いざ、全日本(B)へ。愛知・サンエスオルクスが北信越東海ブロック王者に

全日本(B)の出場権を獲得したサンエスオルクスのメンバー。自然と喜びが広がる

取材・文・写真/アイスプレスジャパン編集部

第58回全日本選手権(B)北信越ブロック予選会
<決勝>
サンエスオルクス 5(1-0、3-0、1-2)2 軽井沢ワイルドキャッツ
得点者:【オルクス】金子、土屋、関谷、東山、佐野 【ワイルドキャッツ】坂本、中澤
GK:【オルクス】石川 【ワイルドキャッツ】佐藤
※正規15分3ピリオド制

<1回戦> サンエスオルクス(愛知) 8-3 富山アイススポーツクラブ(富山)
    軽井沢ワイルドキャッツ(長野)2–1 福井アイスホッケークラブ(福井)

4チームによるトーナメントを制して全日本選手権(B)出場権獲得

2024年1月13日(土)、愛知県豊橋市のアクアリーナ豊橋で開催された第58回全日本選手権(B)の北信越ブロック予選会。4チームによるトーナメントを制して全日本選手権(B)出場権をつかんだのはサンエスオルクスだった。

富山アイススポーツクラブとの対戦となった1回戦では、サンエスオルクスが試合開始早々にパワープレーのチャンスを得ると山本健太郎が1:50に先制点をあげる。さらに第1ピリオド4:58に牧義明が追加点をあげてリードを広げるとオルクスはその後も順調に得点を重ね8-3で勝利。全日本(B)出場まであと1勝とする。

富山アイススポーツクラブ(黄色)との対戦は8-3で勝利し決勝へ


さらにブロック予選決勝は同日夜の試合となった。福井アイスホッケークラブを破って勝ち進んだ軽井沢ワイルドキャッツとサンエスオルクスが21:30から全日本選手権出場をかけて対戦した。

決勝戦では、オルクスが得た最初のパワープレーで先制点が生まれる。アタッキングゾーンからのフェイスオフから金子嵩基が左サイドから鮮やかにシュートを決めて先制点を奪う。しかし1回戦からすぐと短い時間での連戦となった軽井沢ワイルドキャッツも奮闘。その疲れをみじんも感じさせない運動量と気迫のプレーでオルクスに対抗する。両チームの気迫がぶつかった決勝戦は1点を争う緊迫した展開となった。

オルクスは金子選手のゴールで先制するもその後試合は拮抗した展開に

1-0とオルクスのリードで始まった第2ピリオドは中盤にオルクスが3点を立て続けにあげて4-0としたが、第3ピリオドに軽井沢ワイルドキャッツも反撃に出る。第3ピリオド7分過ぎにパワープレーからチャンスを得たワイルドキャッツはキャプテン坂本大地がノーアシストで意地の1点を挙げると、その2分後には土屋春輝のアシストから中澤走飛が決めて残り5分で4-2の2点差とし試合は一気に緊張の度合いを増した。
しかし、その後もオルクスのゴールを守る石川駿介が相手の突破からの鋭いシュートを何本も止めるなど安定したゴールテンディングでチームを支え、最後は6人攻撃に出たワイルドキャッツに対してオルクスがエンプティネットゴールを決めて逃げ切り。サンエスオルクスが今年度の北信越東海ブロックのチャンピオンの座を獲得した。

軽井沢ワイルドキャッツ(赤)の攻撃に対してGK石川選手を中心にオルクスが守り切った

石川は試合後のインタビューに「1ピリ終わって1点差と非常に緊張感があった試合でした。その後味方が点数を取ってくれたんですけれども、第3ピリオドには自分の反則(※ゴール裏でのパック取扱い違反)でリズムを悪くしてしまい、そこは今後の改善点だなと思っています」とまずは反省から口にしたが、「とにかく勝てて良かったというのが一番の今の気持ちです。全日本(B)でももっとレベルアップして、とにかくチームが勝てるように頑張ります」と早くも気持ちを次の試合へと向けていた。

