【全日本選手権】初日PickUP GAME①:DYNAX鈴木雄大がファンに感謝のアシストを披露。“凱旋試合”は敗戦も鮮烈な印象残す
取材・文/アイスプレスジャパン編集部 写真/編集部
全日本選手権が開幕。初日の注目ゲームを紹介
日光で開幕した第92回全日本選手権(A)。アジアリーグ勢4、社会人4、学生4チームの計12チームがトーナメントで対戦するこの大会。12/5(木)の初日は学生と社会人がぶつかるカード4試合が組まれたが、その中で2試合をPickUP GAMEとしてご紹介する。
その1試合目は、昨季まで栃木日光アイスバックスでプレーした鈴木雄大選手が社会人1位・DYNAX(ダイナックス)の一員として“凱旋”した試合だ。日光霧降アイスアリーナに彼のファンが多く集まりスタンドから声援を送ったゲームは、序盤から第2ピリオドにかけて両者一進一退の接戦となった。
試合後の選手の声を交えて、この試合を振り返りたい。
第92回全日本選手権(A)初日
12月5日(木) @栃木・日光霧降アイスアリーナ
中央大学[関東大学2位] 6(2-1、1-1、3-0)2 DYNAX[社会人1位]
ゴール:【中央】杉江、荒木、角丸、夏野、小岩、下坪 【DYNAX】今、今村
GK:【中央】川合 【DYNAX】髙橋
シュート数:【中央】29(7、10、12) 【DYNAX】39(11、23、5)
鈴木雄大のシュートをきっかけに同点に追いつくDYNAX
試合序盤、運動量を利して主導権を握ったのは中央大だった。第1ピリオド、杉江真宙のゴールで先制すると、8分すぎにはスピードを生かした攻撃でDYNAX守備陣によるマークのズレをうまく誘発し、最後は荒木霊士がゴール正面から豪快に決めて2-0。社会人の強豪からリードを奪った。
いっぽう、DYNAXはパワープレーでの攻撃から徐々にリズムを取り戻す。社会人らしい落ち着いたパス交換からゴールへの包囲網を狭めて最後は鋭いシュートを放って中央大のゴールに迫る。DYNAXは久米誠斗がスクリーンとなるなか今 大和のチップからのゴールで1点を返した後、第2ピリオドは中央大がペナルティーを多く取られたこともあってパワープレーで攻め込む時間帯が続く。
そして迎えた第2ピリオド15分過ぎ。パワープレーのチャンスをDYNAXはついにものにする。
鈴木雄大がブルーライン近くから鋭いシュートを放つとゴール前で府中祐也がうまくスクリーンとなり相手GKのリバウンドを誘発。最後は今村健太朗が右サイドからそのリバウンドで出たパックを押し込んで2-2の同点に追いつく。その瞬間、観客席は鈴木雄大のプレーを目の当たりにし湧きに湧いた。
鈴木雄大自身は「パワープレーで、1番最後に遅れてエントリーする形でアタッキングゾーンに入ってシュートコースを狙ったところで府中(祐也)がよく僕のことを見てくれていてスクリーンに入って。僕はこのシュート一発で決めるつもりで打ったんですが、最初はGKにキャッチされたなとも思いました。その後のリバウンドで歓声から決まったのが分かって。最後は僕もパックが見えなかったんですが、今村がよく決めてくれました」
しかしDYNAXが同点に追いついたそのすぐあと、中央大はカウンターから相手陣に攻め込むタイミングで丁度ペナルティーが空けた堤虎太朗も攻撃参加。ここで数的優位を作った中央大がすぐさま3-2と勝ち越しに成功。第2ピリオド終了間際に出たこのプレーがその後の試合展開に大きな影響を与えた。
第2ピリオド終盤の失点が明暗を分けた
再度中央大学に勝ち越しを許したDYNAXは第3ピリオド、「やや足が止まったことは否めなかった」と大澤洋介監督も振り返ったとおり、若さと体力で押す中央大学の運動量に対し徐々に走り負けて劣勢を強いられる。そんななかでもGK高橋勇海を中心に身体を張ってDYNAXは粘り強く守っていたが、スピードに乗ったシュートを浴びせてそのリバウンドを叩くというシンプルだが効果的な攻撃を中央大が選択したこともあり、その勢いにあらがえず4分、5分と立て続けに失点を喫した。
中央大は第3ピリオドに見事にチームの結束を立て直した。「普段試合をしている東京(の関東大学リーグ)でのジャッジと合わず第2ピリオドはペナルティーを取られることが多かったが、そこを各選手がしっかり合わせて対応することができた」と八戸了監督が振り返ったように、レフェリングの基準に合わせてプレーを修正しペナルティーの数を減らしたこともあってDYNAXにチャンスを許さず。「このレフェリーの基準でインカレでも判定されると思うので、そこに上手く合わせることが出来たのは今後に向けても大きい」と八戸監督は収穫を得たようだ。
最後は6人攻撃に出たDYNAXの反撃に対して下坪久晃がパスカットからエンプティネットゴールを決めて勝負あり。最終的には6-3で中央大が勝利し、準々決勝進出を決めた。
「日光の雰囲気を楽しめました」。会場には背番号「38」のユニフォームや横断幕が
“凱旋試合”で勝利を挙げることはできなかったが、鈴木雄大は日光で久しぶりに戦ったこの試合について「とにかく楽しもうという気持ちで試合に臨みましたが、アイスバックス時代のファンのかたがたくさんスタンドにいらしていて、すごく声をかけてくれたり、横断幕とかユニフォームとかを飾ってくれていたのもとても嬉しかった。引退は本当にしていないですが、今日は『霧降からの引退なのかな』という気持ちで頑張っていました」と感謝の気持ちを語った。「大学生は体力はあるけれども、ちょっとしたことはやっぱり社会人の方が技術もあるので、そこで良い勝負に持って行けたことは良かった。第1ピリオドはアンラッキーな失点が2本ありましたが、そこからよくじわじわと巻き返せたと思います」。
この夏、熱心にDYNAX入りを願って入団に至るきっかけを作った今村は、鈴木のアシストから自身のゴールに繋がったことについて「点数が取れない苦しい展開の中、あそこで得点を奪うことが出来たのは本当に嬉しかったです。本当なら僕が(トップリーガーとして)オレンジのユニフォームを着て一緒に戦いたかったですが、今こうやって一緒に戦えていることでとても素晴らしい経験が積めていると思います」とそのシーンを振り返った。
DYNAXが1回戦で姿を消すことは非常に残念だが、この後もチームとしてJ-iceNorthのリーグ戦、そして来年2月末に行われる社会人&クラブチームの日本一を決める全日本選手権(B)では連覇が懸かっている。
「日光での全日本選手権、その雰囲気を充分に味わえました」と鈴木。率直にこの60分間どうでしたか?、と問われると「本当に楽しい試合でした」。社会人という新たなステージで鈴木雄大はこれからも素晴らしいプレーを見せてくれることは間違いないだろう。この先のシーズン、J-iceNorthや全日本(B)でチームに良い影響をもたらし、勝利へと導いていく彼のプレーにますますの注目をしていきたい。