「父さんを見て憧れていた」日本代表に帰ってきた“キャラー”
苫小牧を去って9年、父子で大喜び「この話ばっかり」

取材・文/今井豊蔵 写真/今井豊蔵
The Asia Classic Ice Hockey~日韓代表戦 2026~
第1戦 4/18 (土) @ダイドードリンコアイスアリーナ 観衆:1574人
日本 2(1‐0、0-1 、0-0、OT 0-0、PSS1-0)1 韓国
ゴール:【日本】髙木、小林(GWS)/【韓国】オ・インギョ
GK:【日本】大塚/【韓国】イ・ヨンスン
第2戦 4/19(日) @KOSĒ新横浜スケートセンター 観衆:1298人
日本 6(2-0、1-1、 3-1)2 韓国
ゴール:【日本】磯谷、小林x2、三浦、榛澤、キャラー/【韓国】キム・シファンx2
GK:【日本】冨田⇒成澤/【韓国】イ・ヨンスン
FWジョーダン・キャラーの父は、元日本代表アーロン・キャラー
懐かしい名前がジャパンに帰ってきた。5月2日にポーランドで開幕する世界選手権ディビジョン1A(2部相当)の日本代表に名を連ねたFWジョーダン・キャラー(Jordan KELLER)は、カナダのジュニアリーグでプレーする21歳。父は雪印や王子製紙でプレーしたDFで、日本代表でも活躍したDFアーロン・キャラー(Aaron KELLER)だ。初めて袖を通した日本代表のジャージをどう感じているのか? 流暢な日本語で答えてくれた。
「もう結構忘れてしまったんですけど、いいですか?」
18日に東京・東伏見で行われた韓国との親善試合後、キャラーに日本語でインタビューしたいと申し入れると、綺麗な日本語でこう返してくれた。父は日系カナダ人、母は日本人。苫小牧でアイスホッケーを始め、小学校時代には日本一に輝いたこともある。2017年まで苫小牧に住み、日本のトッププレーヤーを間近に見ながら育った。
今季は北米ジュニアリーグWHLの、父もスタッフに名を連ねるカムループス・ブレイザーズでプレー。53試合で27G28A、チーム4位の55ポイントを挙げた。すでにNHLのドラフト指名を受けた選手に伍して、数字を残してきた。
そんなキャラーは、ずっと日本代表の“アンテナ”にかかっている選手だった。「コーチが僕のVTRとかを見て、毎日カナダで練習して、うまくなっていると思ってくれたみたいです」。昨夏、苫小牧で行われたキャンプに初めて参加。力を認められ、今回初めて世界選手権の代表に名を連ねた。

「すごくうれしいです。父さんを見て、日本代表に憧れていたので。小さい頃から夢見ていたチームに入れたのは信じられません」
そして、本人よりも父が大喜びした。「父さんとも、代表に行くと決まってから3週間くらいこの話ばっかりでした。僕より楽しみにしているかもしれません」。カナダから、ネット中継の日韓戦を視聴。試合後には連絡を取り合っていたのだという。19日に新横浜で行われた第2戦ではゴールも決めた。キャラーが目指すのはどんな選手なのか?
「僕はシュートよりパスの選手だと思っています。もっとシュートしなきゃとよく言われるんですけど……。アタッキングゾーンでプレーして持ち味を出せればと思っています」。一方で守りにも手を抜かない。攻守のバランスが取れたプレーヤーだ。一生懸命守るのが印象的だと伝えると「お父さんはDFだったので、よく言われます」と笑う。
日本代表スタッフには父のチームメートがズラリ。「本当に面白い」
日本の小学生チームでプレーし、中学からは本場カナダ。2つの国を比べた時、何が違うのか。
「一番はスピードだと思います。それもスケーティングが速いというだけじゃなく、すぐ次のプレーに移ろうとするときのスピード。大きいし、ホッケーの頭がいいんですよね」と即答だ。身長180センチ、体重80キロのすらっとした体型。もっと大きな選手がゴロゴロしている国で戦うには、ホッケーIQも磨く必要があった。
そんな中で憧れた選手が、NHLメイプルリーフスで主将も務めたFWジョン・タバレスだ。「さっきの話のように頭が良くて、スキルもあるプレーヤー。ハンドリングもすごくてマネしたいことばかりです。あと僕はスケーティングが得意じゃなくて……。タバレスもそうだったと聞いたことがあるのも理由です。それでも、頭の良さであそこまでなれるのかと」。
今回の日本代表は、ジャロッド・スカルディ監督をはじめ、山中武司コーチ、春名真仁コーチ、外崎慶コーチと王子製紙に在籍経験のある選手が揃う。つまり、父のチームメートだった選手ばかりだ。「みんな、父さんと一緒にプレーしていたという話をしてくれます。本当に面白いなと思います」。父が結んでくれた縁に、必ず恩返しする。
「このチャンスは絶対に活かしたい。呼んでくれたコーチにもスタッフにも感謝しています」

父の現役時代に王子イーグルスの選手、監督だった山中コーチはキャラーに「キャラも良くて、馴染めていると思いますよ。お父さんとはポジションが違うので単純には比べられませんが、一つのことを責任持ってやってくれるのは同じ。あと負けず嫌いなのもそうですね」と暖かい視線を送る。
日本代表は今回、大幅に若返った。五輪を中心に回るのが世界のアイスホッケー界。このタイミングの世界選手権は、次の五輪に向けて走り出すスタートともなる。山中コーチは「確かに五輪シーズンの終わりですけど、我々は予選で負けた1年前に終わっているわけです。なので昨年からU20、U18で戦ってきた選手を少しずつ上げてきました。海外でやっている選手も入れて」とこの若返りの狙いを口にする。
そこに、どんな選手を求めるのかも明確だ。「うまい、魅せるというプレーじゃなく、相手が嫌なところにどんどん入っていく。国際大会で勝つために必要なのはそういう部分ですから。監督はヤスリのような選手と表現するんですがね」。本場で腕と感覚を磨いたキャラーも、その条件を満たすと認められた選手だ。来季からはNCAAに所属する大学への進学が決まっている。日本代表に、世界の風を吹かせる選手になる。
