「まさに今、やるべき時だった」14年ぶり日韓戦を呼びかけた韓国の収穫
連敗しても「今が過渡期」

取材・文/今井豊蔵 写真/今井豊蔵、アイスプレスジャパン編集部
The Asia Classic Ice Hockey~日韓代表戦 2026~
第1戦 4/18 (土) @ダイドードリンコアイスアリーナ 観衆:1574人
日本 2(1-0、0-1 、0-0、OT 0-0、PSS1-0)1 韓国
ゴール:【日本】髙木、小林(GWS)/【韓国】オ・インギョ
GK:【日本】大塚/【韓国】イ・ヨンスン
第2戦 4/19(日) @KOSĒ新横浜スケートセンター 観衆:1298人
日本 6(2-0、1-1、 3-1)2 韓国
ゴール:【日本】磯谷、小林x2、三浦、榛澤、キャラー/【韓国】キム・シファンx2
GK:【日本】冨田⇒成澤/【韓国】イ・ヨンスン
日韓戦の開催を呼びかけた韓国……連敗して見えたこと

アイスホッケー男子日本代表は4月18、19日と、韓国代表との親善試合を首都圏で戦った。日韓戦が独立した興行として行われるのは、2012年4月以来14年ぶりだ。しかも今回は、韓国の呼びかけで組まれた。韓国側の狙いはどこにあり、どんな収穫があったのか。
韓国は4月29日から中国で、世界選手権ディビジョンIB(3部相当)を戦う。自国開催の2018ピョンチャン(平昌)五輪への強化が進む中で、近年は日本よりも世界ランキングが高い時代が続いた。2017年の世界選手権で自力でのトップディビジョン(1部)昇格を果たし、史上初めて世界ランキングで日本を抜いた。ただ2024年に日本と同じディビジョン1Aを戦い、最下位となって降格。世界ランクも日本に再逆転され、今に至る。現在は日本が20位、韓国は23位だ。
現在の韓国代表を率いるキム・ウジェ監督は46歳。アニャン・ハルラ(現HLアニャン)でDFとして活躍し、韓国が徐々に強くなる過程を体験してきた人物だ。2012-13シーズン限りで現役引退し、その後は指導者の道に進んだ。今回の親善試合で韓国は2連敗。初戦は1-1の同点から延長、PSS戦の末に惜敗した。第2戦は2-6で完敗。内容をどう見たのか。

「日本は自分たちの長所を生かしてきましたね。とても速いフォアチェックから攻守の切り替えにつなげるチームです。我々は、1試合目はある程度対応できましたが、2戦目はちょっと及ばなかった」。特に2戦目の開始1分23秒、FW磯谷奏汰のゴールで先制されたのを悔やむ。
「雰囲気が少し変わってしまいましたね。途中でリードを許してしまうと雰囲気が沈んでしまい、それを跳ね返せなかったのが残念でした」。大学生を5人含む若い韓国代表は、不利な流れを跳ね返す精神力と技術がまだなかった。キム・ウジェ監督も「今の韓国代表はまだ、過渡期にあると言えます。いかに迅速に入れ替えていくか努力しているところ」と認める。
韓国が自国開催枠で出場したピョンチャン五輪は、もう8年も前になる。今回の日韓戦に出場した選手の中で、五輪のリンクに立ったのはFWでキム・サンウク、アン・ジニ、シン・サンフンの3人。DFはソン・ヒョンチョルだけだ。
指揮官も「ピョンチャン五輪に出場した選手はもう40歳近くなっている。プレーに老練な面はありますが、現代ホッケーで求められる体力やスピードという面ではどんどん難しくなってしまう」という。理想とするのは攻守の転換が速く、正確にプレーを遂行するチーム。スピードと、その土台になるフィジカルを鍛えると同時に、世代間に横たわる経験の断層を埋めなければならない。
そのためにも、この日韓戦のような舞台が必要だという。「ベテランが試合や練習で経験を伝えること。若い選手が自力でやろうとすれば時間がかかる部分を、家庭教師のような感じで伝えていく感じですね」。
ピョンチャン組のアン・ジニが見た日韓若手選手の違い

