格上ノルウェーからの勝利まであと一歩の2-4。
若手活躍と堅守で食い下がるも敗戦。残り2戦にすべてを懸ける
取材・文・写真/アイスプレスジャパン編集部
現地8/29(木)15:30~(日本時間8/29 22:30)
2026ミラノ・コルティナダンペッツォ冬季五輪最終予選グループF
会場:GIGANTIUM(デンマーク・オールボー)
日本 2 (1-0、0-3、1-1) 4 ノルウェー
ゴール:【日本】中島照、平野 【ノルウェー】OLIMB、THORESEN、BRANDSEGG-NYGARDx2
GK:【日本】成澤 【ノルウェー】HAUKELAND
SOG:日本 32(7、11、14) ノルウェー 35(13、13、9)
2026ミラノ・コルティナダンペッツォ冬季五輪への出場権を4チームで争う最終予選。
現地8/29午後にノルウェーとの初戦に臨んだ日本代表は善戦むなしく2-4で敗戦。五輪への道はより狭く険しくなったことは否めないものの、現時点での日本の実力をしっかりと見せることができた試合だった。
日本代表は、堅い守りとそこから放たれる鋭いカウンター攻撃でノルウェーから先制点を奪い、第1ピリオドは1-0でリードして終えるなど、一時は相手に冷や汗をかかせることに成功。第2ピリオドも中盤までそのリードを守り、世界ランキングでは上位のノルウェーに対して決して引かない戦いぶりを披露した。残念ながら第2ピリオド終盤に3失点を喫し結果としては逆転負けとなったが、日本のこれからの可能性を示してくれる内容であったことは間違いない。
日本の「これから」を担う若手のコンビで奪った先制点
ノルウェーは世界ランキング12位、いっぽう日本は24位。それだけのランキング差がありながらも初戦の緊張からか動きに硬さが見えたノルウェーに対して、第1ピリオドは日本がまさに狙い通りのプレーを展開した。
先発GKの1成澤優太(レッドイーグルス北海道・アジアリーグ)は抜群の安定感を見せて相手の強烈なシュートに対してもことごとく身体の正面でセーブ。成澤がチームに落ち着きをもたらすと、日本は持ち前の守備力を存分に発揮。シュートがクロスバーに当たる幸運も味方につけてノルウェーの攻撃を跳ね返していく。
すると16分に絶好のチャンスが日本に訪れた。相手のシュートがバックボードで跳ね返ったところにいち早く反応した17榛澤力(HLアニャン・アジアリーグ)が一気に加速してカウンター攻撃へ。そこに22中島照人(HCメラーノ・ALPSリーグ)も併走する形で走り込み、相手GKと2対1の状況を作り出すと最後はゴール前で榛澤からの横パスを受けた中島照がシュート。これが見事に相手GKの右側に空いた空間を通し、日本が待望の先制点をあげる。
「第1ピリオドはみんながハードにスケーティングして相手に良いプレッシャーを与えられていたと思う。ゴールの直前のプレーはピンチだったが相手のパスミスから数的優位を取れて、(榛澤)力を信じてゴールに向かった時に力から良いパスが来た。バックハンドで少し難しいシュートだったが、力のパスがとても良かったのでうまく決めることができた」(中島照)
若さと勢いのある2人の息がぴったりと合って奪い取った見事なゴールは、ノルウェーに対して大きなプレッシャーを与えるのに充分だった。
第2ピリオド、中盤までリード保つも残り2分で崩れる
この勢いは第2ピリオドも止まらず、日本はノルウェーの攻撃に対しても的確に対応。第2ピリオドも中盤まで無失点でしのぐ。ベンチから仲間を鼓舞する声が何度もリンクに響き渡りチームのまとまりを感じさせるシーンも随所に見られるなど、魂のこもった戦いぶりにはこちらの心も揺さぶられた。
しかし、14分15秒、日本にとっては少し不運な形でノルウェーの同点弾が生まれる。日本のゴール前で混戦となったところで、シュートがノルウェーの選手のスケートにヒットして方向が変わり一瞬の空白が埋まれると、日本より先にノルウェーの選手に内側に入りこまれ、それが左サイドからのゴールへと繋げられてしまった。「アンラッキーでもあったけれども、バックチェックをもっと意識していれば……」(榛澤)。そこを見逃さなかったノルウェーはさすがだった。
