「ヤスリのような選手に」平野裕志朗と三浦優希が持ち込んだ本場の風
華麗さよりも必要なこと「投資なんです」

取材・文/今井豊蔵 写真/今井豊蔵、アイスプレスジャパン編集部

The Asia Classic Ice Hockey~日韓代表戦 2026~
第1戦 4/18 (土) @ダイドードリンコアイスアリーナ 観衆:1574人
日本 2(1-0、0-1 、0-0、OT 0-0、PSS1-0)1 韓国
ゴール:【日本】髙木、小林(GWS)/【韓国】オ・インギョ
GK:【日本】大塚/【韓国】イ・ヨンスン

第2戦 4/19(日) @KOSĒ新横浜スケートセンター 観衆:1298人
日本 6(2-0、1-1、 3-1)2 韓国
ゴール:【日本】磯谷、小林x2、三浦、榛澤、キャラー/【韓国】キム・シファンx2
GK:【日本】冨田⇒成澤/【韓国】イ・ヨンスン

平野裕志朗がスマホケースに忍ばせたもの……監督からのメッセージ

 アイスホッケー男子日本代表は、5月2日にポーランドで開幕する世界選手権ディビジョン1A(2部相当)を戦う。この代表でチームの中心となるのが、FW平野裕志朗、FW三浦優希という海外挑戦を続けてきた2人の選手だ。20歳そこそこでフル代表入りした2人も、今や中堅からベテランの域に入った。今回のチームにどんな変化を与えてくれるのか?

 4月18、19日に東京・東伏見と新横浜で行われた韓国との親善試合に日本は2連勝した。初戦は1-1の同点で60分を終え、延長とPSSまで戦い勝利をもぎ取った。2日目は6-2での快勝だ。今回のチーム招集に当たり、代表のスタッフが求めた資質は明確だ。山中武司コーチは言う。

「うまいとか、魅せるとかそういうものはいらないんです。相手が嫌なところにどんどん入るとか、体を張って守れないと勝てないのが国際大会。監督はヤスリのような選手、と言うんですが、そういうプレーをできる選手ですよね」

 ジャロッド・スカルディ監督は、事前に苫小牧で行われた合宿で選手と面談を行った。その際一人一人に、言葉とともに小さな紙やすりを配り、そのことを刻み付けたのだという。平野は「僕は携帯のケースに入れていますよ」と言って、その意味をかみ砕いた。

「全員が泥臭くやれば、どこかでその犠牲がきっかけになってチャンスが来るというのは間違いなくあります。そういったホッケーを目指すコーチがいるのであれば、自分たちはそれについていかなければいけない。あのようなものを選手に渡して思い出させるというのは、すごく良いアイデアだと思いました」

 今季はドイツDELの名門、デュッセルドルフに移籍。現在2部に落ちているチームを引っ張った。40試合で20G26A。46ポイントはチーム3位の数字だ。ただ2月の試合で怪我をして、約2か月の欠場を強いられた。背骨が2か所折れてしまう重症だったという。実に8度も画像を撮り、慎重に治療を進めた。

「相手にヒットされてバランスを崩して、そのまま背中から落ちてしまって。それで8週間ちょっとプレーできなくて、代表合宿が久々の氷上でした。コンディションはまだまだですけど、いつホッケーができなくなるかわからないという恐怖をすごく学んだ年でした」

 それでも、一たび試合となれば常に本気なのが平野だ。FW中島照人、磯谷奏汰とのトップラインは破壊力抜群。チェックに行った際の音は、アジアリーグではなかなか聞けないものだった。「もう、代表でもだいぶ年齢は上のほうになっちゃいましたけど、自分はプレー出来る限りはずっと日本代表にいたいと思っています」。強国での経験を、悲願のトップディビジョン昇格につなげようと奮闘する。

三浦優希が伝える…チェックをやり切る意味「投資なんです」

もう一人、日本代表にホッケー強国の空気を持ち込んでいるのがFW三浦優希だ。東京・早実高から海外に飛び出し、チェコ、米国と続いた挑戦はもう10年を超える。今季はECHLのアイオワ・ハートランダーズで5年目のシーズンを迎え、66試合で8G14A、22ポイントを挙げた。

 この日韓戦は、ECHLのレギュラーシーズン最終節と被った。今回三浦はチームに願い出て、1週間早くチームを離れた。自身の生まれ育った東京で、日本代表が試合をすることはめったにない。この機会を逃すわけにはいかないと考えたのだ。新横浜での第2戦ではゴールも決めた。「ゴールは裕志朗さんがいいパスをくれたのでフィニッシュするだけでしたけど、めちゃくちゃ気持ちよかったです」と笑顔がはじけた。

 三浦が、初めて年齢制限のない代表に選ばれたのが2016-17シーズン。もう10年目になる。今回の代表でも「(年齢は)結構上のほうですね」という存在だ。後輩に、背中で示す立場にもなった。「ハードワークを徹底するとか、フォアチェックで守りにも貢献するとか、そういうところが自分の役割だと思っています。親善試合とか全く考えません。普段と同じ熱量でやることが大切なので」。こちらも平野に負けず劣らずの本気度だ。そこには米国で叩き込まれた思想がある。

「チェックは投資だと、はっきり言われるんです。フォアチェックはインベストメントだと」。どういうことか。

「フォアチェックやフィニッシュチェックまでしっかりやっていると、その場でパックを奪えなくても、例えば第3ピリオドになってから相手の選手がいやがって、パックを取れることがある。あとで帰ってくるという意味で投資なんです」

 三浦は19歳だった2015-16シーズンに、チェコのジュニアリーグで得点王を獲得するなど活躍。翌シーズンから北米にプレーの場を移した。ジュニアから大学、プロと成長する中で「自分よりもスキルが高い選手がいる中で、どうすれば貢献できるのか」を考えさせられた。チェックもその一つ。手を抜かないプレーで仲間から信頼され、昨季は所属のECHLアイオワで、日本人ながら主将を務めたほどだ。

 5年間プレーしてきたアイオワは、来季のリーグ参戦を見合わせるとすでに発表している。選手たちにも「発表当日に聞かされたんです」と寝耳に水だった。「どこかのタイミングで来るんじゃないかと思っていた部分もあるんですけど、5年間お世話になったので……。チームを離れるあいさつをしたときはちょっと感傷的になってしまいました。アイオワは第2のホームだと思っています」。

 アイオワの活動休止により、来季の去就は現時点で白紙。長年親しまれたコミュニティーに別れを告げ、まずは日本代表としてトップディビジョン昇格という大きな目標に挑む。その活躍が、新たな挑戦への切符となるはずだ。

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