選手も心得ている。35歳のベテランFWアン・ジニはピョンチャン五輪に出場し、フィンランド戦ではゴールを決めた。アジアの選手としては希少価値の経験を伝えようとするとき、日韓の違いを感じるという。所属のHLアニャンで、3人の日本人選手と日常的に接して見えたことだ。
「日本の選手は、経験不足を感じさせないような振る舞いをすぐに身につけるんですよ。HLアニャンでのチカラ(FW榛澤力)やタケヤ(DF竹谷莉央人)もそうなんですが、日本の選手は僕たちよりも基本的な部分が、よりしっかりできているんです」
韓国の選手は、ジュニアや学生の選手がシニア、プロの世界に適応するときに少し時間がかかる傾向があるという。それは滑る、当たる、シュートを打つという能力より、試合のマネジメントでより顕著だと感じている。
「僕たちがピョンチャン五輪に出た時は、あまりに強いチームと対戦していたので、どうしても試合に出るためにはリスクを冒さないようにしなければならなかった。今の若い選手にはそういう経験がないので、伝えていきたいと思っています。若手はみんなスケーティングはうまいしパワーもあるし、パックをキープすることもできます。でも判断の積み重ねやゲームマネジメントで、試合の結果は大きく変わってしまうんです」

日韓それぞれが、世界選手権直前というタイミングで実現したこの試み。今回は韓国が参加するディビジョンIBが中国開催で、アジアから移動する必要がない日程も実現を後押しした。
アン・ジニはこの試合の意義を「日本は何といっても、今は僕たちより上のディビジョンにいますから。対戦することで、僕らが自分たちのディビジョンでどう戦えばいいのかという基準をつかめた気がします」と口にする。さらに、普段アジアリーグで対戦している日本の選手が、代表となるとまた変わった色を見せるのも楽しいという。
「日本代表との戦いで、韓国の若い選手もレベルの高い試合を経験できたのは本当にいいことだと思います。成長の助けになりますし、僕はチームメートのユウセイ(DF大津夕聖)やチカラと対戦するのも不思議な感じがしましたね。練習ではバトルもありますが、それとは全然違うので」

世界のホッケー大国は北米と欧州に集中し、国際大会はどうしてもそちらが中心となる。東アジアで隣り合う日本と韓国は、手を携えて世界で生き残る方法を探すしかない。その中で日韓戦も、注目されるコンテンツとして大きく成長させていく必要がある。キム・ウジェ監督は言う。
「今もアジアリーグは維持されていますが、もっと活性化させる必要があります。『国代表の対抗戦』となれば、お互いの国民も関心を持ってくれますよね。そうして関心を集め、発展していくきっかけにしないといけません。今は非常に重要な局面ですし、日韓戦はまさに今がやるべき時期だった。両国が協力して、男子アイスホッケーに熱を起こさなければならないと考えています」
世界選手権ディビジョンIB 日程 (中国・シェンチェン)
4/29(水)13:30 スペイン (27位)vs エストニア(26位)
17:00 オランダ (28位)vs ルーマニア(21位)
20:30 中国 (25位)vs 韓国(23位)
4/30(木)13:30 エストニア vs オランダ
17:00 韓国 vs スペイン
20:30 中国 vs ルーマニア
5/2(土) 13:30 ルーマニア vs スペイン
17:00 韓国 vs エストニア
20:30 オランダ vs 中国
5/3(日) 13:30 エストニア vs ルーマニア
17:00 韓国 vs オランダ
20:30 中国 vs スペイン
5/5(月) 13:30 ルーマニア vs 韓国
17:00 スペイン vs オランダ
20:30 エストニア vs 中国
※試合はすべて日本時間(現地は-1時間)
⇒優勝国がIA昇格、最下位国がIIA降格
