近年では珍しく「動」のスタイルでグリッツGK黒岩はゴールを守る

GK黒岩義博がビッグセーブ連発!! 両軍無得点で延長突入の結末は…

■横浜グリッツ 0(0-0、0-0、0-0、0-1)1  ひがし北海道クレインズ

40セーブ、1失点。

GKにとってはやりきったといえる数字だろう。それでも。白星に結びつかないことがあるのがチームスポーツだ。両チーム無得点で60分を戦い抜き、3人対3人で戦う延長戦に突入。1分13秒にクレインズ蓑島圭悟のロングシュートがゴールに飛び込むと、グリッツのGK黒岩義博はガックリ膝をついた。

浅沼芳征監督は「悔しい敗戦です。失点を少なく、ペナルティを少なくとプレーできたのはチームの進化。前進があったと体感できました。(点数を)決められなかったことには磨きをかけないといけない」。スコアリングという課題はあったものの、開幕から続いてきたディフェンスの崩壊には歯止めをかけられた。

2週間前のアイスバックス戦、グリッツは2試合で合計18失点を喫した。ゴール前で相手FWが2人、グリッツDFが1人という数的不利の状態を易々と作られ、失点を重ねた。GKのセービングを問われる以前の問題だった。

先週末は試合がなく、2週間の時間が空いた。氷上でのコミュニケーション不足が大量失点の原因と見て、ベンチに戻るたびにプレーの話をして、精度を上げていくようにとの意思統一がなされた。この日は第1ピリオドから、DFのアグレッシブな守りが目についた。1対1でしっかりチェックに行き、クレインズの攻撃陣を外へ、外へと追い出した。

浅沼監督は「かなり引いた形で、自陣に入れないという守りになりました。見ていて面白くないかもしれませんが、まずは5人でしっかり守ろうと」。
リーグ参戦2年目、豊富な戦力を誇るわけではない。まず失点しない方法を考えるというのは当然だ。第1ピリオド中盤にFW池田涼希が足首を痛め、試合から離れるという誤算はあったが、大きなズレには至らなかった。
「セットが変わっても茂木や、代わりに入った矢野がアグレッシブに頑張ったり、お互いにサポートする力が働いた」と指揮官。集団の力が向上していると感じる戦いだった。

クレインズに延長戦ゴールを決められた直後。黒岩の奮闘をチームメイトがねぎらう

この日先発したGK黒岩は、アイスバックスとの2連戦では先発を外れていた。途中出場で23分ほど氷に上がり、6失点。なす術もなかった。「大量失点はやっぱり、GKにとっては大ダメージです。きょうは60分間0-0。進化できたのかなと思います」。奇しくも、指揮官と同じ言葉が口をついた。

試合のなかった2週間、進化を模索した。NHLナッシュビル・プレデターズのフィンランド人GK、ユース・サロスのプレーをひたすら見た。身長180センチに届かないGKだが、昨年のセーブ率は.927。190センチ級の大型GKが主流の世界で、しっかり自分の居場所を作っている。「ひたすら見て、勉強でした。きょうの結果は必然だと思います」。サロスが参考になるのではというアイデアはチームメートからもたらされた。

黒岩は見ていて楽しい“動”のGKだ。時に前に出ての積極的なセービングを見せることもある。試合前の練習からいくつものルーティンをこなし、目を離せない。確率を優先した、静かなセービングが主流の今では異色のスタイルに映るが、もちろん理由があってのこと。「アイスホッケーはチーム全員でやるスポーツです。自分が声を出したり、アグレッシブにプレーすることで、チームがいい方向に進めばいい。これからもこの方向でやっていきたいと思っています」。

試合終了後のGK黒岩。「いつか必ず勝つ」その思いでこれからも戦い続ける

試合後、リンクの真ん中でマイクを向けられた黒岩は、気を取り直してファンに呼び掛けた。

「負けは負けですけど、また次は0-0からの戦いです。勝つために皆さんの力を貸してください」

ビッグセーブがスタンドに波を作れば、その力で選手も乗っていく。この試合、第1ピリオドで負傷したFW池田は右足首の骨折で、復帰までには3カ月かかる見通しとなった。初勝利にはさらにチーム一体となっての戦いが求められる。ファンと選手が一体になっての初勝利を呼び込むのに“ビッグセーブ男”黒岩の存在は欠かせない。

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