「面白いこと、やりたいじゃないですか」試合のたびに釧路から大移動 スターズ神戸に移籍、松金健太が感じた課題と可能性「自信を持っていい」

取材・文/今井豊蔵 写真/今井豊蔵
2026−27シーズンのアジアリーグが9月12日に開幕した。参戦2シーズン目のスターズ神戸は、新横浜で横浜グリッツと対戦し、2−3で惜敗。前年から選手が大量に入れ替わる中で可能性を見せた。そこでDFの要となるのが、グリッツから移籍したDF松金健太だ。新しいチームをどう進化させていくのか。そして自らの新たな挑戦とはーー。プロ10年目のシーズンが始まる。
アジアリーグ参戦2年目のスターズ神戸、開幕戦はグリッツに惜敗
昨年との違いを見せたかった開幕戦、第1ピリオドはグリッツに圧倒されて終えた。6分にアレックス・ラウターのゴールで先制を許し、シュート数もスターズの8本に対しグリッツは13本。スターズの外崎慶監督は「1ピリは自分たちが難しいプレーをしようとしてしまっていた。ペナルティも多くて……」と守勢から入った展開を振り返る。もっとシンプルにと声をかけて第2ピリオドに入ると、流れは変わった。
4分にラウターの2点目で0−2とされるが、15分にFW矢野竜一朗が相手DFに絡まれながらも左サイドからドライブしてシュート。GKの左サイドを抜ける今季初ゴールで、反撃ののろしを上げた。終了間際の19分には、松金がゴール前に入れたパックをFWエア懐生が角度を変えてゴール。2−2の同点として終えた。
ただ、第3ピリオド開始早々。FW相木隼斗にゴールを許し2−3。これが決勝点となった。試合の分岐点で、自ら流れを手放してしまう結果に外崎監督は「絶対やられちゃいけないタイミング。そこで出す選手を選んだのは僕なので、僕の責任です」と唇をかむ。一方で、アグレッシブなフォアチェックから勢いを作るというチームコンセプトを体現できた時間もあり、2年目の進化を感じられる試合ではあった。
さらに、光ったのがDFの奮闘だ。この試合、7度のキルプレーを無失点でしのぎ「DF6人は本当によくやってくれたと思います」と指揮官も称えた。昨年はスペシャルプレーに弱さがあった。パワープレー得点率も、キルプレー防御率も圧倒的な最下位。現代のホッケーは5人対5人でのスコアリングが難しくなる傾向にある。人数が変動した時にいかに攻め、守るかは勝敗を大きく左右する。
試合を終えて「今のメンバーで勝つチャンスはあると思うんですよ。今年はアジアリーグを面白くしたいですよね」と言うのは、そのDF陣に今季から加わった松金だ。明治大から日本製紙クレインズに入団して以来、今季でプロ10年目となる経験は、若いチームになかったもの。さらに松金自身が「僕にとってもチャレンジなんです」という形態でこのチームに加わっている。
釧路から神戸まで通い……「終わった時にどうなっているか」未知なる挑戦

昨季限りでグリッツを退団。現在は故郷・釧路に生活の拠点を戻している。スターズの本拠地・神戸からは実に1200キロの彼方だ。地元で働き、試合の際にスターズへ合流するという特殊な形で、アジアリーグでのプレーを続ける。「慣れるも何も、こんな形は初めてですからね。一緒にいられる時間が短いのは申し訳ないけど、ベストは尽くします。シーズンが終わった時にどうなっているか……僕にもまだ分かりません」と言うほど、未知なる挑戦だ。
開幕2週間前、神戸で初めてチームに合流し、一緒に氷へ乗った。前年まで所属していたグリッツが、デュアルキャリアを基本とするのに対し、スターズはホッケー一本の選手が大半。「だから、練習量に関しては満足にできていると思います」と見ている。
「パスやレシーブなど、基礎技術は高い水準にありますよ」というスターズの選手たちに足りないのは、相手がいる中でその技術をどうスコアや勝ちに結びつけていくかという「ホッケーIQ」の部分だ。「ただ全力でやればいいというわけにはいかない。チームとして、ラインとしてどういうホッケーをしたいのか、それをどうやって60分実行するのかという規律の部分や、悪い流れを感じる力がまだまだかなと思います」と課題も指摘した。
2年前、松金はワイルズからグリッツに移籍し、同じ経験をした。今回も、発展途上のチームを変えていく責任を感じながらのプレーだ。「目先のことだけ見ていればいい年齢でもないですし、将来につながるようにしないといけない」。その上でこの日の第2ピリオドのように「スターズの時間帯があるのは自信を持っていい」と言う。
釧路では、福祉関連の仕事に就く。仕事の前には1時間ほど、ジムで体を動かすのがルーティンだ。「仕事のあとにやるとなると、なかなかきついですからね」と、デュアルキャリアで駆け抜けたグリッツ時代の経験も生きている。そして試合の度に、北海道からの長距離移動も発生する。自らを律して続ける特殊な生活。それでも松金は「大変じゃないライフスタイルに、やる意味はないと思うんです。面白いこと、やりたいじゃないですか」と笑う。
2−6で敗れた第2戦の試合後、松金は同じく旭川から試合に通う矢野竜一朗と、神戸へ戻るチームバスを見送った。2人は飛行機で北海道に帰り、またやってくる。「西日本に、アイスホッケーカルチャーをどう作っていくか。そこに携われるのは幸せなことですよ」と松金。チームを進化させる職人が、新たな働きどころで輝く。