ついにレッドイーグルスに勝った……2得点のグリッツFW権平優斗を変えた「日本代表」

 この日自身2得点目となるゴールを決め、喜びに沸く権平

取材・文/今井豊蔵 写真/今井豊蔵

アジアリーグアイスホッケー2023-24シーズン
12/3(日)@KOSÉ新横浜スケートセンター 観衆:960人

横浜グリッツ 4(2−0、0−1、2−1)2 レッドイーグルス北海道
ゴール:【YGR】菅田、権平2、茂木 【REH】入倉、高橋 
GK:【YGR】古川 【REH】成澤
シュート数:【YGR】28  【REH】45

リーグ戦25連敗を続けていたレッドイーグルスからの初勝利

4年目の横浜グリッツがまたひとつ、チームの歴史を書き換えた。

第3ピリオド終盤、レッドイーグルス北海道が仕掛けた猛攻をしのぎきった横浜グリッツは、スコアボードに表示される残り時間が0を指したその瞬間、歓喜に包まれた。
GK古川駿(ふるかわ しゅん)はスティックを高々と頭上に放り投げガッツポーズ。そこに選手が殺到して大騒ぎとなった。リーグ26度目の対戦にしてついに、北海道の雄・レッドイーグルス北海道に土をつけた。
11月19日にリーグ2強の一角、HLアニャンに勝利を収めたのに続く快挙だ。

横浜グリッツが史上初めてレッドイーグルス北海道に勝ったその瞬間

第1セットのセンターフォワード(CF)で起用されたルーキー・権平優斗(ごんだいら ゆうと)が2得点。第1ピリオド11分18秒に自身アジアリーグ初得点を決めると、氷上に転がって大喜び。第3ピリオド12分26秒には、リードを広げる3点目を決めた。

ここぞの場面でパックをゴールに放り込んだ権平は「アニャン戦から少し空いての試合でしたけど、勝った試合のいいところを引き継いで戦えたと思います。シンプルなプレーで臨めたのが最終的な勝因。チームにも個人にも自信になります」と表情を崩した。

FW岩本和真(いわもとかずま)が不在で、この連戦はアレックス・ラウターと鈴木ロイ(すずきろい)と組むトップラインでの起用。
「土曜日はチャンスをもらったのに決められなかった。上位のセットに入れてもらえば結果が求められる。ゴールもそうですが、5人対5人のイーブンでも基準以上のプレーが求められる。意識してできたかなと思います」。
身長166センチの小柄な身体でリンクを駆け回った。先制から、最後までリードを保つ試合運び。完封負けを食らった前日の反省を胸に、しっかりやり返しての勝利だ。

グリッツは第3ピリオド終盤、レッドイーグルスの分厚い猛攻を守り切った

権平が2日までの15試合で残した成績は、2つのアシストが全て。中央大では主将として活躍してきたが、アジアリーグにはまた1つ壁があった。
変わるきっかけは、11月に参加した日本代表合宿だ。「急にうまくなることはないんですけど、消極的なプレーはダメなんだと思い知らされました。これまではそこからミスにつながることがあったので……」。考え方を変えるきっかけを得た。

「響きました…」代表で同室だった古橋真来のマインドを参考に

宿舎での同部屋は大学の大先輩で、リーグ有数のスコアラー・古橋真来(ふるはし まくる/栃木日光アイスバックス)だった。
「マインドセットが響きました。1プレー1プレーに自信を持ってやっているという話を聞かせてもらって……。レッドイーグルスの選手もそうですし、結果を残している選手はこうなんだと」。理解を深めて、チームに帰ってきた。
浅沼芳征(あさぬま よしゆき)監督は「勝てていない時も試行錯誤していた。代表でもいろんなことを吸収してきて、期待通りの活躍をしてくれた」と目を細める。

もちろん、新人選手であると同時に新社会人。チームが掲げるデュアルキャリアにも取り組んでいる。通信大手のソフトバンクに勤務し、代表合宿中にも業務を行っていた。フレックスタイム制などをフルに活かして選手と会社員生活の両立に取り組んでいるが、練習のある日は出社が遅くなる分、夜の8時、9時まで仕事をすることも。そこから睡眠やリカバリーの時間をしっかり確保するのは決して容易ではないが、自分で望んだ道と前を向く。

大物食いを相次いで果たし、上昇ムードの中で全日本選手権を迎える。引き続きサプライズを期待される中で、権平はこう言い切った。

「若手の成長がグリッツの鍵だと思うので」

結成4年目のグリッツも、徐々に選手の入れ替わりが進んでいる。
これからの中心となっていかなければならないのは、権平のように最初からデュアルキャリアとしてプロのキャリアを積む選手たちだ。

「代表にも定着できるようにしたいですし、そこでインプットしたものをアウトプットできるようにもしないといけない」

開幕からチームが13連敗し、強豪の武修館高、中大時代には考えられなかった経験をした。「CFをやっている中で失点が多かったんですね。そうするとなかなか攻めにも転じることができない。練習から(鈴木)ロイさんや大澤(勇斗)さんのプレーを見るようになって、ようやく結果として残せるようになったのかな」。
次の試合は12/8の全日本選手権2回戦。一発勝負のトーナメントでも、チームを、セットを引っ張っていく。

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