「連敗は絶対に許されない」北京の意地が最後に炸裂
ホウ・ユーヤンの同点弾で北京ライオンズが連敗を回避

身を翻してゴールを狙うワイルズ・越後。この試合はゴール前でのエキサイティングなシーンが頻発した

取材・文・写真/アイスプレスジャパン編集部

アイスホッケーIJリーグ 2024イノーギュラルシーズン 第10戦
8月17日(土)19:00試合開始 @名古屋・邦和みなとスポーツ&カルチャー
 観衆:310人

北京京獅(北京ライオンズ) 3(0-1、2-0、1-2)3 東京ワイルズ ※北京ホームゲーム
ゴール:【北京】ジャン・ポンフェイ、ホウ・ユーヤンx2 【東京】上野、青山、荒井
GK:【北京】スウン・ザハウ 【東京】脇本

「俺たちは勝つために日本に来ている」そんな強い意思が伝わってくるかのような試合だった。

前日の試合と同様に激しいぶつかり合いが随所に見られたこの日のゲーム。東京ワイルズが先行する形で得点を重ねて終始試合をリードする展開だったが、北京ライオンズは前日の反省を踏まえてプレーの精度を上げており、ファンにとっては迫力ある肉弾戦もテクニカルな攻防もともに堪能できる中身の濃い試合となった。

開始前に円陣を組む北京のメンバー。前日の初黒星というショックを乗り越えて中身の濃い試合を展開した

東京ワイルズは開始早々に上野鉄平がゴールを決めて優勢に試合を進めるも、第2ピリオドに北京ライオンズが2点を奪い返して逆転した。

ところが第3ピリオドには東京ワイルズの青山晃大が北京のディフェンス陣を切り裂くゴールで追いつくと、中盤にはパワープレーで攻撃の形を作り最後は新井詠才が左サイドからゴールを撃ち抜き再逆転に成功。試合残り約4分で3-2と1点をリードする。

東京ワイルズはこの青山のゴールで同点とすると
新井(白13番)がこのシュートを決めて3-2と逆転に成功する
これで3-2。逆転に沸く東京ワイルズの選手たち

リーグのトップを走る北京ライオンズから東京ワイルズが逆転で2連勝を奪い取るかに見えたが、北京の選手たちは最後の最後まで試合をあきらめていなかった。

第3ピリオドのこり2分を切った土壇場で北京はパワープレーのチャンスを得ると、ここで集中力を発揮。6人攻撃はまだ行わず、通常のパワープレーからパックを外側で回して段々と東京ワイルズが守るボックスのフォーメーションを小さくすると、最後は左サイドのサークル付近からホウ・ユーヤンが強烈なスラップショットを一閃。

同点弾を決め、吠えるホウ・ユーヤン(左から2人目)

放たれたパックはあっという間にゴールネットに突き刺さり、土壇場の土壇場で北京ライオンズはこの試合を引き分けに持ち込み、2連敗という不名誉な事態を回避した。

「敗戦の悔しさを晴らす意味でも今日は勝つしかない」勝負にこだわる北京の選手たち

2連敗を免れ、試合直後は少し安堵の表情を見せていた北京ライオンズの選手たちだったが、試合後に話を聞いてみると、やはり前日の敗戦を受けて、この試合に勝ちきれなかったことは相当に悔しかったようだ。

同点ゴールを決めた直後、ホウ・ユーヤン(右)はGKスウン・ザハウに駆け寄り奮闘をねぎらう

殊勲の同点弾を決めた北京のホウ・ユーヤンにマイクを向けると、真っ先に出たのは反省の言葉だった。「引き分けという結果には持っていくことが出来ましたが、もっと良い結果を出せる試合だったと思います。私たちのチームの目標は引き分けなどではなく勝つという1点に集中していました。昨日の敗戦の悔しさを晴らす意味でも今日は勝つしかないという気持ちで全員がこの試合に臨んでいたと思います」とかなり強い決意でこの試合に臨んでいたことを教えてくれた。
「昨日の敗戦のあと、各ポジションに分かれてミーティングを行い、ミスした部分や良くなかった部分をお互いに話し合って改善してきました。その取り組みが今日の試合に繋がったと思います。確かに今日の試合はその点は改善できました」と話しつつも、とにかく勝ちたかったという気持ちが表情ににじむ。最後のシュートに対してもかなりストイックな言葉が返ってきた。

「あのシュートを相手のブロックもされずに決められたことは普段の練習の成果そのものだと思います。何千回も何万回も練習で放ったシュートが、今日のあの1点に繋がった。あの同点ゴールを奪えたことは選手としてもとても嬉しいですし、決まった瞬間はテンションもぐっと上がりました」と語るとようやく表情を緩めたホウ・ユーヤン。インタビューの最後には「次のIJの試合も楽しみですし、良い内容を名古屋のみなさんに披露できると思います。ぜひ応援してください」と爽やかな笑顔を見せてくれた。

東京ワイルズと北京ライオンズ。レベルの高い名勝負はこれからも続く

彼の言葉に象徴されるように、北京は相当なレベルで勝敗にこだわってこのIJリーグに参戦していることがわかる。いっぽうで、東京ワイルズも2試合続けて北京を相手に内容の濃い試合を繰り広げたことと得点を積み重ねられたことは大いに自信となったはずだ。IJリーグに北京が参戦していることによって、日本の2チームにとっては厳しくも有意義な試合となっている。

北京は同点とした後も猛攻を仕掛けたがワイルズが守り切った。両者のプライドをかけた激戦はこれからも続く

トップを走る北京に対してワイルズとオルクスが食らいつき、どれくらい勝利という結果を手にすることが出来るか? それが実現した時にこのリーグはまた1つ階段を上がることだろう。

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