日本代表組が躍動し試合は白熱

道路建設ペリグリンが3連勝 SEIBUは1点差で雪辱ならず

取材・文・写真/千葉修太郎

第10回女子日本アイスホッケーリーグ(通称:スマイルリーグ)の1次リーグが10/8~10の3日間、北海道の苫小牧市白鳥王子アイスアリーナとダイナックス沼ノ端アイスアリーナを会場に開催された。

Aプールでは、連覇を目指す道路建設ペリグリンが3勝を挙げて2次リーグ(12月、釧路市)に弾みをつけ、女王奪還を期すSEIBUプリンセスラビッツは2勝1敗で2位通過となった。また、上位の牙城を崩したいDaishinは3位、TOYOTAシグナスは4位だった。

最終日は道路建設-SEIBU、Daishin-TOYOTAと見ごたえのあるゲームが展開。来年2月に控える中国北京冬季五輪に出場する日本代表候補たちも、世界選手権を終えたばかりだが躍動した。
代表組のスマイルリーグ出場は1次リーグのみになる見通しだが、今回のプレーは若手の刺激にしたいところ。2試合の様子をレポートする。

道路建設ペリグリンが鮮やかな逆転勝ち

道路建設ペリグリン(苫小牧) 2(1-1,1-0,0-0)1 SEIBUプリンセスラビッツ(西東京)

道路建設ゴール前の攻防

 先制点を決めたのはSEIBUだった。第1ピリオド11分にDF#11山下光がノーマークで抜け出し、道路建設GK#33増原海夕をかわして得点。しかしその4分後に、道路建設はDF#78川島有紀子がミドルシュートを決めて同点に追いついた。

同点ゴールを決めて歓喜する道路建設の川島有紀子(右から2人目)

 第2ピリオドは両チームが相手ゴールに一層シュートを集めるものの、決め手を欠く様子。そんな中、残り37秒で、道路建設にパワープレーのチャンスが訪れた。相手陣内で粘り強く連携し、ブルーライン付近から放たれたDF#68小池詩織のシュートの角度を、ゴール前のDF#47細山田茜が絶妙に変えてゴールネットを揺らす。このピリオド残り5秒。完璧なタイミングでの一撃で流れを引き寄せた。

勝ち越しゴールを決めた細山田(左から1人目)

 第3ピリオドはSEIBUが2度パワープレーのチャンスを得たが追撃できず。SEIBUは最後に6人攻撃を仕掛けるが、道路建設の堅守もあり、同点弾を撃ち込めなかった。

ゲームベストプレーヤー細山田「世界選手権後も、一つのチームになれた」

8月の世界選手権で過去最高の成績を上げた女子日本代表スマイルジャパン。新型コロナウイルスの影響で対外試合ができない中、コンディションがそこでピークになるように調整し持てるパフォーマンスを発揮してみせた。大会を終えた後は隔離期間を経て所属チームに合流。体の状態を一度リセットしたことによる感覚のズレや、スペシャルプレーの連携不足もあったのは当然と言える。

それでも細山田は「元々仲のいいチームだったので、世界選手権後もすぐ馴染んで一つのチームになれたと思うし、下の子たちも成長できたと思う」と話した。スマイルリーグでの3試合はシフト数も多かったが乗り越えられたという。けがで欠場している米山の存在に触れ「代わりにほのか(FW#21石山歩果)が出て頑張ってくれた」と後輩もねぎらった。

世界選手権はライバルチームを撃破し、最高レベルのアメリカと対戦。そこで細山田が味わってきたのは1センチの隙間に横たわる“壁”だった。「ゴール前のリバウンドなど、1センチくらいの差で叩かれた。一瞬の判断力も含めて、その辺をもうちょっと上げることができたら、世界にももっと通用する」との実感を語ってくれた。スマイルリーグの1次リーグ終了と同時に始まる代表候補合宿にも、細山田は意気揚々と挑むつもりだ。五輪はもうすぐそこにある。

