デュアルキャリア、首都圏・名古屋圏での試合開催……選手が輝ける場を作りたい
取材・文・写真/アイスプレスジャパン編集部
北海道ワイルズの動向について、11/20に名古屋で北海道ワイルズ・岡本博司新代表にインタビューした記事についての後編をお届けする。後編では、チームの本拠地についてどうしたいのか? 岡本新代表に単刀直入に聞いた。
あくまで釧路に残りたい。しかし……
IPJ 北海道ワイルズは、あくまで釧路でのチーム作りを進めて行くということでしょうか?
岡本 まずは釧路で、と思っています、もちろん。選手たちも釧路がいい。ただ、釧路が良いけれども、経営的判断をくだしたうえで、選手の意向も聞いて「釧路を出ることもやむなし」となる可能性もゼロではない。スポーツ業界のフロントなら、みんな思いますよね、この状態ですと。そのような状況の中でもやっぱり釧路にチームを残したいとは思っている。実際代表が変わるっていうふうに発表したのは先週くらいですけれども(※インタビュー日は11/20)、市役所には10月のホームゲームあたりから話はしていました。
IPJ 北海道ワイルズは岡本新代表はじめスポンサー費でまず1年目を持たせている。来季、もしアジアリーグ加盟が認められればという前提での話になりますが、今後どういう形で収益を挙げていくかの具体的なイメージはありますか?
岡本 収益については、デュアルキャリアを採用することを考えています。まだ釧路のポテンシャルは残っていると思うので。詳細はいえませんが年間5~6000万のスポンサーは持ってこれるのではないか? デュアルキャリアをやり、東京や名古屋から我々がスポンサーを集めていき、東京や名古屋でも試合をする。そういったことができれば、そもそも1億6000~7000万ぐらいの年間必要経費をデュアルキャリアによって選手の給料を半分各企業から出してもらい、試合興行については釧路開催を少し減らして東京や名古屋に行って、ということも考えとしてはあります。
IPJ ダブルフランチャイズ構想のようにも聞こえます。それは過去各スポーツの取り組みからしても、かなり難易度が高いと思いますが?
岡本 今の日本で人口が増えているのは東京と名古屋だけなんです。僕も愛知県にいて大企業の力をすごく感じますし、おかげで人口が増え、僕の経営する企業はマンションの給排水工事も手がけていますが、名古屋圏はすごい勢いでマンション建設が進んでいます。なので、自社も収益面ではおかげさまで堅調に伸びています。なので、僕の会社がスポンサードを続けることは支障がないと思っています。
そして、この経済的に伸びているこの地域へチームを連れてくるべきだ、という考えも理解できる。遠い未来、それが東京なのか名古屋なのか、はたまた片足ずつなのかわからないです。釧路でまずはできる限りだけやってみたいとは思っていますが、それで駄目ならばもう、決断をしなければならないと思います。
IPJ 釧路のファン、関係者は釧路に根付いたチームを求めています
岡本 もちろん根付くことを目的にやります。出資分を回収できるぐらいちゃんとチームが釧路に根付き、釧路市の企業全体が応援して釧路アイスホッケー連盟も全部一体となって応援して、釧路市がもっとバーッとアイスホッケーで盛り上がること、は絶対不可能ではないと思っています。ただ、そこに至るにはかなり難しい。
さっき申し上げたように、「もう本当に限界だ、もう駄目だ」と判断するときが来なければいい、と思っています。
選手が活躍する場を設けたい、そのためにも「宿題」を出してほしい
IPJ 12月31日までにアジアリーグに対して加盟申請を出さなければいけない。その加盟申請の内容といいますか、申請で一番訴えたい「核」の部分はどういう点でしょうか?
岡本 一番核になるものは、ずっと申し上げていることで、選手ファーストだということです。やはりどこまで行っても、ちゃんと選手が活躍する場を設けたい。もう1つは、さっきお伝えしたように、釧路がちゃんとまとまること、それを訴えたいと思います。せっかく知り合ったこの選手たちを、ちゃんと輝かせてやりたい……絶対輝けると思うんです。大津晃介を先頭とするこの軍団、すごくまとまっていますし、悪いイメージをつけてしまったのは我々経営陣の責任なので、その点については私も同罪だと思っています。
山田前代表とも最後に腹を割ってちゃんと話しました。ここを突破するためにも、僕が代表を引き受けて立て直すタイミングだ、とも感じています。
僕らは今、関係各所に対して「とにかく逆に宿題をください」とお願いしています。アジアリーグさんは市が一体となったチームじゃないと認めません、といい、今度市に行くと、市はアジアリーグに入ってないチームは応援できません、と。このままでは結局堂々巡りで、僕ら永遠に前に進めない。だったら宿題を出してください。全部対応していきます、というくらいの思いで今、進めています。
IPJ あと1つ、質問させてください。ワイルズの名称をクレインズに戻す目算はあるのですか?
岡本 何度も色々な方からはその話を言われています。ただ現時点で、クレインズは存在している。アジアリーグにも加盟している(※)。
クレインズの田中(茂樹)代表が1人取締役1人株主の状態だから誰も手がつけられないので、どこかで田中代表と話をする機会がない限りどうすることもできないです。逆に、クレインズの登録商標とか、そういったものを田中代表が手放すという話になったときは、もう1回そこは考えなければならないと思います。
IPJ 現実的にはクレインズ田中代表のアクションがない限り難しい、と?
岡本 そこはわからないですね、連絡が取れないので。北海道ワイルズもそれなりに名が浸透してきましたし、ワイルズのためにお金も使ってきていますので、そこでまた無駄にするのも……とは思います。現実的には田中代表の件も含めて2割の確率ぐらいでしょうか。
<インタビュー終わり>
※編集部注)このインタビューが行われた後の11月30日に、アジアリーグアイスホッケーの総会が開かれ、ひがし北海道クレインズの脱退届が受理された。
「【プレスリリース】アジアリーグアイスホッケー ひがし北海道クレインズ脱退のお知らせ」https://asiaicehockey.com/news/14302
確執を乗り越えて、チーム作りそしてアジアリーグ加盟は無事に着地できるのか?
11/20に行われたこのインタビューからほぼ1カ月の時間が経過した。この1カ月で、ワイルズと釧路の各団体とは話し合いが続けられてある程度進展していることもあるだろう。いっぽうで、確執の根はまだまだ深いという点も垣間見えたインタビューだった。
提出期限までに釧路のアイスホッケーの将来を、さらにはアイスホッケー界全体の今後を各関係者が大局的に考えて、わだかまりを乗り越え、良い着地点を見つけてほしいのだが。
※「北海道ワイルズによるアジアリーグアイスホッケー新規加入申請手続きに関する現状のお知らせ」と題されたアジアリーグからのリリース↓
https://asiaicehockey.com/news/14428
事象としては、12/31までに北海道ワイルズがアジアリーグ加盟申請を提出するのか、という点に注目が集まっている。弊メディアとしては引き続き取材を続けるとともに、またこんごの記事にて、事態の前向きな進展を読者のみな様に発表できる日が来ることを願ってやまない。