アイスバックスがグリッツくだし3年連続の決勝進出。パワープレーで圧倒。絶好調・古橋「明日は“お祭り”ですね」

準決勝後の記者会見は賑やかなものとなった。チームの雰囲気と勢いは最高潮だ(左から清水怜、鈴木健斗キャプテン、古橋真来、大津晃介、大塚一佐)※敬称略

取材・文/アイスプレスジャパン編集部 写真/アイスプレスジャパン編集部

 カテゴリを超えてアイスホッケーの日本一を決める全日本選手権(A)が、18日から長野市のビッグハットで行われている。4強が出そろった20日の準決勝第1試合では、大会2連覇中のH.C.栃木日光アイスバックスが6-3で横浜グリッツをくだし3大会連続の決勝進出を決めた。

「スペシャルプレーに自信あり」。同点とされてもまったく揺らがず

 初の4強入りを果たして勢いに乗る横浜グリッツの抵抗にあいながらも、H.C.栃木日光アイスバックスが堂々3年連続となる決勝進出を果たした。シュート数はアイスバックス38本、グリッツ37本と拮抗していたが、アイスバックスは終始先手を取りながら優勢に試合を展開。第2ピリオド中盤でグリッツ池田涼希に2連続得点を許し一時は3‐3の同点に追いつかれたが、「とにかく今日は常にリードしながら試合を展開できたのが良かった。ペナルティも少なかったことで相手に流れが行きかけた時も持ちこたえることができた。全体としてはゲームプラン通りだった」(藤澤悌史ヘッドコーチ)と慌てる様子がなかった。
 3度目の勝ち越しは第2ピリオド終盤に得たパワープレーのチャンスを逃さず、早く正確なパス回しからゴール左で待ち受けていたキャプテン鈴木健斗に繋いで決めたもの。そのキャプテンのゴールでリードを奪うと、続く第3ピリオドは食い下がるグリッツの攻めをいなしながらバックスが清水怜のゴールで突き放し、さらには相手が6人攻撃に出てきたところで古橋真来がパックを奪いエンプティネットゴールを決めてとどめを刺した。

戦況を冷静に見つめる藤澤ヘッドコーチ(左から2人目)。決勝へ向けて手ごたえは上々のようだ

 藤澤ヘッドコーチ(HC)は「ディフェンスファーストで試合を進めるという当初の計画から外れる部分もあったが、全体的な出来としては80点。決勝では我々アイスバックスのホッケーを100%やるだけです」と、ディフェンス面での課題が多少あったことは認めたものの総合的には良い流れでここまで来ていると手ごたえ。そして藤澤HCと入れ替わりで記者会見場に姿を現したアイスバックスの選手たちは勝利の喜びと充実感をそのまま表現するかのような満面の笑顔を見せつつ、言葉を交わしながら着席。チーム状態は今、最高潮であることはだれの目にも明らかだった。

決勝を前に「自分たちのホッケーができれば必ず勝てる」と、キャプテンは絶対の自信

 試合をほぼ決定づける5点目を奪った清水は3アシストとチャンスメイクにも大きく貢献。「グリッツはカウンターの上手いチームなので、僕らは良い守りから良い攻めに繋げるというプレーを60分間続けられたことが勝利できた大きな要因だと思う。スペシャルプレー(パワープレー)で両セットとも得点できたのでそこが勝利につながったと思います」との彼の言葉通り、今のアイスバックスはパワープレーにかなりの自信を持っていると見ていい。ここまでアジアリーグ22試合通算でのパワープレーゴールパーセンテージ(2分間で得点する確率)は30.67%と6チーム中2位だが、全日本選手権でのパワープレーにおけるパスの早さと正確さ、そしてフィニッシャーの正確なシュートを見る限り、6割以上の確率でパワープレーを成功させているのではないかという錯覚にすら陥る。

第3ピリオド残り1分51秒、清水が5‐3とする決定的なゴールを決めてグリッツを突き放した

 この日、2ゴール3アシストと大暴れした大津晃介も一時同点とされた時に「どちらに転ぶかわからない試合と感じた」とは口にしたものの「フォアチェックが機能していてそこからのゴールもあったし、1試合通してみれば勝つべくして勝った準決勝だった」と振り返る。古橋真来をセンターに右に大津、左に清水の両ウイングで固めたアイスバックスのファーストラインは連携がかなり熟成されてきた。「とにかくパックをゴールへと集めるようなシンプルな攻めができている。先制点もディフェンスのヨーナス・ウイモネンが放ったシュートをゴール前でチップして決めるシンプルな形だった。2つあるパワープレーでのスペシャルセットで両方とも得点が取れるのは大きなアドバンテージとなっている」(清水)

 鈴木健斗キャプテンは決勝へ向け、「3連覇へのプレッシャーなどはなくて、とにかく1試合1試合をどう勝つか? という点にだけフォーカスできている。どこが相手だろうと、僕たちアイスバックスが持つホッケーの質を最大限に発揮できたら間違いなく勝てると思う。勝つ自信しかない」と力強く宣言した。

今日も“古橋節”がさく裂。このままの勢いで決勝戦へ

エンプティネットゴールを決めて笑顔の古橋。決勝では“お祭り男”の本領発揮なるか?

「とにかく明るいアイスバックス」5人衆の会見を締めくくったのは古橋真来だ。今日も“古橋節”がさく裂し、会見場を爆笑の渦に巻き込んだ。ある記者の質問で”今日は2ゴール、まあエンプティネットゴールもありましたけれども……”というくだりに即座に反応。「エンプティネットもちゃんとゴールですから(笑)」とその質問に軽く突っ込みを入れると、「(自身の)1点目は得意な形から自分のスピードでゴール前にパックを運んでいったら相手選手がスティックを払ってゴールに入れてくれた。『自分は持ってるな』と思いましたが、直後にNHKのカメラを探して『自分のゴールですよ』とちゃんとアピールしときました(笑)」と話すと会見場には爆笑がまた広がった。「自分はお祭り男なので。去年もですけど、自分のプレーが良いほうに転がってくれればチームに貢献できるので。明日は”お祭り”ですね」

ビッグハットにはアイスバックスファンが多く詰めかけている。全日本3連覇に向けて頼もしいサポートだ

 昨年優勝したホームリンク・日光霧降のように長野・ビッグハットをオレンジの波で覆いつくせるか? 達成できれば2009~11年の日本製紙クレインズ以来となる“全日本選手権3連覇”に向けてアイスバックスは勢いに乗っている。

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