チーム新生からわずか8カ月で全日本切符をつかんだサンエスオルクス

「愛知・名古屋から新しいアイスホッケー文化を作る」というかけ声のもと、しっかりとステップを踏んでチームを強化していく、との方針を掲げて今季愛知県リーグの入れ替え戦からスタートしたサンエスオルクス。
この日の勝利で、今季最大の目標である全日本選手権(B)へはプラン通りに1年でたどり着いた形だ。オルクスが当初の構想のとおりここまで順調にステップアップしていることに改めて驚かされたが、この日の戦いぶりでは選手個々の能力の高さが示されていた。あとは、選手同士のコンビネーションをより熟成させていければ全日本(B)でも台風の目になることは確実だろう。

オルクスの梅野宏愛キャプテンは「目標としていたこの大会に勝つことができて、そこは素直に嬉しいですし、自分たちの成長を示すことができたと思っています。いっぽうで決勝は課題も見えた試合だったので、さらに強豪と当たるためにはフィジカル、技術、すべてにおいてレベルアップが必要だと思っています。全員で集まれる時間は少ないですが、選手個々が自主性を持ってしっかり準備していきたいと思います」と語り、全日本(B)での活躍を誓った。

日体大から東京の社会人チームNTTを経てオルクスに加入した佐野育也選手に話を聞くと、「Wヘッダーはここまであまり経験がなく、体力面が持つか心配だった部分はありましたが、自分的にはよく動けてチームに貢献できたと思います」と笑顔で答えてくれた。「名古屋に来たのは、オルクスがアイスホッケーでこの地域を盛り上げたいというコンセプトを掲げているのでそれに賛同した部分と、1人のアイスマンとして日本のアイスホッケー界全体をもっと盛り上げたい、という思いで加わりました。全日本(B)では東京や関東の社会人チームとまた戦えますし、強いチームと当たるのがとても楽しみです」と岡山での試合に早くも思いを馳せていた。

決勝戦・試合残り2分でショートハンドのピンチ、橘川GM(左から2人目)が選手に指示を出す

全日本選手権(B)は岡山県倉敷市のヘルスピア倉敷と岡山市の岡山国際スケートリンクを舞台に2024年2月29日から3月3日の日程で行われる。出場チームは 16 チーム。北海道から4、東北3、関東2、東京2、北信越・東海1、 近畿1、中四国ブロック1、九州1に加えて開催地枠で1。トーナメントで優勝が争われる。

地域にある数多くの企業との結びつきを深めながら「地域企業が集まり支える実業団」という新しいデュアルキャリアの形を掲げるサンエスオルクス。全日本(B)で好成績を挙げることができれば地域からの注目度もさらに増し、支援の輪も広がるといった好循環が期待できるのではないだろうか。

試合後、全日本選手権(B)出場を決めた感想を問われたオルクス橘川弘樹GMは「まずは一安心、というのが正直なところです。ワイルドキャッツさんがタイトな試合日程のなかでも非常にアグレッシブで強いプレーをしてきましたので苦戦をしました。北信越のレベルは高かったです」と試合を振りかえりつつ、「全日本(B)までにあと数名登録をかけてチームを強化していきます。全日本(A)に出場した社会人チームに勝つためにも2月に合宿をしてしっかりとレベルアップをしていきたい」とこの先を見据える。

来期以降のチームの進路についてトップリーグへの加入といった方向に舵を切るのか? も含め、アイスホッケーファンから注目されているサンエスオルクス。しかし来期以降の話をする前に、まずは全日本選手権(B)という場で実力を証明することによってチーム作りへ弾みをつけ、着実な地歩を固めたいところだ。

全国から社会人の強豪が集まるこの大会でサンエスオルクスはどんなパフォーマンスを見せてくれるのか、いっぽう北海道勢を筆頭とする全日本常連の社会人チームがその挑戦をどう跳ね返すのか? 

例年以上に全日本選手権(B)の戦いに注目が集まることは確実だ。

Release: