ゴールへのラインが「見えたんです」2G2Aのルーキーが呼んだ開幕連勝 大和純也がグリッツを選んだ理由「これを正しい道に」

取材・文/今井豊蔵 写真/今井豊蔵
2026-27シーズンのアジアリーグが9月12日に開幕し、初のプレーオフ進出を目指す横浜グリッツはスターズ神戸に2連勝した。13日の第2戦、6−2で逆転勝利を収める中で、2ゴール2アシストの大活躍でヒーローとなったのがルーキーDFの大和純也(おおわ・じゅんや)だ。大和には、グリッツを新たなステージに押し上げるだけの「得意技」があるという。
ルーキーDFの大和が初ゴール、4ポイントの大暴れ…岩本監督も評価した「得意技」とは

試合はスターズが2点を先制する展開。グリッツは第2ピリオド10分にFW杉本華唯のゴールで1点を返した。そして13分55秒、グリッツのパワープレーが終わった直後だ。大和はブルーライン際でパスを受けると、小さいモーションから放ったシュートが直接ゴールに飛び込んだ。2−2で試合は振り出しに戻った。アジアリーグ初得点が、貴重な同点ゴールとなった。
指を1本立て、ファンにアピールした大和は試合後「GKの右手の下が、空いたのが見えたんです」と言ってのけた。ゴール前ではFW大澤勇斗がスクリーンに入り、GKの視界を奪っていた。自分一人だけが見えた、ゴールまでのライン。「狙っていたセットプレーです。練習していてよかった。試合のポイントになりましたし、ファーストゴールはできるだけ早くしたいと思っていたので」。
さらに第3ピリオド4分には、敵陣に入りながらパスを受けると、一拍置いてシュート。パックはゴール前の混戦をスルッと抜け、GKの右肩上を抜いた。「とりあえずシュートファーストと考えて、打っていった結果です。普通ならまずゴールに届かないと思うんですけど、リバウンドが出ればと思って……」。自身のシュートを「スピードはないけれど、コースを狙えば入る」と表現する。グリッツの攻撃に、新たなパターンを生める選手なのだ。
前日の開幕戦は3−2で辛勝発進。そしてこの日、スターズにリードされて終えた第1ピリオドを岩本裕司監督は「あれだけチャンスがあってもフィニッシュできない。やっぱり点を取り切るのはうちの課題なんですよ」と振り返る。インターバルには「うちの波が来るから」と選手の背中を押した。とにかくシュートを増やそうと言い続けた過去2年間。「見ていて楽しい、攻撃的なホッケー」を実現するために、大和は何よりの存在だ。
長野県出身の大和は北海道の清水御影中、武修館高でプレーした。その後東洋大に進み、U-20日本代表として世界選手権にも参加。2022年12月に、日本がディビジョン1B(3部相当)で優勝した際には、大会ベストDFにも選ばれた。当時代表の指導に携わっていた岩本監督は、大和をグリッツに誘った理由を「パワープレーのセンスがあると思っていたので」と口にし、こう続ける。
「うちのDFは、シュートを打ってもGKのブロッカーに当たるんですよ。そこで大和はゴールできる。自分のタイミングというか、ラインがあるんじゃないですかね」
デュアルキャリアのグリッツを選んだ理由「他人とは違うかもしれませんが…」

この2得点で、スターズの目が大和に向いたことで、第3ピリオド11分には大和のアシストからDFタイラー・ロックウェルがゴール。課題だった得点パターンの増加にもつながった。今季もグリッツは、5人全員で守り、攻めるのがチームコンセプト。大和はそこにぴったりの存在なのだ。
グリッツは選手生活とは別に仕事を持つ「デュアルキャリア」を掲げるチームだ。大和も生活用品を扱う商社の株式会社友和に勤務する。東洋大3年の時に「社会を知るためにも、就職活動をしよう」と決め、スーツを着て会社を回った。その後グリッツでのプレーを決め、デュアルキャリアが可能な企業を探していった。開幕戦には会社からも20人ほどの応援団が駆けつけたという。
近年、大学リーグからトップリーグに進もうとする選手が減っていると言われる。トップリーグの環境が、大学生にとって夢を持ちづらいものになっているためだ。将来への不安も否めない。大和は大学4年の時に、足の骨折で3か月、ホッケーをできない時期があった。その時「大けがをすれば、ホッケーは突然終わってしまうこともある。プロ一本だと、その時全てが失われてしまう」と感じたのだという。他チームからも誘いがある中で、グリッツを選んだ理由の一つだ。
「自分の軸をデュアルキャリアに置いて、選択肢を増やしたかった。他人とは違う道かもしれませんが、自分でこの選択を正しい道にしたいんです」。氷上でも絶好のスタートを切り、社会人1年目を順調に滑り出した。