激戦を予感させる『プレーオフ前哨戦』。レッドイーグルスとアイスバックスの対決は1勝1敗でセミファイナルへ


3/4、5(土日)にアジアリーグアイスホッケーのレギュラーシーズン最終節となる2連戦が各地で行われた。
その結果プレーオフセミファイナルは、

HLアニャン(リーグ1位)vsひがし北海道クレインズ(4位)

レッドイーグルス北海道(2位)vs栃木日光アイスバックス(3位)の日程で確定した。

プレーオフセミファイナルは3/9(木)と3/11、12(土日)に予定されており、先に2勝した時点でそのチームがファイナルに進出する。

今回アイスプレスジャパンは3/4&5に苫小牧で行われたレッドイーグルス北海道と栃木日光アイスバックスの試合に注目した。

一気の攻勢でレッドイーグルスが逆転勝ち。POでは「いかにミスを減らせるか」

3月4日(土) アジアリーグアイスホッケー 会場:苫小牧・白鳥王子アイスアリーナ
レッドイーグルス北海道 3(0−1、1−1、2−0)2 栃木日光アイスバックス

取材・文・写真/アイスプレスジャパン編集部

レギュラーシーズン最終節は、ここまで2位のレッドイーグルス北海道がホーム苫小牧に栃木日光アイスバックスを迎えての2連戦。この日は、北海道を舞台とした大人気TVアニメ『ゴールデンカムイ』とのスペシャルコラボレーションデーということで今季最高の観客数となる2086人ものファンが白鳥王子アイスアリーナにつめかけた。

アジアリーグ今季最多の観客が白鳥王子アイスアリーナに詰めかけた
ファンが記念写真を撮れるよう、入場すると正面にアニメ『ゴールデンカムイ』のキャラクターがお出迎え。


アニメで主人公の杉本佐一役を務める小林親弘さん、白石由竹役を務める伊藤健太郎さんの『ゴールデンカムイ』声優2人がゲストで登場。試合前からトークで会場を大いに盛り上げてくれたゲスト2人のおかげで、アイスアリーナは普段の試合とはまた違うワクワク感と楽しさ満点の雰囲気となっていた。

試合はそのゲスト2人がレッドイーグルス北海道の選手名をコールする粋な演出からスタート。

序盤は、次週に控えたプレーオフセミファイナルを両チームとも意識したのか、ともに慎重な立ち上がり。第1ピリオドは両チームとも攻撃に人数をかけず、ディフェンシブな戦術でお互いの手の内を探るような展開となった。
お互いに決め手がなく、0-0で終わるかと思われた残り15秒。ゴール正面の位置にいたアイスバックスの佐藤大翔が氷上を這うようなスライドシュート。DFの身体の影からパックが現れたせいかGK成澤優太の反応がやや遅れ、パックはゴールに吸い込まれアイスバックスが先制する。

レッドイーグルスは第2ピリオド2分過ぎに髙木健太がリバウンドを押し込む同点ゴールを決めるも、13分にアイスバックスは古橋真来が身体を反転させながらゴール前へ絶妙なパス。これをドンピシャのタイミングで鈴木健斗が合わせて再びリードを奪い返す。鈴木健斗はこれがシーズン29ゴール目。得点王のタイトルへライバルを一歩リードした。

2-1とリードしてからも、アイスバックスは今後のプレーオフでの対戦を意識するかのようなディフェンシブな戦いぶりを崩さず、主導権を握って離さない試合巧者ぶり。第3ピリオドに入っても時間が半分を過ぎるまでアイスバックスの堅い守りをレッドイーグルスが崩すことができず、このままアイスバックスが逃げ切る体制に入ったかに思われた。

しかしレッドイーグルスは試合残り5分で攻撃へと舵を切る。DFの攻撃参加も増やし、攻撃の形が整わなくても構わず相手ゴールへシュートを集めていく。アイスバックスGK福藤は好調ぶりそのままにシュートの雨をさばききっていたが、第3ピリオド14:49にその砦をレッドイーグルスがついに攻略した。

左サイドから橋本僚がシュートを放つと福藤が味方DFが影になったせいかリバウンドを身体の左へ。そのこぼれたパックに高橋聖二が見事に反応。パックを押し込んで同点に追いつく。

さらにはその高橋のゴールを伝えるアナウンスが終わらないうちに、レッドイーグルスが追加点だ。三田村が正面からシュートしたパックをGK福藤が止めるが身体の真下にパックが落ちほんの一瞬それを見失う。そこにすかさず入倉大雅がスティックをねじ込み、ついにレッドイーグルスが逆転。

敗戦もあり得る厳しい展開からの大逆転劇に沸き立ったのは満員の観客席。

この上ない形でレッドイーグルスが逆転勝利を奪い、プレーオフセミファイナルで対戦することとなったアイスバックスに対して大きなプレッシャーを与えることができた試合となった。