この失点で1-1とされた日本。しかし、日本はピリオド残り5分を切っても集中力を落とさず、それまでと同様のプレーを続けていた。なんとか同点で第2ピリオドをしのげれば、まだまだ動きに硬さが見えるノルウェーに対して相当なプレッシャーを与えることができたはずだが、ここでNHLミネソタ・ワイルドでプレーするベテラン、ZUCCARELLOによる個人技がその日本の思惑を粉砕した。
18分24秒、日本陣内左サイドのフェイスオフからノルウェーのZUCCARELLOがパックをコントロールすると一気に右サイドへ長い横パスを送る。そこで待ち構えていたTHORESENがワンタイマーで強烈なショットを放つと、さすがの成澤も横への移動が間に合わず、パックは大きく空いていたゴールマウスを着実に捕らえた。
「あのフェイスオフからのプレーは今日一番止めなければいけなかったシーン。一瞬のスキを突いて奇麗にパスを通してくるチームであり選手なので対策はしていた。しかし、それ以上にきっちりパスを通してきた相手のプレーが上だったのかもしれない。混戦で一瞬パックを見てしまったときに通されてしまった」と山中武司コーチが振り返ったように、世界のトップ選手は勝負所を見逃さなかった。
この逆転ゴールからノルウェーが一気にギアをあげてきた。続くプレーで日本にプレッシャーを与えてペナルティを誘発させると、その直後のパワープレーでは18歳の竣英BRANDSEGG-NYGARDがワンタイマーで日本のゴールを撃ち抜き3-1とする。そこまで日本は耐えつつも試合をコントロールする立場にいたが、第2ピリオド残り2分を切ったところでの連続失点でその優位を手放すことになった。
平野の鮮烈なワンタイマーショットで追いすがるも2点届かず
第3ピリオドもゴール前の混戦からまたもBRANDSEGG-NYGARDに鋭いシュートを許し、日本は先に失点。しかし日本の選手からは、勝利への強い気持ちが伝わってくるプレーがその後も随所に見られ、決して守備一辺倒にはならなかった。
14分11秒には、右サイドでのパックの奪い合いを制した19中島彰吾(レッドイーグルス北海道・アジアリーグ)が逆サイドにパスを送ると、待ち構えていた26平野裕志朗(HCインスブルック・ICEHL)がワンタイマーで強烈なシュートを相手GKにお見舞いし、2-4と食い下がる。
無理せずタイミング作りからやり直した中島くん
— 寺尾 幸也 / Yukiya Terao (@yukiyaterao) August 30, 2024
もらう準備もしながらバンパーからゴール前へ移動してラインを下げた鈴木くん
裕志朗は
一回深く入るフリしてストップ
1歩分戻ったところにビタパス
期待通りのワンタイム一閃💫
負けはしましたが
素晴らしいシーンたくさんあります👏 pic.twitter.com/OZtGRcpRsm
さらに試合残り2分36秒にはGK成澤をベンチにあげて日本は6人攻撃を敢行。この6人攻撃は結果として得点にこそ繋がらなかったものの、2分36秒間ずっと攻めを続けることができノルウェーを大いに苦しめた。
最終的な試合結果は2-4。日本は最終予選の初戦を落とすこととなったが、格上のノルウェー相手に決して悪くはない戦いを繰り広げ、特に若手選手の成長ぶりを世界に披露することができた。
残り2試合、連勝での最終予選突破に日本は望みをかける。
<今後の展望>
この日の第2試合は開催国デンマークがイギリスに対し、第2ピリオド終了まで1-1と予想外の苦戦を喫したが第3ピリオドに猛攻を見せて3-1で勝利。
この結果、日本がオリンピック出場権を得るにはデンマーク、イギリスに2連勝することが必須となった。日本が2連勝し勝点6を確保した場合、最終日のデンマークvsノルウェー戦の結果次第で日本にはまだチャンスがある。また勝点6で3チームが並んだ場合は当該3チームにおける試合のみを見ての得失点差→総得点の順に優劣を決定する。