アイスバックス坂田駿が語る新人FWムン・ジンヒョクとの奇妙な縁
「僕のベースはデミョンの1年間」

取材・文・写真/今井豊蔵

通算100ポイントまであと「1」に迫った坂田駿。10/21・22ホーム日光で記録達成の期待が掛かる

アジアリーグアイスホッケー2023-24シーズン
日光アイスバックス10月15日終了時点の戦績

10試合 6勝(うち延長勝ち1)4敗 勝点17

<10月の試合結果>
10/1(日)アイスバックス 3-0 横浜グリッツ @新横浜
10/7(土)アイスバックス 6(OT)5 横浜グリッツ @日光霧降
10/8(日)アイスバックス 4-2 横浜グリッツ @日光霧降
10/14(土)アイスバックス 2-1 レッドイーグルス北海道 @苫小牧
10/15(日)アイスバックス 4-6 レッドイーグルス北海道 @苫小牧

アイスバックスの今季を占う本拠地でのアニャン2連戦

栃木日光アイスバックスはアジアリーグ開幕から10試合を戦い、6勝4敗の勝ち点17でリーグ2位につける。首位の東北フリーブレイズと勝ち点の差はない。
ただ各チームの試合消化ペースがバラバラで、順位からはなかなか力関係が見えてこない。
今季のアイスバックスは戦力がなかなか揃わず、3セットを揃えるのがやっとという状態でシーズンイン。そこから徐々に調子を上げてきた。

◎アジアリーグアイスホッケーによる10/15終了時点での順位表↓
https://x.com/ALhockey_JP/status/1714961841930244562?s=20


主力DFの坂田駿は、21、22日に本拠地日光へHLアニャンを迎えて戦う連戦が、一つの試金石になると語る。

「正直、力の差が歴然としていました。フィジカルでも心の面でも、勝てる感じがしなかった」

坂田がこう振り返るのは、開幕2カード目のアニャン戦だ。9月23日の初戦が0−6の完敗。翌日は第2ピリオドまでに0−4とされたところから追い上げ、第3ピリオドに1点差まで迫ったものの、3−5で敗れた。善戦したようにも見えるが、昨季チャンピオンチームの力をまざまざと感じさせられたのだという。
プレーオフ進出枠が2チームに狭まった今季、この2試合で見せた差を埋めなければ先はないという危機感が走った。

「それからはトレーニングもずっとハードにできていますし、非の打ちどころのないチームを作って、次のアニャン戦を迎えられれば」

新横浜での対グリッツ戦ではムン・ジンヒョクとの連携も良く、何度も相手ゴールに迫った

強くなるには、新戦力の台頭も不可欠になる。その1人が、今季韓国の高麗大学から加入したFWムン・ジンヒョクだ。
同じセットでプレーする坂田は「センターとして周りも見えていますし、経験さえ積んでいけばもっといい選手になりますよ」と将来性を高く評価する。そして休みの日にも外へ連れ出すなど、公私の別なく世話を焼いているのは、自身がかつて同じ立場に置かれたことがあるからだ。

「海外から来てプレーするって、本当に大変なんですよ。僕もそうでしたから。韓国に行った時、周りの選手が本当に優しくて助けられた。今度は自分がそうする番だという思いもありますね」

坂田が感謝するコンスタンチンとの1年間、そこから生まれた縁は続く

デミョンキラーホエールズに在籍した2017-18シーズン。2017年9月2日の開幕戦
延長4:47に坂田が決勝ゴールを決めてハイワンから勝利。韓国チーム対決を劇的に制した

坂田は2017-18シーズンに、韓国から当時参戦していたデミョンキラーホエールズでプレーした。
平昌(ピョンチャン)冬季五輪のため短縮されたシーズンで28試合に出場し、1ゴール9アシスト。
開幕のハイワン戦では、延長で決勝ゴールを決めるなど主力DFとしてプレーした。

当時ヘッドコーチだったケビン・コンスタンチンは、NHLのサンノゼ・シャークスやピッツバーグ・ペンギンズを指揮したこともあり世界でも最先端の戦術に通じていた。選手の動きを定めた「システムブック」は他のチームにないほど分厚く、毎週のように行われる「小テスト」に音を上げる選手もいたほどだ。

「確かに、毎日2時間はミーティングでしたからね。でも僕のベースは、あのデミョンの1年間にあるんです」

1987年生まれの坂田は釧路江南高、明大と進み、卒業後は当時の日本製紙クレインズに入団した。
アジアリーグには韓国からも複数のチームが参加しており、気がつけば同世代の仲間は国境を超えて杯を交わすようになっていた。韓国チームが釧路を訪れると、試合後に回転寿司へ連れていくことも多かったという。「そういう時に『一緒にプレーしてみたいな』なんて言ってたんですけどね」。それが実現したのが、デミョンでの1年間だった。

コンスタンチンがデミョンに持ち込んだシステムは、得点の確率をいかに高めるかを突き詰めており、坂田にも大きな刺激となった。
「もう6年前になりますけど、あの時僕らがやっていたパワープレーの攻め方が、今日本のチームの間で流行っていますからね」。
考え方は、新型コロナ禍の最中にデミョンがなくなってからも、様々なところで顔をのぞかせる。その一つが、デミョンの主将だったキム・ウヨンがコーチを務める韓国の高麗大学だ。そこからアイスバックスにやってきたのがムン・ジンヒョク。坂田は縁というものの不思議さを感じるという。

「だから、僕はジンヒョクが何をしようとしているのかわかりますからね。パスを出すタイミングとか、やっぱり流れているものがあるんですよ」

アイスバックスで育った韓国人選手には、昨季のプレーオフ・ファイナルでHLアニャンの優勝を決めるゴールを入れたカン・ユンソクがいる。様々な縁にも導かれたムン・ジンヒョクは、先輩と同じ道を歩むことができるだろうか。

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