試合後、レッドイーグルスの菅原監督は「なんとか粘り勝ちができた」と納得の表情。「2000人を超える観客のみなさんが来ている中で、勝利を達成することができて良かった。プレーオフを目指して色々なことを試しているなかで、今後に向けてのポイントが見えてきた試合だった」と振り返った。第3ピリオドにそれまで劣勢ながら一気に逆転できた要因として菅原監督は、流れの中でお互いに起こりえる展開だったとも前置きしながら「プレッシャーをかけ続けられたのがその結果に繋がったと思う。逆に自分たちがそういうときにいかに切り替えられてできるか、ということが大切だ」とプレーオフにも繋がるメンタルの持ちようを指摘した。

「失点は2つとも簡単なミスから相手にチャンスを与えている。プレーオフも拮抗した試合になることは間違いないので、『ミスした方が負ける』と肝に命じ、いかに我慢強くできるか、そして相手のミスを誘えるかが鍵となる」(菅原監督)

決勝点を決めた入倉は、

「同点に追いついた直後のシフトだったので、まず失点はしないように前へ前へと攻めて行くことを心掛けた。(決勝点は)三田村選手のシュートが下にこぼれて、ただ叩くだけのゴールでした」とそのシーンを振り返った。「プレーオフではミス1つで失点に繋がるので、相手にパックを奪われると判断したらボードに当ててでも前へ前へ、というプレーが必要になると心掛けて戦っていた」という入倉。第3ピリオド一気に逆転できた要因としては「2ピリまでもプレー自体は悪くなかったので、3ピリも変わらずアタッキングゾーンからシュートで入っていけば、福藤さんは今日調子がよかったですけれども崩せていける、という話はみんなとしていたのでゴールに向かうという姿勢が得点に繋がったと思います」と答えてくれた。

プレーオフでは、ディフェンシブな戦術で失点を防ぐ戦い方が両チームともベースになると思われるが、試合の流れの中でいかに勇気を持って要所で分厚い攻めの形を撮ることができるのか、そのあたりがポイントとなると思わされた連戦の初戦だった。

また、状況的にはレッドイーグルスは3/4、5(土日)のホーム2連戦でアイスバックスに連勝すれば逆転での1位通過の可能性もあったが、HLアニャンが東北フリーブレイズを土曜日にアウエーで勝利したため惜しくも届かず、2位でレギュラーリーグを通過することとなった。

延長GWSにもつれた試合はアイスバックスが雪辱、シーズン最終戦飾る

3月5日(日) アジアリーグアイスホッケー 会場:苫小牧・白鳥王子アイスアリーナ
レッドイーグルス北海道 3(2−0、0−2、1−1、0−0、0−1)4 栃木日光アイスバックス

前日にレギュラーシーズンの順位が確定し、ここ白鳥王子アイスアリーナで4日後にプレーオフセミファイナルで相まみえることになった両者。この試合は、そのプレーオフをさらに意識する戦いとなった。

GKはレッドイーグルスが小野田拓人、アイスバックスがベンガート朗猛がそれぞれ先発マスク。

試合は第1ピリオドにレッドイーグルスが中島彰吾、中屋敷侑史のゴールで2点を先行。一方アイスバックスも第2ピリオドに入ってすぐに鈴木健斗がゴールを奪い、シーズン通算30得点として単独得点王の座を取り返す。

さらにその40秒後には東洋大からアーリーエントリー加入したルーキー宮田大輔がゴール裏を回り込んでパックに詰め、嬉しいアジアリーグ初得点。これでアイスバックスは同点に追いつく。

宮田は第3ピリオド9分にもディフェンスからのシュートをゴール前で合わせこの日2得点目。ルーキーの活躍でアイスバックスが逆転に成功した。

しかしこのまま逃げ切ることを許さないのがレッドイーグルスの強さだ。第3ピリオド残り2分に佐々木一正がブルーラインから放ったシュートをゴール前で中島がチップして同点に。

前日の試合とはまた雰囲気の違う点の取り合いとなった試合は、最終的にゲームウィニングショットへともつれ込み、宮田の準ハットトリックとなるゴールでアイスバックスがレッドイーグルスのホームで勝利をつかみ取った。

「前哨戦」は1勝1敗。プレーオフも激戦必至

結果的にプレーオフで対戦する2チームが、プレーオフ会場となるリンクで激突する形となった2連戦は1勝1敗で星を分けた。どちらも僅差のゲームとなったが、連戦でお互いの良い点も悪い点も見えてくるなかでプレーオフに向けてどれだけ布石を打てた内容だったかも問われる。そのあたりはレッドイーグルス菅原監督、アイスバックス藤澤監督ともに織り込み済みだろう。

見る限りではどちらにも勝つチャンスがあり、プレーオフでも接戦となることは確実とも思える。はたしてプレーオフセミファイナルでは、勝負の綾をどちらのチームがたぐり寄せることになるのか? 予測は非常に困難だ。

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