道路建設・寺尾幸也監督のコメント

「3試合とも逆転勝ちで、ヒヤヒヤした。いつ集中力が切れてもおかしくない展開だったので、先取点を決めてもっと楽にできるようなホッケーをしたい。代表組が不在の中で今後スマイルリーグを戦うことになるため、試合経験の少ない選手も起用することになる。成功も失敗も全て経験なので、そこから学べるように声を掛けていきたい。代表組と他の選手の一番の差は体の強さなので、1対1の力強さを上げていきたい」

取られては取りかえすシーソーゲームをDaishinが制す

Daishin(釧路) 4(2-0,1-2,1-1)3 TOYOTAシグナス(苫小牧) 

Daishinは第1ピリオド16分に、FW#9小川美憂梨が先制点。
パワープレーで迎えた18分には、FW#32寺島奈穂が追加点を奪い、リードを広げた。

一方のTOYOTAは第1ピリオドは3つの反則でリズムを崩した格好だ。しかし黙って負けるわけにはいかない。第2ピリオド開始早々、DF#27志賀葵のゴールで反撃ののろしを上げると4分にはブルーライン付近からFW#11志賀紅音がシュートを決めて同点に追いついた。姉妹による得点で試合の流れを引き寄せた。

第2ピリオド47秒でゴールを決めた志賀葵(中央)

しかし、第2ピリオド11分。DaishinはFW#21山本真優のフェイスオフからFW#16浮田留衣が強烈なスラップシュートを突き刺し、トヨタの反撃ムードをかき消す。
1点リードで迎えた第3ピリオド6分には、再び寺島が個人技で決め勝利をたぐり寄せた。


トヨタは第3ピリオド8分に志賀紅音のゴールで1点差に詰め寄るのが精いっぱい。終わってみればシュート数はDaishin42本に対し、トヨタは26本だった。

第2ピリオド、トヨタゴールに迫るDaishin

Daishin中島谷友二朗監督のコメント

「欲しいところで浮田が決めてくれた。チームとしては、例年以上にシュートを打てているし、ペナルティも少なく、パックを奪うための体の使い方が徐々にできてきている。FW#19伊藤麻琴や野呂姉妹など若手の活躍が、寺島ら中堅を刺激し、相乗効果を生んでいる。それぞれ、チームの中でもライバル心を持ってプレーしている」

Daishin浮田留衣のコメント

「あのタイミングで入って良かった。山本(真優)選手はフェイスオフを引く確率が高くなってきているので、パックが来ると思っていた。世界選手権を終えてコンディションに不安はあるが、五輪に向けてもっと体を追い込んでいけたらと思う。気がつけばチームでも年長者になってきた。後輩たちには、試合の流れを変えるようなプレーを、先輩たちから盗んでほしい」

10チームをA、Bに分け、2022年3月までの日程で熱戦


今季のスマイルリーグには10チームが出場している。

Aプールは、道路建設ペリグリン、SEIBUプリンセスラビッツ、Daishin、TOYOTAシグナスの4チーム。
Bプールは、釧路ベアーズ(釧路)、帯広クレインズレディース(帯広)、高須クリニック御影グレッズ(帯広)、VORTEX SAPPORO アイスホッケークラブ(札幌)、札幌インフィニティーズ(札幌)の5チームに加え、各チームの中学生を選抜した中学選抜の計6チームが戦う。

1次リーグ、2次リーグ(12/3~5・ひがし北海道クレインズアイスアリーナ&KKS釧路厚生社アイスアリーナ)の結果を受けたファイナルトーナメントを帯広市(2022年3/4~6帯広の森アイスアリーナ&スポーツセンター)にて行い、最終順位を決する。

1次リーグ終了時点での成績

<Aプール>

①道路建設ペリグリン 3勝

②SEIBUプリンセスラビッツ 2勝1敗

③Daishin 1勝2敗

④TOYOTAシグナス 3敗

<Bプール>※第2次リーグとの通しでのリーグ戦

①帯広クレインズレディース 3勝

①釧路ベアーズ 3勝

③札幌インフィニティーズ 2勝1敗

④VORTEX札幌 1勝2敗

⑤高須クリニック御影グレッズ 0勝3敗

(6)中学選抜 0勝3敗 ※中学選抜は規定により6位

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