダイヤモンドバックスとかタンパベイ・レイズあたりの球団の新監督から「来季僕が監督をするのだが……、Yu Satoくん。ぜひチームのキーマンとして戦列に加わってほしい」と直々に声が掛かった、というイメージでいていただければ大きく外す事は無いかと思う。
(さらにそのあたりでスゴい事実があるのだが、それはこの後の連載で)
今季KHLでの活躍次第では、佐藤優選手に北米NHLからもこんご声が掛かる可能性もありえる。
今回KHLニジニーノブゴロド・トルピエドとの契約は1年契約であり、来季NHL選手として北米に拠点を移すことも比較的容易だ。
ロシアでその実力を順調に育んできた佐藤選手は、2017-18シーズンにクリリヤ・ソビエトフというロシアでも名門チームのU16チームでプレーし、27試合で14ゴール13アシストを記録している。
その翌シーズン2018-19にはフィンランドにプレーの場を移し、キエッコ・ヴァンターのU17、U18チームで計37試合37ゴール43アシストという驚異的とも言える成績をマーク。
さらに2019-20シーズンにはカナダのQMJHL(ケベックメジャージュニア)というリーグに所属するケベック・ランパーツに所属し活躍を見せる。このリーグはカナダでも将来プロ入りが大きく期待される精鋭が集まるリーグだ。
そして2020-21、21-22シーズンの2年はアメリカのジュニアリーグUSHLのリンカーン・スターズでプレーし、2年合計で94試合13ゴール23アシストの成績、昨季はプレーオフにも出場を果たしている。
USHLもNHLへの登竜門的存在といえるレベルの高いリーグであり、平野裕志朗、三浦優希、佐藤航平といった今北米のプロリーグで活躍している日本人選手も籍を置いたことがあるのはアイスホッケーファンならご存じの通りである。
20歳にして豊かな国際経験の持ち主
20歳ですでに欧州・北米4カ国のチームユニフォームに袖を通しているという国際感覚豊富な佐藤優選手。
佐藤選手は埼玉県生まれではあるが、小学校5年の頃には既に「ロシアにホッケー留学」。地元ロシアの子どもたちとともにアイスホッケーをプレーしただけでなく、保護者の方とともにロシアでしっかりと地に足を付けた生活をしていた経験がある。
もちろん佐藤選手のロシア語は堪能だ。その頃のチームメイトとは今でもロシア語で冗談を言い合える仲だという。聞けば、ロシアはまるで自身の田舎に帰った感覚になるくらい、と馴染んでいるようで、生活面でも支障は無い模様。今季KHLの試合で、水を得た魚のように悠々と氷上を駆け巡る姿が大いに期待される。
KHLの公式英語サイト https://en.khl.ru/ によれば、
KHLは現地9/1にCSKAモスクワ対メタルーグ・マグニトゴルスクの試合で開幕。
今回佐藤優選手が選手契約を果たしたニジニーノブゴロド・トルピエドは、現地9/3にホームゲームで今季開幕を迎える。相手はメタルーグ・マグニトゴルスクだ。
佐藤優選手は既にプレシーズンゲームには出場を果たし、シュートアウトにも起用されるなど戦力として十二分な実力をチームに示している。このままKHL初出場まで順調に駆け抜けてほしいと切に願う。
運命の現地9月3日、佐藤優選手は日本人として史上初となるKHL出場が叶うのか?
刮目してその刻を待ちたい。